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福島・郡山駅での人々の大歓迎ぶりに、両陛下も自然と笑みがこぼれた(3月16日)

「来ていただいただけでも大変なこと。元気と勇気をもらい、前に踏み出そうと思った」

 天皇・皇后両陛下と懇談した感激をそう話したのは、福島県三春町の仮設住宅で食堂を営む石井一夫さん(60)。

 石井さんは、避難指示解除後には葛尾村に戻り、食堂を再開することを両陛下に伝えると、気持ちがこみ上げてきたという。

 3月16日、5年前の東日本大震災による福島第一原発の事故で、全村避難を続けている村民たちを励ますことから始まった、両陛下の東北ご訪問。

 翌3月17日の『日経新聞』には〈訪問の日程 形式化〉〈出迎え住民 接する場なく〉という見出しで、両陛下と被災者の懇談の場が少なく、工夫が必要という手厳しい記事も掲載された。

 しかし、17日の宮城県では、“形式的”ではない行動をとられることもあった両陛下。

「石巻市では、震災で犠牲になった漁業関係者を祀る慰霊碑に、両陛下は拝礼しました。ところがその後、車道を渡り出迎えの人々のもとに近寄り、言葉をかけられたのには驚きました」

 そう話すのは、現場を取材した記者。

「通常、車道なら道路越しにお手振りをしますが、陛下が歩き出し、段差のあるところでは皇后さまの手をとり人々に歩み寄られたのです」(同)

 午後に訪問された女川町でも、両陛下は“柔軟”に対応されたという。

「両陛下は、内陸部に新設されたJR女川駅や、周辺に整備された商業施設などを視察されました。

 商店街にある『シーパルピア女川』では、予定にはない商店にも入り言葉をかけ、“復興は進んでいます。ありがとうございます”と感激で涙を浮かべる女性もいました」(別の記者)

 続いて両陛下は、震災で全工場が壊滅した後、再建を果たした水産加工会社「ヤマホン」の工場をご訪問。

 社長から説明を受けた陛下は「ずいぶん苦労されたんでしょうね」と真剣な表情で聞き入り、翌18日は東北大学で医療関係の展示をご覧になり、日程を終えた。