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 ネット上の匿名投稿「保育園落ちた日本死ね!!!」が民意の発火点になり、結果的に政府を突き動かした待機児童問題。政府は3月28日、待機児童解消に向けて緊急施策を打ち出した。

 政府は今回、自治体に積極的に認可をすることを求めている。これまでも“客観的な認可基準を満たした場合”に自治体は認可しなければならないことになっているが、『待機児童がいて、事業者の参入意欲があるにも関わらず、積極的に認可をしない自治体の運用については、是正を要請する』と踏み込んだ。

「自治体が参入規制をしている時代ではないです。株式会社の保育園がどんどん増えていますから、ジャンジャン認可されています」(『保育園を考える親の会』の代表・普光院亜紀さん)

 現状をこう説明。

「ただ、問題を起こした事業者も認可されてしまっているんです。自治体がまったくコントロールできないのはどうなのかって思うんです。面積と人数だけそろえればいいだけで、じゃあ認可って何って感じですよ。参入規制は本当にあるのかという感じ。保守的な自治体があるのであれば、国が独自に指導されればいいわけで、待機児童対策として出すのはおかしいと思います」(普光院さん)

 参入が相次ぐのは悪いことではないが、根本的な問題が解決されなければ保育の質は下がる一方だ。

「中には施設の数をどんどん増やして破綻しそうになっている園もあるんです。人手不足でも大手は保育施設をどんどん増やしているんですよね。経験を積んだらすぐ他園に異動。これは保育士もつらいですよ。

 最近聞いた話では、園長以下が会社の方針になじめずに全員退職したって話がありました。会社側は“大丈夫ですから”って保護者に言ったようですが、何が大丈夫なんでしょう……」(普光院さん)

 単純に保育の量を増やそうとする短絡的な国の姿勢から、新たな問題が浮上してきているようだ。『保活の実態調査』には、疑問を投げかける。

「(保育園に入るための)保活っていうのは“技術”になっているので、そんなことより、待機児童家庭の生活実態であるとか、事業者が何に困っているのか、保育士の配置が多ければ、もしくは少なければという現場の苦労だったりを聞き取りしたほうがよっぽどいいと思うんですけどね」(普光院さん)

 待機児童解消に向け政府は動き出した。だが、不用意な発言をするピントはずれの大人は後を絶たない。

「子どもがいるなら働くな、そういう意識が国を動かしている世代にはまだまだ多い。ただ公然と話して許される社会じゃないと理解していないんでしょうね。時代錯誤もいいところですよ。世間の意識はすごいスピードで変わっていますから」(普光院さん)

 保育学研究者の村山祐一さんは根本的な問題が解決されないことをこう話す。

「以前、国会議員調査を行いました。保育についてのアンケートを国会議員全員に送りましたが、回答数はたったの76枚でした。ほとんどが関心がないんです。

 国会議員は必ず保育園に行って丸1日、保育の現場を見ることを義務にしたらいいんです。子どもを育てることは国の義務なんですから。今回の施策なんて厚労相が現場を知らないことを露呈していますよ」