(c)赤塚不二夫/おそ松さん製作委員会
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■12人の人気声優に松ガールズが熱狂

 3月に放送を終了したテレビアニメ『おそ松さん』が帰ってきた! 5月8日(日)、幕張メッセイベントホールにて、メインキャストの超人気声優が一同に出演する「フェス松さん’16」が開催されたのだ。“松ロス”中のファンにとっては待望のイベントとなった。

 櫻井孝宏(おそ松役)、中村悠一(カラ松役)、神谷浩史(チョロ松役)、 福山潤(一松役)、小野大輔(十四松役)、入野自由(トド松役)、 遠藤綾(トト子役)、鈴村健一(イヤミ役)、國立幸(チビ太役)、 上田燿司(デカパン役)、飛田展男(ダヨーン役)、斎藤桃子(ハタ坊役)の12名(以上敬称略)が集結するということで、当然プラチナチケットに。本会場で観られない人のために全国約120の映画館でライブビューイングが行われ、放送終了後も沸騰し続ける人気を実証した。昼と夜の2部開催で、週刊女性PRIMEは夜の部(「フェス松さん 夜の部 ~四銀ロスにもまだ早い~」)に潜入した。

 約6500人で満員の会場は、“推し松”カラーのパーカーやハッピなどを身に着けた女性たちでにぎわう。ステージには6つ子が住む松野家と、幼なじみのトト子の実家の魚屋さんの外観の書き割りが組まれ、現実に「おそ松さん」の世界が現れたようだ。開演の18時きっかりに客電が落ち、イベントがスタート。大歓声とともに赤、青、緑、紫、黄、ピンクという推し松カラーのペンライトが会場を彩る様子は、アイドルのライブのようで圧巻だった。

■声優陣から溢れ出る「おそ松さん」愛

 今回のイベントのキモは、企画・構成をアニメのシリーズ構成と脚本を務めた松原 秀氏が手掛けていたこと。コント作家、放送作家としても活躍し、アナーキーで型破りなギャグアニメである「おそ松さん」の世界を支えた松原氏が手掛けるとあらば、生の舞台も期待しないわけにはいかない。

 6つ子とイヤミがタイトルコールの奪い合いをするという、ドタバタのオープニングエピソードから始まり、会場は早くも爆笑に包まれる。次いで声優が登場する際には、櫻井(おそ松)は「無職上等」の幟を掲げ、中村(カラ松)はサングラスとマシンガンを装備、神谷(チョロ松)は全身にティッシュボックスを装着、福山(一松)はダイナマイトを身体に巻きつけ、小野(十四松)は野球ボールの被り物をした“野球マン”の姿に、入野(トド松)は乙女チックなピンクの日傘をさして……と、各キャラのイメージを再現して笑いを誘う。舞台上で小学生男子のようにはしゃぐ声優陣を見ていると、「おそ松さん」に対する底抜けの愛情や、チームワークのよさがわかってほのぼのする。

■朗読劇と即興コントで笑いのるつぼに

 全話を振り返るトークコーナーを経て、イベントの最大の目玉といえる「スペシャル朗読劇 シャッフルこぼれ話集」へ。アニメの作中では、単発のコントが詰め込まれたショートショート集も恒例だったが、朗読劇で新作が見られるとは! しかも声優陣が担当色の松パーカーを着ているうれしい演出だった(6つ子以外はグレーのパーカーを着用)。

 新作エピソードは計8本とボリューム満点。おそ松とチョロ松、カラ松と十四松、一松とトド松など、ファンにはおなじみの名コンビに加え、カラ松単独の“デリバリーコント”や、トト子×デカパン×トド松×一松といったアニメ本編で見られなかったレアな組み合わせの妙が楽しい。メインキャストが勢ぞろいした「イヤミ・チビ太のオレオレ詐欺」では、演じるキャラクターが入れ替わるという朗読劇のシチュエーションを生かしたギミックが楽しく、会場は大盛り上がりとなった。

 言うまでもないが、笑いと演技をきっちり両立させる人気声優陣の実力はやはりすごい。朗読劇は映像がない分、演者のノリで生まれていくテンポのよさや技量のぶつかり合いの激しさがはっきりわかる。アニメというパッケージを外した声優陣の生の熱量に圧倒され、大笑いしながらも見ていて鳥肌が立つほど。良い意味での演者同士のしのぎの削りあいが、「おそ松さん」をここまでの人気作品に押し上げた要因のひとつであることは間違いない。

 そして感心するのは、声優陣の“笑い”へ感度の高さと貪欲さだ。朗読劇のあとに「デリバリーコント in 幕張」という即興コントコーナーが行われのだが、ランダムに選ばれたコンビが3つのお題を組み合わせて即興でコントを行うという、本職の芸人でも難易度が高そうなもの。構成の松原氏をはじめスタッフがキャストの実力と瞬発力を信じていなければ任せられないものだろう。小道具を駆使したりハイテンション芸を見せたりと、体当たりで笑いを取りに行く声優陣の姿は新鮮だった。

 イベントのラストは、最終回で流れた「第四銀河大付属高校校歌」を会場全員で歌いあげ、ステージから銀テープが噴き出すという華々しさ。全力でふざける姿勢は「おそ松さん」でも貫かれていたと思うが、「フェス松さん」でも十二分に発揮していた。観客側もこのキャスト、このノリ、このスタッフの「おそ松さん」が大好き!という思いがより強まったはずだ。新作エピソードを聞けたのはうれしかったが、やはり続編を望む気持ちはおさえられない。また6つ子たちにテレビ画面の中で会えることを期待したい。

取材・文/小新井知子