未婚率が30年で4倍に! 親にできることとは?

親として絶対NGなのは、ほかの家の子どもと比べること。「自分には自分なりの幸せがあるのに」と、娘は否定されたように感じ、傷ついてしまう(写真はイメージです)

 結婚しない30代、40代が増えている。'10年の国勢調査によると、女性の未婚率は30〜34歳で34・5%。'80年には9・1%なので、この30年で約4倍に跳ね上がっている計算だ。しかも、生涯未婚率も年々上昇。'80年には女性4・45%だったものが、'10年には女性10・61%に。

「わが子も一生、おひとり様なのでは?」と気をもむ親も多いのではないだろうか。

 約2500人の未婚の男女とその親にインタビューした経験があるマーケティングライターの牛窪恵さんはこう話す。

「アラサー、アラフォーのお子さんの親御さんは、団塊世代〜バブル世代がほとんど。恋愛至上主義の風潮が盛り上がったころだけに、どうして娘たちが恋愛や結婚しないのか不思議に思うことでしょう」

 しかし、結婚について聞いても、娘からうるさがられてしまいがち。

 そこで、娘たちが結婚しない理由や背景を牛窪さん聞いた。

親子仲のよさが娘の結婚を阻む

親子の仲がよく、家事も母任せ、働くことにも理解がある。実家の居心地のよさも、娘の結婚を遠ざける一因に!(写真はイメージです)

 牛窪さんがアラサー、アラフォーの娘が結婚しない理由として挙げたのが、意外にも「親子仲のよさ」。この年代は、牛窪さんが“親ラブ族”と名付けたほど、親子仲がよい。

 それを裏づけるのが、親との同居率の高さだ。親と一緒に暮らしている未婚の30代は、約7割。そして、その約9割が家事をまったくやっていないという。

 しかし、もし結婚して家を出るとなると、現代日本ではまだまだ家事負担は女性のほうが大きい。出産後、フルタイムで仕事を続ける人はわずか2割だ。仕事は一生続けたいと思うものの、結婚、出産との両立は難しい。

 娘世代としては、キャリアと引き換えに実家を出て結婚するのはわりに合わないと考えるのも無理はない。さらに、恋人がいない場合は、イチから相手を見つけなければならない。「そこまでして結婚しなくても」と、先送りしてしまうというわけだ。

世話の焼きすぎが悪循環を生む

 一方、娘の結婚先送りをさらに後押ししているのが、親の存在だ。牛窪さんは、「母が娘を支えすぎてしまいがちです」と指摘する。

 とくに今のアラフォーの親は、団塊世代が多い。若いころはミニスカートで一世を風靡したツイッギーや、自由を求めて街へ飛び出す『ローマの休日』のアン王女に憧れ、恋愛結婚が少しずつ増え始めた時代。革新的なことが好きで、自立する女性への憧れもある。自分が今の時代に生きていたら、娘と同じようにバリバリ働きたかったという母親も少なくない。

 娘の仕事には非常に理解があり、応援しているため、毎日遅く帰ってくる娘の世話をついつい焼いてしまう。さらに、母が専業主婦の場合、自分の世話を嬉々としてやってくれる母の厚意を否定できないと、娘側が気を遣って甘えているケースも。そして、家事をやっていないことで、娘は「結婚して、いきなり全部やっていけるの?」と自信をなくす悪循環が生まれている。

 そんななか、「結婚しないの?」は、とてもセンシティブな話題だ。親子仲がよく、仕事への理解もあるからこそ、結婚に関する話題は持ち出しにくく、モヤモヤ……そんな親が多いのだという。

「親御さん自身が趣味を持つなどして子離れしたほうが、うまくいくケースが多いように思います」と牛窪さん。

「身近がいい」から出会えない

「出会いがない」は、よく聞く結婚できない理由のひとつ。婚活の形が増え、ネットも発達。その気になれば出会えそうなのに、なぜ?

「今の若者は、未知の場所に素晴らしいものがあるとは考えない傾向があります。海外旅行に行く20代も年々減少。アラサー女子も同じような思考をする人が増えています」と牛窪さん。そのため、出会いは身近なところでと考える人が増えているというのだ。DVやストーカーなど、恋愛のリスクがクローズアップされていることも、影響している。

 しかし、身近に出会える人数は限られているうえ、魅力的な人は早く結婚していることも多い。しかも、アラサー、アラフォーで未婚の男性たちは、子どもを考える場合は20代女性との年下婚を希望。身近な同年代の男性と結婚するならバツイチを、もしくは年下の男性を視野に入れるのが現実的だ。しかし……。

「近ごろの男性は恋愛に消極的。女性が引っ張っていく気持ちがないと厳しい面があります」(牛窪さん)。同年代とのミスマッチと“草食傾向”がダブルで立ちはだかる。

親のヤキモキ度も時代によりアップ

 親子仲のよさや同世代とのミスマッチで、なかなか結婚に踏み切れない娘たち。なんとか見守り、後押ししたいのが親心だが、技術の進歩により、それも難しくなっている。

 牛窪さんは、「昔であれば、彼氏からの連絡は家の電話にかかってきますから、娘の恋愛模様はなんとなく把握できたもの。今は通話ですらなく、メールやLINE。外からはまったくわからなくなってしまったんです」と話す。「スマホを見たいけど、勝手に触ったら怒られるし」「今日、飲み会って言ってたけれど、男の子とかしら?」と、ヤキモキする母親が増加中。

 また、アラサー、アラフォーの未婚の娘をめぐって父母がケンカになりやすいのも特徴だ。

「男親は、娘の現状を理解していない人が多い。“結婚しないなんて女としてヤバイ”など、デリカシーのない発言をしたり、“俺が紹介してやる”と、問題が多い部下の男性を紹介しようとすることも……」(牛窪さん)

 そんな父から娘を守るのも、母の務めといえる。

<プロフィール>
◎牛窪恵さん
'68年、東京生まれ。インフィニティ代表取締役。世代・トレンド評論家、マーケティングライターとして活躍。'14年より、内閣府 経済財政諮問会議・政策コメンテーター。さまざまなメディアでも活躍中。『恋愛しない若者たち』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)など著書多数。