北川景子が演じる、超強気な不動産営業チーフの三軒家万智があらゆる物件を売りまくるドラマ『家売るオンナ』(日本テレビ系)が絶好調。三軒家は手段を選ばずにガンガン家を売りさばいていく。でも、不動産会社には本当にあんなスーパーウーマンがいるの? そこで、実際の“家売るオンナ”たちにリアルな本音を語り合ってもらった。ドラマと現実の違い、仕事の苦労話など気になる業界のウラ側は――

<座談会メンバープロフィール>
Aさん(20代)中堅不動産勤務、入社3年目。賃貸仲介営業
Bさん(40代)大手不動産勤務、売買営業。今年、他業界から転職
Cさん(30代)中堅不動産勤務、入社8年目。元賃貸営業担当
Dさん(50代)中堅不動産勤務、入社15年目。売買営業担当

勝ち気なくらいじゃないと、この業界はやっていけない

『家を売るオンナ』の主人公・三軒家万智を演じる北川景子

──職場でもみんな見ている?

Bさん(以下B)「放送翌日に社内でドラマの話題も出ます。もちろん、私は毎回見ています。みなさんはどうですか?」

Cさん(以下C)「業界の話だから、見ている社員は多いですね」

Dさん(以下D)「みんな録画してるんじゃない? 後輩と“あのシーンはないよね”なんて話したり。劇中の“家を売るだけでいいのよ”というセリフはちょっと気になったかな……。本当は、その後のフォローも大事だからね」

──三軒家チーフのような女性は実際に存在する?

Aさん(以下A)「賃貸物件を扱う私の会社はおとなしめの人が多いのですが、売買物件の会社だとガンガン売り込むタイプの人もけっこういるみたい」

B「そうかもね(笑)勝ち気なくらいじゃないと、この業界はやっていけないところもあるしね」

C「ですよね。私の会社も、“狩りに行くぞ!”という感じでお客さまに営業する先輩がいましたよ。その人は意気込みだけでなく、何でも答えられるように綿密に下見をしていました。営業成績はダントツで、3年目ぐらいで支店長に昇進していましたよ」

B「三軒家チーフじゃん!(笑)でも、私も“男性社員には負けたくない”と思って、毎日、頑張ってるよ」

D「私たちの会社は、“売れない家はない”ではなく、“売れない家もいつかは売れる”というスタンスなので、少しタイプが違うかも(笑)」

──劇中では、新人にサンドイッチマンをやらせたり、手に受話器をテープでくくりつけて営業電話をかけさせたりするパワハラが描かれてましたが……。

B「あれを今やったら、間違いなくコンプライアンスに引っかかりますね。ただ、新人時代はチラシ配りとテレアポをみっちりやらされます。チラシは1日500枚、テレアポは100件以上。契約を取るというより、新人のメンタルを鍛えるという意味があるのかも……」

D「そうだと思うよ。そういう積み重ねで成長していくからね」

“私が売りました”とドヤ顔してる暇なんかない

──迷っている客に決断させるために三軒家がサクラを使っていましたが、実際には行われているのでしょうか?

C「サクラはダメですね。バレたら面倒なことになりますから。ただ、“ほかにもここがいいと言っているお客さまがいらっしゃいますよ”と言って焦らせることはあります」

B「そういう手使うよねー。私も、申し込みが入ったときに“この物件はすでに申し込みが入っております”って言って、後で“ご案内できることになりました”って言うし」

──売れにくい家の特徴は? それを売る秘訣は?

D「やはり価格が高いと売りにくいわね。すべての条件がそろうのは無理だから、要望が5つあったら3つぐらいの条件を満たす物件を探すようにしてるかな」

C「お客さまの条件を全部満たすのなんて無理ですよね。価格もあると思うけど、安くても市街地から離れていると売りにくいかな。あとは築30年~40年を超える古い物件。ターゲットを金銭的に余裕のなさそうな方に絞って売り込むしかありませんね。あと、近くにお墓がある物件は敬遠されます。私の場合は悪い条件は正直に言って、ダメならほかの物件を紹介するようにしています」

B「お墓もだけど、最近は和室の人気もないみたい。洋室を希望される方には、ホームセンターで買える“なんちゃってフローリング”での改造を提案してるかな。それで妥協できることもあるからね。ただ、お客さまは間取りにはこだわる! ドラマでは一軒家を希望する家族が1LDKのマンションを買ってたけど、実際にはありえないと思う」

D「あれはありえないかもね」

──不動産業の楽しいところ、キツいところは?

D「仕事で全国を回れることかな。契約が決まれば、自分へのご褒美で美味しいものを食べたりして楽しいですよ」

B「一生に1度の買い物なので、家を引き渡すときに泣いて喜ばれる方もいます。こっちもうれしくなるなー」

C「でも、楽しいことばかりじゃないですよ。私は、新人時代に道を覚えるのに苦労しました。地図をひざの上に広げて、深夜に運転の練習をして。クリスマスでも練習しないといけなくて、イルミネーションの中を泣きながら運転しましたよ」

一同「うわー。それツラい!」

B「時間外労働も多いよね。ガス・水道・電気の調査で現場を見に行ったり、契約に関する書類を作成したり、こまごまとした仕事がいっぱい。家ひとつ売って終わりじゃないんです! 三軒家さんみたいに、契約から帰ってきて“私が売りました”とドヤ顔してる暇なんかないんだから!」

一同「そうそう。家ひとつ売るだけが仕事じゃないですよね」

男って単純~!

──これまでの、印象に残るお客さんは?

D「難航していたローンの審査が通って、一緒に泣いたお客さまのことはよく覚えていますね」

B「霊感の強い女性で、事故物件を異様に気にする方がいました。クローゼットを開けては、“キャー、怖い!”って叫ぶから大変だったなー」

A「すごいお客さまですね……」

C「私は、新居を手配した医者と看護師のカップルかな。結婚式の2次会に呼んでくれたんですよ。その後も自宅の食事会に招かれたりして、不動産営業冥利に尽きますね」

──お客さまの信頼を得るために心がけていることは?

D「ウソをつかないことが一番。わからないことは徹底的に調べて答えを出します。契約後も暑中見舞いなどの季節の挨拶を欠かさず、10年以上お付き合いしている方もいますよ」

B「まずは、お客さまに自分を知っていただくこと。よくわからない人から大事な家を買おうとは思わない。そして、世間話をすること。お客さまと仲よくなれば、多少のミスは笑って許してもらえるしね」

A「私はお客さまによって服装を替えます。老夫婦であれば、短すぎないスカートを。カップルのお客さまのときは、肌の露出を抑えめに。女性から警戒されないようにするためです。逆に、男性1人の場合は思い切って肌を出しますよ」

D「それ効果あるの?」

A「ありますよ。若い男性のお客さまに物件を案内したときに、“この部屋に女の子呼んだら来てくれるかな?”と聞かれたので、“もちろん。私だったら絶対行っちゃいます”と答えました。そしたら、すぐに契約が決まりましたから(笑)」

一同「男って単純~!(笑)」