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 日本だけでなく、米CNNも英BBCも報じ安堵した「ミッシング・ジャパニーズ・ボーイ」の奇跡的帰還。

 「しつけ」として置き去りにされた小2男子、田野岡大和くんが6日ぶりに保護されたニュースに、世界中が関心を寄せた。BBC電子版の記事は、次のように締めくくられている。

 “よい子育てと悪い子育ての違いは何か、どこまでがしつけやお仕置きとして認められて、どこからが虐待なのか、日本中が議論した1週間だった”と。

 厳しくしつけることと、虐待。両者の間に明確な線引きはなく、たとえ悪気はなくても、行きすぎてしまう親はいる。

「置き去りにするのでは、見ているか、見ていないかで大きく違いますよね。私も怒って、車から降ろすことがあるけど、必ず目に見えるところ、離れても3~4メートルかな」

 子育て中の30代の主婦はそう経験談を語り、「置き去り行為」そのものは否定しない。

「子どもが不安や痛みを覚えることは虐待です。山奥にひとりで置き去りにされて、どれだけ不安だったことか」(教育評論家で法政大学の尾木直樹教授)

 「置き去り」そのものを否定。厳しいしつけについて、こう語る。

「体罰を加えたり、校庭を走らせたりといったイメージがあるかもしれませんが、大きな間違い。本当に厳しいしつけは、人間の生命、尊厳、人権というものの大切さを理解するまで、粘り強く説くことなんです。それはつまり、子どもの尊厳も大切にするということです」

 時代は変わり、親子が直接向き合うことが圧倒的に増えた現代社会。ひとりっ子ともなれば、祖父母やきょうだいといった緩衝材がまったくない。より一層、親子の基本的信頼感が大切と、尾木ママは力強く説く。

「親に愛されている、親に守られているという基本的信頼感は、2歳くらいまでに形成することが大切なんです。幼い子どもにとってお母さんやお父さんは、自分の全世界といえるほど絶対的な存在。

 そのお母さんお父さんが自分を守ってくれないんだ、と感じたらどうして言うことを聞きますか? 子どもは信頼していない人の言うことは聞きませんよ」

 大人同士の信頼関係が一朝一夕にできないように、親子の間でもうまくいかないケースもある。そんなときは、

「ひざの上にのせて絵本を読み聞かせたり、子どもの行動をきちんと認め褒める。スキンシップをとるのも効果的。食事は朝昼晩、しっかりと食べさせるなど、基本的な生活習慣を身につけさせることも大切。粘り強くやることが重要です」(尾木ママ)

 そうはわかっていながらも、“どうしてわからないの!”“親の言うことが聞けないの!”と声を荒らげてしまうことも。再び尾木ママ。

「上から見下ろして怒鳴りつけるなんて、子どもは萎縮するだけです。おもちゃを壊したり、取り上げたりもダメ。おもちゃを壊すなんていうのは暴力行為ですから。子どもの心に深い傷を負わせます。

 そして母親の暴力をきっかけに学習して、子どもも暴力を行うようになります。子どもは自分が見たことがないことはやりませんから」

 『鬼から電話』というスマートフォンのアプリがある。言うことを聞かないと鬼から電話があり、怖がらせて言うことを聞かせるというものだ。

 これについても子どもを傷つけるだけと尾木ママ。罰として家事をやらせることも、罰を受けたくないから言うことを聞くだけと話す。

「正しいのは、子どもに諭すように話し理解させることです」(尾木ママ)

 「男児置き去り事件」の父親は子どもに再会した際、「つらい思いをさせてごめんな」と謝罪したという。

 ニュースを見ていた子育て中の30代の母親は、こう漏らした。

「私も人間ができていないから、間違えることもある。でもだからこそ、子どもと一緒に成長していけたらいいな」

 北海道の親子も再び家族の結びつきを紡ぎ始める。しつけに迷い悩む親子に、尾木ママは、

「子育てに手遅れはありません」