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 歌舞伎俳優・市川海老蔵の妻、小林麻央が、1年8か月もの間“乳がん”の治療を続けていたことが報道されて2週間。乳がんについて、国立がん研究センター中央病院乳腺外科科長の木下貴之医師、乳がんの乳房再建の啓発活動を行うNPO法人『E-BeC』の真水美佳理事長に教えてもらった。

Q 切除しないと再発しやすいの?

「乳がんを発見したら外科的手術を行ってがん細胞を切除することが治療の大前提です。研究段階ですが、早期がんに限り切除せずとも治療可能な『ラジオ波熱焼灼療法』があります。

 ステージ2bからステージ3では、抗がん剤治療を併用して、“がん”をたたいて小さくしてから切除するのが一般的ですね。切除して、再発を防止するために薬物療法や放射線治療などを併用します」(木下医師)

Q 『乳房温存手術』と『全摘』どちらがいいの?

「『乳房温存手術』は乳房の患部だけを切除するもの。切り取った部位だけを形成する『一部再建』は行っているところは少ないです。再発したら、また手を入れることになるからです。温存のほうがいいという流れもありましたが、最近では胸の再発の可能性がない全摘をして、再建手術をするのが主流になってきています」(木下医師)

Q 切除した乳房は手術で元どおりになるの?

 自身も乳がんを患い、右の胸を全摘し、自身の身体の一部(自家組織)を使い再建した『E-BeC』の真水美佳理事長。

「自家組織は、自分の身体の一部を使用するため、メンテナンスが不要です。体形や加齢によって自然に変化し、体温も感じられて元の乳房と遜色ないものです。ただ、身体の一部を切除しますから、傷が残ります」(前出・真水さん)

 シリコンを使用する場合は、

「患者さんの身体を使わないので身体的負担が少ない。また非常にきれいに胸の形を作ることができます。ただ柔らかさが違う、冷たい、動きがないという欠点がある。また永久的なものではなく入れ替えが必要な点も留意点です」

 と木下医師。

「全摘をされて、ちゃんと説明をしたうえで、再建しない選択をする人も少なくない」

 最善の選択について真水理事長は話す。

「どれがいいとは一概に言えません。乳がん切除後にエキスパンダー(皮膚拡張器)を入れ、その間に自家組織、シリコンのどちらにするか考えることをすすめています。大切なのは、知ったうえで自分が納得した再建方法を選択することです」

Q 乳がんの治療と乳房再建にはいくらかかるの?

「乳がんの治療でも病状や治療方法によってだいぶ違う。一概には言えませんね」  (木下医師)

 日本乳癌学会のホームページ上に掲載されている治療費の目安では、

【入院14日間、手術・乳房切除術(全摘)・腋窩リンパ節郭清(わきの下のリンパ節に転移が疑われる場合リンパ節を摘出する手術)ありの場合】保険適用で30万円。

【放射線療法(温存手術後25回照射の場合)】保険適用で14万~21万円。

 乳房再建の費用は?

「2013年7月からシリコンも保険適用されるようになりました。自家組織でもシリコンでも30万~60万円程度の費用がかかりますが、高額療養費制度を使用することで実質的な負担は9万~14万程度です」(前出・真水さん)