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 今年3月、日本全国の『隠れメタボ』が推計914万人にものぼるという衝撃のデータを厚生労働省の研究班が発表。この研究では、メタボの人数と同じくらい、隠れメタボが存在しているという。

 しかも、隠れメタボもメタボと同じく、命を脅かす重大な病気のリスクが大きいというのだ。メタボは健康な人に比べて心臓病になるリスクが1.45倍高く、隠れメタボも1.23倍高いと発表している。

 健康科学に詳しい『東京慈恵会医科大学』の和田高士教授に重要な点を聞いてみた。

「筋肉を増やすことです。今までは、中性脂肪が増えて悪さをするというメカニズムが主流でしたが、最近は筋肉が少ないことが代謝異常につながることがわかってきました」

 健康寿命を延ばすには、メタボ予防とロコモ(ロコモティブシンドローム)予防といわれてきたが、ここ数年はサルコペニア予防にも注目が集まっている。

 サルコペニアとは、筋肉が少ない状態のこと。血管系の病気による死亡や、全原因の死亡リスクが高くなるという論文が世界の医学界から多数あげられている。

「筋肉は血糖をエネルギーとして使います。筋肉が少ないとインスリンの作用が発揮できなくなり、血糖の代謝が悪くなり、高血糖に結びつくのです」

 インスリンとは、前述したように血糖値を下げるホルモンのこと。インスリンの分泌が悪くなると糖尿病へと発展することは承知のとおり。筋肉量を増やすために活動量を増やせば、血管が広がり、血圧は下がる。活動量が増えれば、中性脂肪が減る。筋肉を増やすことが、隠れメタボ対策の第1目標なのだ。

「体重計ではなく『体組成計』に乗って、自分の筋肉量を知ることから始めてみましょう」

 筋肉量や体脂肪率が計測できる『体組成計』は、タニタ、パナソニック、オムロンなど家電メーカーや計測機器メーカーから発売されている。最近はスマホと連動してデータ管理がしやすい機種も。体組成計を開発・販売しているタニタに、その仕組みを聞いてみた。

「体組成計とは身体に微弱な電流を流すことで、脂肪の量や筋肉の量をはかることができる計測器です」(開発部の内山朋香さん)

 脂肪は電気をほとんど通さないが、筋肉は電気を通しやすいという特性がある。これを利用したのが体組成計の仕組みなのだ。

「タニタの体組成計は、体重を支える脚の筋肉量がどれくらいあるかというのを『脚点』という数値で示しています。その数値が標準範囲にあるのか、というのも色分けして、ひと目でわかるような機種もあります」

 和田先生によれば、

「隠れメタボ予防には、有酸素運動よりも筋トレがおすすめです。流行りのウォーキングは心肺機能を向上させますが、筋肉量を増やすには筋トレのほうがいいでしょう」

 筋トレの中でも、特におすすめなのはスクワット。

「人間の筋肉は、おヘソの下から脚にかけて多く存在しています。腹筋と脚の筋肉の両方を使うスクワットは、筋肉量を増やすのにいちばん適しています」(和田先生)

 故・森光子さんが亡くなる直前までスクワットをしていたのは有名。90歳まで舞台に立っていた森さんが行っていたということは、ホントに身体にいいのかも?

「高齢や体力がない人は、イスに座った状態から、腰を浮かせるだけの動作でもいいですよ。これもつらい人は、テーブルに手を置いて腰を浮かしましょう」(和田先生)

 5~6回をワンセットにして1日3回行うといいそうだ。

「机などに手を置いて、片脚立ちになる動きもおすすめです。これを1日3回、左右の足で1分ずつ行いましょう」(和田先生)

 筋トレとともに、良質なタンパク質をとることも大事。

「肉、魚、大豆、卵、乳製品などバランスよく良質なタンパク質をとりましょう。ボディビルダーになるのが目標ではないので、あえてプロテイン食品をとる必要はありません。いつもの食事で良質なタンパク質をとっていれば十分です」(和田先生)

 材料がないと筋肉は作られない。魚は健康食品といわれるが、毎日、同じタンパク質をとるのではなく、変化をつけるのも大事。食品によって成分が違うので、魚だけ、肉だけと偏らず、種類を変えてとったほうがいいという。

 筋肉は何もしないと減る一方。筋肉量が標準値でも油断は禁物。こまめに測って自分の筋肉量をコントロールするのがベスト。

「女性は筋肉量が増えにくいので、筋肉の“質”もわかるタニタの体組成計を使って、モチベーションを上げてみてはいかがですか?」(タニタ開発部の内山さん)

 筋肉量は目に見えて上がりにくいが、筋肉の“質”は数週間で結果が現れるそうだ。

「年齢とともに、筋肉の中に硬い線維や脂肪など余計なものをため込む傾向にあります。筋肉量だけでなく筋肉の質にも目を向けるといいかもしれません」(内山さん)

 健康診断の数値、筋肉量、体脂肪率など自分の身体全体を知ることが、隠れメタボ対策の基本。予防には年齢や体力に合わせた筋トレとバランスのいいタンパク質をとること。