あなたは1日、何回髪の毛を洗いますか

 日本人の大多数が1日1回以上、入浴とともに日常の習慣にしているシャンプー。頭皮や頭髪の汚れや皮脂などを、シャンプー剤で洗い落とすのは気持ちいいものです。「朝も夜もシャンプーが欠かせない」と1日に複数回洗う人もいるでしょう。

 私は美容師、ヘアースタイリストとして長年、さまざまな人の頭皮や頭髪に触れ、数え切れないほどのシャンプーをやってきましたが、一般の人の中にはその適切なやり方を理解していないというケースが実は多いと感じています。「たかがシャンプー」と思う人がいるかもしれませんが、侮ってはいけません。やり方が正しくないとフケやかゆみ、炎症のほか、悪臭や抜け毛などを招いてしまうこともあるからです。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 ハードな仕事で疲れていたり、お酒に酔っ払って深夜に帰宅したりした日には、「お風呂に入るのも面倒だし、頭を洗うのは翌朝にしようか」と思って、そのまま就寝してしまうこともあるでしょう。これは禁物。頭皮や頭髪の汚れは、その日のうちに洗い流すことが不可欠です。

 人間の新陳代謝がいちばん活発なのは、夜22時~深夜2時。それも入眠から3~4時間に成長ホルモンが分泌されやすい。そこに併せて頭皮を綺麗にしておくのが望ましいのです。「ヘアワックスなどのスタイリング剤が頭に残ったままだと、気持ち悪くて寝られない」という人も少なくないでしょう。その感覚が正解です。

シャンプーの正しいやり方

 次にシャンプーの具体的なやり方です。短髪の男性ならシャンプー剤をつけて洗う前の予洗いに時間をかけない人もいるでしょうが、実は予洗いには一般の人が想像するよりも、ずっと時間をかけたほうがいいです。まずは、お湯で1分から1分半くらい。指の腹でしっかりとマッサージするように汚れを洗い流します。頭皮をしっかりと濡らしていくイメージで行いましょう。

 スタイリング剤を多くつける男性や、ロングヘアーで髪の多い人は、特に事前の予洗いを怠ってはいけません。実はこの予洗いで頭皮や頭髪の汚れは7割ぐらい、特に皮脂やワックスなど、油性以外の汚れはこの時点でほとんど落とせます。予洗いをしっかりすることで、シャンプー剤の使用量が少なくても、ちゃんと泡立ちます。泡立ちが少ないとついついシャンプー剤をたくさん使う人もいるかもしれませんから、経済的な効果にもつながります。

 適量のシャンプーを手に取って、頭皮・頭髪の全体を泡立てます。そして頭皮を指のはらで、こめかみ辺りから洗っていきます。この時に、決して爪を立ててはいけません。濡れた状態の頭皮は傷つきやすいです。乾いた後、頭皮の乾燥につながります。もし、ネイルなどでデザインや長さ出しをしている方は、専用のシャンプーブラシを使用することをオススメします。マッサージのように頭皮を動かすことで、こするだけでは取り除くことのできない毛穴の奥の汚れを掻き出す効果もあります。

「上から下」に洗うは御法度

 このときの動作にも、ちょっと注意を払ったほうがいいでしょう。私が経営する美容室のお客や友人・知人などに話を聞くと、たいていの人は手や指、またはシャンプーブラシを「上から下」の方向で動かして頭を洗っています。

 一方で、望ましいのは逆です。「下から上」。頭頂部に向かっていきます。もちろん後頭部も同じように。なぜなら、地球には重力があるからです。年齢を重ねると、頭皮や顔はハリを失って下がり始めます。年齢を重ねるとともに、分け目が見えて、つむじなども分かれ始めます。これには肉体自身の老化はもちろんなのですが、少なからず重力によって、少しずつ引っ張られている側面もあるのです。頭皮のたるみによる、おでこのしわもそうです。

 余談ですが、こうした頭部の老化を自分で簡単にチェックできる方法は、耳の上の頭皮をつまめるかどうか。ここは重力に逆らえず一番初めに弛んでくる箇所です。

 そして最後に手をグーにし、下から上へ仕上げる。頭皮と顔は一枚の皮でつながっていて、この効果は汚れが取れるだけではなく、長年継続することでシワなど伸びると言われ、エイジング効果にもなり、血流の流れなどがよくなりリラックス効果や、抜け毛などの対策にもなります。

 そして、パソコンなどをよく使う方は耳の上をマッサージすると眼精疲労に効きストレスの軽減になるはずです。頭皮は臭いの元になるので男性の方はおろそかにしないでください。

 最後にシャンプー剤をすすぎます。どんなに高級で良質なシャンプー剤でも頭皮に残ってしまうのは良いことではありません。予洗いと同じく、指にお湯を伝え、頭皮に残ったシャンプーをしっかりと流していくことが大切です。

 トリートメントは適量を毛先中心に。しっかりと水気を切ると、トリートメントを薄めることなく塗布できます。両手の手のひらで毛束を挟み、ゆっくりなめしましょう。そうすることでキューティクルの方向を整えて、手の体温で浸透効果も上がります。

 ここまでできたら完璧です。普段の習慣になれば、まったく気にならずにシャンプーを楽しみながらでき、リラックス効果やエイジング効果に結びつくはずです。

 実は人によってシャンプーの相性があります。意外に思うかもしれませんが、ヘアースタイリストは1年中同じシャンプーを使いません。春から夏にかけては、だんだんと湿気を含み、夏は紫外線が強く、秋になると抜け毛の季節になり、冬になると暖房などからによる乾燥が始まるなど、季節によって条件は変化するからです。

 シャンプー剤選びはプロの手を借り、その季節によって変化する気候に合わせ、自分にあったシャンプーを選ぶのも必要不可欠です。


《著者プロフィール》毛利俊英(もうり・としひで)◎1972年千葉県生まれ。美容師/ヘアサロンtricca代表取締役。kakimoto armsを経て、2002年代官山にヘアサロンtriccaをオープン。美容室におけるトータルビューティーに早くから着目し、現在ヘアサロンの他、ネイル&アイラッシュサロンも代官山で展開中。2012年には、葉山の森戸海岸にトータルビューティーサロンをオープン。2014年までシュワルツコフのアンバサダーを務め、資生堂の商品開発やセミナー講師も務める。サロンワークを中心に、雑誌撮影、セミナーなど国内外で活動中。再現性と曲線を重視した、ライフスタイルに合った提案を得意とする。