イギリスにある世界最大の航空業界格付け会社・スカイトラックス社が公開している格付けランキングで、2013年、14年、16年と“世界で最も清潔な空港”に選ばれた羽田空港。その最大の功労者のひとりが、清掃部門500人を率いる新津春子さんだ。

 細身ながら引き締まった体は清掃のたまものという。

「広い空港をすみからすみまで歩くから、いい運動になるの。掃除の段取りを考えながら動いているから頭も使うのよ。きれいになると心もスッキリするしね。掃除をするといいことづくめです」

 新津さんが注目を浴びたのは2015年に放送された『NHKプロフェッショナル 仕事の流儀』での出演。名だたる文化人、スポーツ選手といった有名人が出演した放送回をさしおいて、2015年最高視聴率を獲得した。

 家庭での掃除本は発売1か月で7万部のヒット。さまざまなテレビ番組で「新津流のお掃除術」がひっぱりだこだ。4月30日(土)放送の『世界一受けたい授業』(日本テレビ系19:56〜)にも出演する。

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 そんな「掃除のカリスマ」の、お宅はさぞや完璧な美しさかと思いきや……。

「いえいえ! 家のお掃除はね、なんといっても気軽でいいんですよ。私も毎朝、気になるところを“ついでに”掃除するくらいですよ。たとえば出勤前の夫を見送るついでに廊下や手すりをサーッ、トイレに入ったついでに床までサーッ。疲れないこと、続けることが大切なんです」

「人が通る場所は汚れやすい場所ですからね。動線に沿って、目についたところや触れるところを掃除するだけでも、家は輝いて見えるものです。掃除が面倒くさいのは、隅々まできれいにしようと思うから。たまった汚れを落とそうとするからです。汚れをどう落とすかという“事後掃除”より、いかに汚れを溜めないかという“予防掃除”の方が実は大事。“予防掃除”は、虫歯にならないために歯磨きをするようなものですかね。なにかのついでに、“ちょこっと”の掃除を毎日の習慣に。そうすれば汚れを定着させなくて済んで、結局は自分がラクちんです」

 新津さんは世の中の「モノを捨ててスッキリ」という風潮にも疑問だ。

「だって、旅行先のお土産とか捨てられないじゃない? いつか着る服だって、いつか着たいから持っているんだもの。モノには愛情や思いがつまっているんですからね、無理に捨てようと思わなくてもいいのではないでしょうか」

 大切なのは、自分が快適であること。

 そのために、できるところから、「小さな掃除」をして、“清潔さを保つ”ことが重要という。

 新津さん自身、毎日の家の掃除は、薄手のタオル1枚で済ませているとか。

「掃除が苦手な人ほど便利だからと、あれこれ買って、実際には使いこなせていないのかな、って思います。日頃の掃除は、タオル1枚あればじゅうぶんですよ。割り箸や竹串など、家にあるもので掃除に使えるものはたくさんありますし、それをどう使って何ができるのか、考えて工夫するって、楽しいですよね。

 使い終わったら道具のお手入れも忘れずに。掃除機にホコリがかぶっていませんか? それでは、道具がかわいそう。モノにもやさしい気持ちを持ってね。ひとつひとつに心を込めると掃除の質が変わってきますよ。空間が輝きますし、自分の気持ちもスッキリ晴れやかになります」

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写真/新津さんの家庭での掃除のコツや心得をまとめた『“世界一”のカリスマ清掃員が教える!掃除はついでにやりなさい!』(主婦と生活社)