運転開始から40年を超えた高浜原発(福井)

 なぜ、熊本地震のニュースで、周辺の原発への影響についてもっと詳しく報じないのか。

 原子力規制委員会は緊急時情報ホームページで「現在、各施設ともに異常情報は入っていません」とし、川内原発、玄海原発(佐賀)、伊方原発(愛媛)、島根原発のプラント状態などに異常がないことなどを報告している。

 伊方原発2、3号機は再稼働する方針。3号機は7月にも動き始める見通しだ。

「そもそも四国の電力をまかなうのに原発は必要なかった」と指摘するのは日本大学歯学部の野口邦和准教授(放射線防護学)だ。

「伊方原発は売電です。1号機は新規制基準をクリアするには追加措置が必要になるため、廃炉を電力会社が決めました。採算が合わなかったんでしょう」(野口准教授)

 東日本大震災による福島第一原発事故で、私たちは原発が再稼働しなくても差し迫った問題が起こらないことを知った。電力が不足する、とさんざん脅かされたが、結局、採算の問題だったのだろうか。

 野口准教授は老朽化した原発にも目を向ける。

「原発稼働は原則40年です。簡単に言えば古い原発ほど危ない。事故を起こした福島第一原発の1号機は震災前の2011年2月で運転から40年を迎えていました。一方、'80年代に稼働した福島第二原発は無事でした。運転から30年以上経過している施設はしっかり点検する必要があります」(野口准教授)

 中央構造線の周辺が落ち着いた場合、九州ではもうひとつの脅威が芽を出す。琉球大学の木村政昭名誉教授(海洋地質学)が説明する。

「2020年までにマグニチュード(M)8.7規模の日向灘南部沖地震が起きると推測しています。フィリピン海プレートから受ける歪みが日向灘沖に集まり、これが中央構造線にプレッシャーをかけて熊本地震を発生させています。

 中央構造線沿いの地震でプレッシャーを発散している今はまだ大丈夫。しかし、地震が止まった場合、日向灘沖へのプレッシャーはどんどん強くなります」

 木村教授によると、日向灘では、1941年にM7.2、'61年にM7、'84年にM7.1の大地震が発生している。しかし、日向灘南部沖では大きな地震がなく、もし揺れたら巨大地震となる可能性が高いという。

「ほかにM8.5規模の伊豆諸島南部沖地震が2020年ごろまでに起こる可能性があります。静岡全域から千葉の九十九里浜まで大きな津波が到達しかねない。同じくM8.5規模の青森県東方沖地震は'24年までに発生すると予測しています」(木村教授)