「年齢を重ねても元気に幸せでありたい」

 誰もがそう願っていると思いますが、現実には見た目も、そして気持ちの面でも、若さあふれる人とそうでない人がいます。この違いが脳内で分泌されているホルモン(脳内物質)の放出量によるものだったら……。

 人生後半を幸せに若々しく過ごす秘訣を、『サンデー・ジャポン』(TBS系列)でお馴染みの山王病院副院長・奥仲哲弥先生に聞いてみました。

いつまでも元気な黒柳徹子さんの秘密とは?

──奥仲先生の近著『最期まで元気でいたいなら、「健康寿命」より「快楽寿命」をのばしなさい!』では、ヒトの幸福感を支配しているのは脳内ホルモンであるとありますが、これはどういうことなのでしょうか。

「女優の黒柳徹子さんと私の母が同い年なのですが、いつまでも向上心をもって元気な黒柳さんに比べて、最近の母は少し悲観的で、いろんなことに対して愚痴が多くなってきたのです。この違いは何かと医師として考えておりました。黒柳さんとは旧知の間柄で、お会いするたびにその元気の秘密は脳内ホルモン『エンドルフィン』にあるのではと、推察するようになったのです」(奥仲先生、以下同)

幸福感を増幅させる脳内ホルモン「エンドルフィン」

TBSテレビ「サンデー・ジャポン」でもおなじみ奥仲哲弥先生

──脳内ホルモンは聞いたことがありますが、エンドルフィンは初めて聞く言葉です。

「よく知られる、ドーパミンやノルアドレナリンと同じ脳内ホルモンのひとつで、痛みを抑える強力な効果や多幸感を増幅させる作用があることがわかっています。

 偽の薬を本物の薬と信じて服用すると症状が改善してしまう現象、『ブラシーボ(プラセボ)効果』もエンドルフィンの成せる業であったことが、最近の研究で確かめられました。私は年齢を重ねたらエンドルフィンをどんどん放出させ、『快楽を求める生活を送ってください』と患者さんにアドバイスしています」

──ご著書では、その代表者として黒柳さんが登場なさっていますね。

「黒柳さんの考え方や健康法は、まさにエンドルフィンを放出するポイントそのものなのです。それを紹介させていただければと思い、著書のなかで対談をさせていただきました」

──具体的にそのポイントとはどういったものですか。

「大事なポイントは2つです。そのひとつが、“自分は死なない”といった超ポジティブ思考。たとえば、『終活なんてしない』という考え方です。もうひとつが、一日一回、喜びを夢想すること。これを私は『一日一回の“エヘヘ”と“ムフフ”』と呼んでいます。

 この考え方と習慣を身につけることにより、年齢を重ねても、いつまでも若々しく元気な『快楽寿命』をのばすことができると考えています」

ただ健康に長生きしても、意味がない

──『快楽寿命』とはいい言葉ですね。詳しく教えてください。

「健康寿命という言葉が広く知られるようになりましたが、どんなに長生きできても、健康のことばかり心配したりして気持ちが幸せでなければ意味がないと思います。どんな状況でも人生を楽しめる力を持ち、人生の最後の最後まで喜びに満ちた『快楽寿命』をのばす人生を目標にするほうがいい、と私は考えています。

 もともと身体が丈夫な人も、どれほど体調管理に気を配った人も、人生の終盤になればほぼ間違いなく病気にかかります。老いや病気は避けられません。

 しかし、自分の生き方、考え方次第で命が尽きる日まで自分らしさを保てるのです。思うように体が動かせなくなって、いわゆる健康寿命が終わってしまっても、それから先の暮らしを自分なりに楽しんで、快楽寿命の長い人生を過ごせたらどんなにいいでしょう。

 このような『快楽寿命』をまっとうした方々をこれまで見てきて、私は尊敬し、憧れるようになったのです。エンドルフィンをたくさん放出して多くの方が幸せになり、明るい高齢化社会になることを願っています」

 

<プロフィール>
◎奥仲哲弥(おくなか てつや)
医学博士。山王病院副院長。国際医療福祉大学臨床医学研究センター教授。専門は肺がんの外科治療、レーザー治療。TBSテレビ「サンデー・ジャポン」にレギュラー出演するなど、幅広く活躍。わかりやすい医療解説には定評がある。

奥仲先生の新刊『最期まで元気でいたいなら、「健康寿命」より「快楽寿命」をのばしなさい』(定価1404円)は人生後半を幸せに自分らしく生きるノウハウが満載。エンドルフィンを放出する詳しいポイントや、黒柳さんを代表に、高齢者の方々の人生を楽しむノウハウが紹介されています。