1時間ほどの取材中、相談の電話が3本も─。被害を訴える人の多さ、切実さを実感させられる。

『全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会』の事務局長であり、東京都日野市の市議でもある池田利恵さんは、2013年の同会設立以来、これまでに3000名以上の相談に乗ってきた。会員は543名(6月10日現在)にのぼる。

 相談電話の受話器を置いた池田事務局長が言う。

「みんな、心因性だとか精神疾患だとか、あるいはわからないと言われて、医療機関を渡り歩くことになる。傷つき疲れ果て、ようやく被害者の会へたどり着くんです」

 子どものためと信じ、よかれと思ってワクチンをすすめた母親たちは今、深い後悔にさいなまれ苦悩している。

心配で死ねない悔やむ母の思い

写真=学業に励んできた美樹さんだが、記憶障害があり将来が見通せない

「このワクチンを接種して以来、娘は計算も、時計を読むこともできなくなりました」

 そう語るのは井上美樹さん(仮名=19)の母、美幸さん(仮名)だ。子宮頸がんワクチンを接種したのは'12年、美樹さんが15歳のころ。区からの接種案内が送られてきたのがきっかけだった。

「“今、接種すれば区が全額もちます”とあったんです。副反応については、特に何も書かれていませんでした」

 同年8月から翌年3月にかけて、計3回接種したが、2回目から異常が見られるようになった。

「記憶力が落ちて、英単語を覚えようとするんですけど、覚えられない。様子が変だなとは思っていました」

 大きな変化は接種3回目からだったという。

「高熱と嘔吐がありました。吐き気どめをもらいましたが治まらず、どんどんやせていく。“これはおかしい”と何件も医療機関を受診しましたが、原因はわからず、最後は、“気持ちの問題”と」

 だが、美樹さんは級友の顔さえ覚えられなくなり、学校にも行けなくなってしまったという。

 藁にもすがる思いでさまざまな医療機関を受診したが、「(数年前に行った中学受験の)受験ストレスが今ごろ出てきたんですよ」

「お嬢さんはうつ病。ワクチンでうつ病になるはずがないでしょう」

 そう指摘されるのが常だった。

 子宮頸がんワクチンの影響と診断されたのは'14年の冬、『HANS(子宮頸がんワクチン関連神経免疫異常症候群)』の提唱者として知られる西岡久寿樹医師のもとを受診してからのことだ。

 あれから2年。現在の美樹さんといえば、記憶や認識の障害を除けば、見た目は青春真っ盛りの19歳そのもの。

「でもこの子、引き算もできないんです。見た目では障害はわからないけれど、脳の高度な機能がやられている。このままでは就職できないし、何の保障もない。もし親が死んだら美樹は、それからどうやって生きていけばいいんでしょう? 私、心配で死ねない」

 と、美幸さんは泣き崩れた。

「今年4月の厚生労働省報告によると死亡例も出ています。それほどの副反応があるワクチンなのに、私たちには一切、そのリスクが知らされていませんでした。子どもを守れるのは親しかいないのに、私は美樹を守れなかった……。

 ダイレクトメールが来るんです、成人式の着物とかの。それを見るのもつらいです。

お母さんたちは、どうか子どもを守ってあげてほしい。こんな思いをするのは私たちだけでたくさんです」

私が無理やり打たせてしまった

全国子宮頸がんワクチン被害者連絡会神奈川県支部の代表を務める山田さん

「娘は“打ちたくない”と言っていたんです。それを私が“3回打たないと効果がないよ”と言って、無理やり打たせた。1回目に打った直後から痛みやしびれを訴えていたのに、私が真剣に取り合わなかった。申し訳ない気持ちでいっぱいです」

 横浜市の山田真美子さんは、そう言って次女の彩子さん(仮名=19)に子宮頸がんワクチン接種をすすめたことを悔やんだ。

 県下でも強豪の剣道部に所属し、大将を務めていた彩子さん。子宮頸がんワクチンは中学3年だった'11年8月から翌2月にかけて接種した。

 1回目直後から“太いドライバーで腕をグリグリと刺されるような痛みと、ビリビリ感”を訴えていたという。

「しびれがあったようで、箸の持ち方がおかしくなり、お皿やコップも変な持ち方をするように。私はしびれに気づかず、食事のたびに“行儀が悪い”と叱っていました」

 3回目の接種から8か月がたつころ、手足や頭などが意図せずに動く不随意運動が現れた。身体が勝手に動きだし、まるで陸に上がった魚のようにけいれんしてしまうのだ。その激しさは家が揺れるほどで、

「これは脳に異常が起きている、と思いました」

 彩子さんの祖父が神経性の難病で亡くなっていることから、当初はその遺伝を疑った真美子さんだが、CTやMRIでも異常は見られない。神経内科から精神科、脳神経外科へと医療機関を回ったが、原因はわからなかった。

 ワクチンとの関連を疑ったのは、'13年5月のころだ。

「夕方のニュースに、たまたま不随意運動を起こしているお嬢さんの映像が出たんです。うちもワクチンは打っているし“彩子と同じ症状の子がいる”と血の気が引きました」

 被害者連絡会に連絡後、国立精神・神経医療研究センターの集団診察会で、ワクチンの影響を指摘された。

 彩子さんはステロイド剤を大量に投与するステロイドパルス療法を受け、ビタミン点滴も続けているが、不随意運動やけいれんはやまず、関節痛や頭痛、激しい生理痛などの症状に今も苦しめられている。高校卒業後はガーデニングの専門学校に入学し、学校関係者の理解のもと、造園やフラワー装飾を学んでいる。剣道で活躍した経験を生かし、警察官や自衛官になりたいという夢をあきらめての方向転換だった。

 母の真美子さんは現在、被害者の会で神奈川県支部長を務める。被害者への理解と救済を求め、さまざまな方面への働きかけに追われる毎日を送っている。 

「お母さんに自分の体調の悪さを言っても、わかってもらえないで苦しんでいるお子さんがたくさんいるはず。ワクチンを打ってすぐでなく、1年2年たってから健康被害が出ることもある。それがどれだけ大変で苦しいものかを多くの人に知ってもらいたい。

 子どもたちに起きていることは、それをすすめた大人たちの責任です」(真美子さん)

 ワクチン接種後に健康被害が出たとして先月27日、63人の女性たちが全国4か所の地裁に一斉提訴した。その心情を前出・池田事務局長は次のように代弁する。

「被害者の方々は学校を卒業しても、就職する体力もない。非常に不安になっているんだと思います。また被害者としても今後の方向性を見いだしていかないと、なき者にされてしまうという危機感もある」

 国が健康被害とワクチンとの因果関係を認めていないなか、裁判は長期化も予想されている──。