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熊本市内にある熊本城は石垣が崩れ、屋根瓦が滑り落ちた

 熊本県を中心とする九州地方で14日午後9時26分ごろ、九州では観測史上初めてとなる最大震度7の大きな地震が発生した。

 九州連発噴火を事前に予測して注意を呼びかけてきた実績がある、立命館大学の歴史都市防災研究所の高橋学教授はこう指摘する。

「政府は、30年以内に70%の確率で南海トラフ地震が発生するとしていますが、これはとんでもなく甘い見通しで、ここ2~3年以内に起きる可能性があります」

 南海トラフとは、フィリピン海プレートがユーラシアプレートにもぐり込む境界線にある地震発生帯のこと。静岡の相模湾沖から九州東南沖まで水深4000メートルの深い溝がのびている。

 内閣府によると、南海トラフで東日本大震災と同じM9の大地震が起きた場合、推定死者は32万人。経済損失は220兆円と試算されている。具体的にはどのような地震が起きるのだろうか。

「過去の例からみると、全域で一斉にドンと揺れるのではなく、数時間か数日おきで連鎖的にドン、ドン、ドンと地震が起きるパターンが予測されます。プレートの1か所が割れたら次はその隣、割れたらまたその隣……というイメージです」(高橋教授)

 南海トラフ地震は震源地が沖のため、津波に警戒しなければならないという。

「高さ4~6メートルの津波でも、行く手で何かにぶつかって勢いを増すことがあります。国内で観測された津波では、36~38メートルの高さに達したことがあります。東海地方の沿岸部にある小学校では“大地震がきたら屋上に逃げなさい”と指導していますが、3階建てぐらいでは何の役にも立ちません。

 南海トラフ地震で想定される最大の津波が襲った場合、大阪府は面積の約8割が水没することになります。あるいは沖縄の小さな島では、津波が島全体をそのまま乗り越えることも考えられます」(高橋教授)

 14日の熊本地震では、県内500か所以上の避難所に約4万4000人が避難し、電気・ガス・水道などのライフラインも寸断された。九州新幹線は回送車両が脱線して全線で運転を見合わせ、高速道路も路面が陥没するなどして多くの区間で通行止めになった。

 締め切り直前の16日午前1時25分ごろ、九州地方の広範囲で最大震度6強、M7.3の大きな地震があった。熊本地震の余震かとみられていたが、こちらが本震で14日の熊本地震のほうが前震だった。その後も大きな揺れは続き、被害は拡大した。高橋教授が指摘する。

「地震が起きたとき、そこに人がいるから被害は生まれるのです。火山の噴火も同じです。今回の地震は夜間でどうしようもない部分もありましたが、どうか油断せずに地震情報に耳を傾けてください」