終電を逃した人に、タクシー代を払う代わりに「家、ついて行ってイイですか?」とお願いし、家をのぞかせてもらう完全素人ガチンコバラエティ『家、ついて行ってイイですか?』が、この春からゴールデンに進出する(毎週土曜19:54~20:54)。今やテレビ東京を代表する人気番組となった同番組の演出を手掛ける高橋弘樹プロデューサーにお話を伺った。

「放送時間帯は変わりますが、番組の内容は変わりません。これまで通りエッジのきいた一般の方も登場します。角が取れると面白味がなくなるので、躊躇(ちゅうちょ)なく人の人生が伝わるような番組にしたい。とはいえ、視聴者層に多少の変化はあるはずですから、その点は意識していくことになるかと。家族とテレビを見ている中で、他者の人生を見て何かしらの親近感を持ってもらえる番組にしなければいけないと思っています」(高橋氏、以下同)

『家、ついて行ってイイですか?』は、たまたまついて行った先で、その人の意外なドラマを発見することが大きな魅力となっている。これまでにも、「離婚したばかり」「女装が趣味だった」「介護で仕事を辞めた」など、一般の方が抱えている数多くの悩みや夢が映し出されてきた。

 高橋氏は、『世界ナゼそこに? 日本人 ~知られざる波瀾万丈伝~』『カメラ置いとくんで、一言どうぞ ~街中に、カメラ放置してみました~』など、一般人にスポットライトをあてた番組を手掛ける機会が多い。なぜ普通の人々にクローズアップするのだろうか?

「学生時代から宮本常一や宮田登をはじめとした民俗学者の本が好きでした。日本史の勉強では扱わない市井の人々の暮らしや歴史、失われた生活に興味を持っていて。

 テレビにしてもNHKのドキュメンタリーを好んで見ていたし、読む本もノンフィクション。小説はあまり読まないのですが、読むとすれば山崎豊子や沢木耕太郎、永井荷風のようなノンフィクション的な要素が多く含まれている小説か、私小説的な小説が好きですね。

 田山花袋や上林暁など、自分の生き様をときに露悪的にさらけ出し、ドヤ顔を決めながら世の中に問う。『自分の生き様終わっていますけど、どうですか?』と投げかけてくる小説は嫌いじゃないです(笑い)。ですが、僕は当初、明智光秀の時代劇ドラマを作りたくて、テレビ東京に入社したんですよ」

 ところが、最初にADとして担当した番組が『TVチャンピオン』だった。街を歩いている一般人の中から選手を見つけ、その人をショーアップしていく。発掘して知られざる魅力を探っていくという過程に、次第にのめり込んでいったと高橋氏は振り返る。

「ゆるキャラ王や、つめ放題王など、はたからみれば、全く意味のわからない大会でも、選手たちは常に本気で、負ければ悔し涙を流すんですね。特殊な人ではない、一見フツーの一般の方でも、その人たちなりの人生ドラマがあることを知りました。そこに、もともと自分が好きだった市井の人々への興味も募っていく。縁があったというか、入るべくしてテレ東に入局したのかもしれません(笑い)」

 ゴールデン移動後、『家、ついて行ってイイですか?』では、地方ロケの機会も増やしていくという。大都市とは違い“終電後のない世界”、どのように家について行くのだろうか?

「都会の場合、お酒が入っていることで開放的になり、自分を吐露してくれるケースが多いです。気分が開放的になっているというのはポイントで、銭湯から帰宅する方々に“家、ついて行ってイイですか?”と聞くコーナーもあるのですが、湯上りで気持ちよくなっているためOKしてくれる人が多かったんですね。

 また、鳥取の山奥で移動販売車が来訪する際にロケを行ったことがあったのですが、山奥や山村で暮らす人々にとって、その日はひと月に数回の大きなイベントなんです。近隣の人が移動販売車に集っておしゃべりをする、自宅の冷蔵庫が食材であふれかえり好きなものを食べる……ハレとケで言えば、ハレの日なんですよ。単に物資を購入するだけではない日だからこそ、気持ちが高揚する。そういうときに家について行かせてもらうから、思わぬエピソードが聞けたり、ドラマが見つかる。

 地方には地方の文化があって、そこで暮らす人にしか分からない感情が高ぶるときがある。東京で暮らす人とは違う価値観があることも伝えていきたいですね」

取材・文/我妻弘崇

4月16日のゲストは有吉弘行。MCはビビる大木、矢作兼(おぎやはぎ)、鷲見玲奈アナ[写真提供/テレビ東京]
4月16日のゲストは有吉弘行。MCはビビる大木、矢作兼(おぎやはぎ)、鷲見玲奈アナ[写真提供/テレビ東京]

<番組情報>

『家、ついて行ってイイですか?』

テレビ東京 毎週土曜よる7時54分~8時54分

*初回4月16日(土)はよる6時半からの2時間半スペシャル