バツイチのシングルマザーと年下の新進気鋭デザイナー。境遇の違う男女が出会い、恋に落ちていく─。恋愛ドラマの名手、北川悦吏子が描く“大人の純愛”とは? その深層についてプロデューサーが解き明かしてくれた。

登場人物は“いたいけ” 北川、執筆中に涙

ドラマ『運命に、似た恋』で共演する原田知世と斎藤工 NHK提供

「NHKでは通常、ドラマの企画内容を固めてからキャスティングしますが、本作は、企画内容の構想と並行して、早い段階から原田知世さん、斎藤工さんの名前があがりオファーしました。おふたりとも喜んでお受けくださって、素敵なキャスティングが実現しました」

 と語るのは、ドラマ『運命に、似た恋』(9月23日スタート 金曜夜10時~ NHK総合)の須崎岳プロデューサー。

 脚本は『素顔のままで』『ロングバケーション』『ビューティフルライフ』など、数々の人気作品を手がけ、“ラブストーリーの神様”の異名をとる北川悦吏子。意外にもNHKで執筆するのは今回が初。執筆も後半に差しかかった際には、“涙が零れた”とコメントしている。

「ドラマの登場人物たち。みな、いたいけ、か、痛いか、どっちかだ。あからさまに、幸せな人は、ひとりもいない。そんな彼、彼女らの苦しみや悲しみに、心を持ってかれたか、お風呂上がりに、涙が」(北川)

 ドラマ10では、『セカンドバージン』『コントレール』など、大人の恋愛を描いた作品が多いが、須崎Pによると、今作でのこだわりは“純愛”。

「40代の女性が純粋な気持ちで恋愛に向き合う姿を描きたいと思ったのです。年を重ねているからこそ守るべきものがあり、不器用にもなってしまうヒロイン。視聴者のみなさんにとっても等身大の姿ではないでしょうか。彼女の純粋ゆえに深い愛に共感していただければ」(須崎P、以下同)

 主人公のカスミ(原田知世)は45歳。バツイチのシングルマザーで、高級クリーニング店で働きながら、高校生の息子(西山潤)と暮らしている。

 ある日、カスミはマスコミでも注目されているデザイナーのユーリ(斎藤工)と出会う。遊びなれた雰囲気のユーリは、謎の多い人物だった。デザインの仕事には真摯に打ち込むが、カスミの店の顧客でもあるマホ(山口紗弥加)と男女の関係にあり、彼の師匠のヨシタカ(奥田瑛二)には、なぜか絶対服従。

 そんなユーリはカスミになれなれしく接し、パーティーに誘ってきた。当初はユーリを警戒したカスミだが、根は純粋な男であることを知り、やがてひかれていく──。

「不器用なカスミと、如才なく見えて実は不器用なユーリが少しずつ距離を縮めていくプロセスが、いちばんの見どころです。一生懸命に恋をする2人を見守ってください」

原田の優しさに癒される撮影現場

 カスミとユーリの恋の行方に加えて注目すべきは、少女時代のカスミの初恋ともいえる思い出。当時、出会った少年と、ある約束を交わしたことを、カスミは今も心のよりどころにしていた。もしかしてユーリは、そのときの少年なのか? 謎めいたサスペンス要素も。

「さらに、ユーリとヨシタカの関係に秘められた物語、カスミにとって恋敵ともいえるマホの存在など、ヨシタカとマホ、この2人がキーマンになっています。

 物語が後半に進むにつれて、いろいろな真実が明かされていきますが、そんな中でカスミが何を思い、どう生きようとするか。カスミの選ぶ道は、視聴者のみなさんの心にもきっと響くと信じています」

 繊細で美しいラブシーンも登場するが、カスミがユーリに歌を聴かせるところも見どころのひとつ。

「第2話(9月30日放送)で、シンガーとしても素敵な原田さんの歌声が聴けますよ」

 撮影は先日クランクアップしたが、現場は明るい雰囲気だったという。

「原田さんの優しさと、斎藤さんの朴訥な雰囲気とで共演者もスタッフも癒されていました。本作は、ラブストーリーであると同時に人がどう生きるかを描いたヒューマンドラマにもなっています。ぜひ、ご期待ください」

■一夜しか咲かない魅惑の花・サガリバナ

 たった一夜だけ開花し、明け方には散ってしまうサガリバナ。作品の象徴にもなっているこの花は、沖縄で観賞できる。見ごろは6月下旬から7月下旬。シーズンになると、観光ツアーも組まれるほどの人気だそう。可憐な花と甘い香りも魅力。

「刹那的な花です。しかし人間もいつ死ぬかはわからない。そのなかでどう恋をするか、どう生きるか。本作の象徴にふさわしい花を探してサガリバナを選びました」(須崎P)