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 東京都の舛添要一知事は一連の公私混同問題について6日に会見を開き、弁護士による調査報告書を公表した。報告書をまとめた元東京地検特捜部副部長の佐々木善三弁護士と元検事の森本哲也弁護士が会見に同席。

 A4で63ページにわたる同書で明らかにされたのは「政治資金の支出として不適切なものはあるが、違法ではない」とする“無罪認定”だった。

 例えば、2013年と'14年正月の千葉・木更津「龍宮城スパホテル三日月」の家族旅行の最中、事務所関係者らを部屋に呼んで重要な政治会議を開いたと舛添氏が主張していることについては「政治活動に無関係であるとまではいえない」と判断。

 そのうえで「全体としてみれば家族旅行と理解するしかなく、政治資金を用いたことが適切であったと認めることはできない」とお灸をすえた程度だった。

 調査でわかった「関係者ら」は元新聞記者の出版会社社長ひとり。しかも社長本人には確認せず、周囲に聞いて事実認定したという杜撰さだった。

 天ぷら店や回転ずし、イタリアンレストランの食事についても「家族の食事であった可能性が強い」との表現にとどめ、無罪の余地を残した。

 記者団の追及に対し、佐々木弁護士は「関係者は関係者ですよ」「あなたは事実認定というものをご存じない」などと挑発で応じ、調査は十分尽くしたと胸を張った。

■「知事失格」として辞職を求める声が

 舛添氏は「不適切」とされた支出計約114万円は個人資産から慈善事業に寄付し、けじめとして湯河原の別荘を売却するという。

 これで都民、国民が納得できるはずがない。翌7日の都議会代表質問では、都知事選で舛添氏を応援した自民、公明まで厳しい姿勢を見せた。

「知事、私は怒っています。あまりにセコい! セコすぎます。怒りの声が2万5000件届いている。抗議電話に1本でも対応したことがありますか」(自民・神林茂都議)

「知事は失格です。紹介できないほど激烈な怒りの声も多く届いている。政治家の出処進退は自ら決めるべき。辞職を求める声は高まっています」(公明・上野和彦都議)

 翌8日の一般質問でも「知事は疑惑の総合商店だ」(自民・来代勝彦都議)などと批判的な質問が続き、舛添氏はうつむき加減にボソボソと小声で答えるばかりだった。

 舛添氏をめぐっては、都内の清瀬市議会と小金井市議会が「辞職を求める意見書」などを全会一致で可決。町田市議会は辞職を求める決議案こそ否決されたものの、疑惑の徹底究明を求める決議をした。

 一方、都議会は足並みがそろわない。疑惑追及のために百条委員会設置を求める共産党に比べれば、与党の姿勢はパンチ不足だ。

 都議会を初めて傍聴したという杉並区の主婦(58)は「自民・公明が辞職に追い込むことを期待してきたので残念」と顔をしかめた。

 舛添氏は一連の問題の責任を取るとして、知事給与を減額する条例案を開会中の都議会に提出するという。10日の定例会見で減額割合や期間について、「いま詰めているところです」(舛添氏)と述べた。

 なぜ、都民の理解を得られないと思うか。舛添氏は神妙な面持ちでこう話した。

「学者出身だから生意気なことを言っているように映ることもあると思うんです。立ち居振る舞いには気をつけたい」

 政治とカネに詳しい日大の岩井奉信教授(政治学)は、

「政治家の飲食費などにはおかしなものがよく含まれているが、ここまで徹底的に公私混同があるのは珍しい」

 さらに次のように指摘する。

「例えば1万5000円程度の回転ずし代くらい、ポケットマネーで出せばいいじゃないですか。書道の筆運びをスムーズにするために中国服を買ったと言い訳したり、絵画購入代金を政治資料代としたり、庶民からみればこざかしいところがある。イメージが湧きやすいから、けしからんという声が大きくなった。ここまでくると信頼回復は無理でしょう」(岩井教授)

■“ポスト舛添”は女性やお金持ちを

 舛添氏は辞職する気が全くないのだろうか。政治評論家の浅川博忠氏は「9~10月に辞めるはず」と話す。

「いま辞めると、2020年東京五輪と任期4年の都知事選の時期がぶつかってしまう。五輪の警備と選挙戦で警察の手が足りなくなるんです。9月以降に辞めて選挙になれば、4年後は五輪も終わっているので問題ない。9月に始まる秋の定例都議会で辞めるシナリオで、舛添氏と自民で内々に話が進んでいると思う」(浅川氏)

 来年には都議選が控える。水面下では“ポスト舛添”が囁かれているという。

「民進・蓮舫代表代行VS自民・小池百合子衆院議員の女の戦いが予想されています。あるいは知名度に頼らず、実務型の副知事や局長クラスの内部昇格もありうる。蓮舫氏は中央政界でもっと活躍できる将来性があるため、出馬の説得工作を固辞するかもしれないからです」(浅川氏)

 ちなみに『週刊女性』の街頭インタビューで次の都知事として名前が挙がったのは、舛添氏と都知事選を戦った宇都宮健児弁護士や、性格がアツくてクリーンでいいというタレント松岡修造氏、予備校講師の林修氏、「次は女性知事がいい」という意見もあった。