レストランでのコース料理、どれを選ぶかにもコスト感覚が問われる
 敏腕社長でありながら「理学博士(Ph.D.)」「MBA」「行政書士」「宅地建物取扱士」「栄養士」などと多くの資格を取得し、その波乱万丈の経営経験から、多くのビジネス書が著作にある臼井由妃さん。そんな彼女の著書『お金持ちはなぜ、靴をピカピカに磨くのか? 金運を鍛える「倹約」生活のルール』(朝日新聞出版)が9月下旬に発売された。同書では、夫が残した3億円の借金返済を可能にした節約術やノウハウが解説されている。そんな臼井さんがお金の持ちの”考え方”を教えてくれた。

 突然ですが、初めて入ったレストランで、3つのコースが用意されていたとします。

 Aはプレミアムコースで、メイン料理は数量限定の「大田原牛の極上ステーキ」で、18000円。Bはスーペリアコースで、メイン料理は「松坂牛のステーキ」で10000円。Cはスペシャルコースで、「地産地消」をコンセプトにメイン料理は「地元牛のステーキ」で、5000円です。

 あなたなら、どのコースを選びますか? お金持ちならば、どのコースを選ぶでしょうか?

 私が知る限り、お金持ちはCの「スペシャルコース」を選びます。

「えっ? お金持ちなのになぜ、一番安いコースを選ぶの?」

 と疑問を感じた方も、多いでしょう。

 お金の心配をする必要がない彼らだったら、一番高い「プレミアムコース」を選びそうなものですが、真のお金持ちは「値段が高いから美味しい」とか、「高いから価値がある」とは考えないのです。

 高額なコースには最上級の食材を使っているという事実は、あります。希少性があり珍しい食材も、登場することでしょう。

 そうでなければ強気の価格設定はできないことも、お金持ちは知っています。それでも、「一番安いコース」を選ぶには、理由があるのです。

なぜ、お金持ちは「一番安いコース」を選ぶのか

 「一番安いコース」には、お店の良心が現われます。

9月下旬に発売された『お金持ちはなぜ、靴をピカピカに磨くのか?』著:臼井由妃(朝日新聞出版) ※記事の中で画像をクリックするとAmazonの紹介ページに遷移します

 高級食材は手間ヒマかけずとも、美味しい料理に仕上げるのは容易です。

 よく言いますでしょう。「素材本来の旨みが引き出されている」「素材が生きている」と。

 もちろん値段に見合う料理に仕上げるシェフの腕は必要ですが、人には「高いものはいい」「高いものを食べられる自分はすごい人」という意識が働きます。

 そうした優越感や征服欲が、「味覚」を鈍くさせることがあるのです。

「高級食材」を使い、「高級食器」で「こちらはお客様のような一流の方にピッタリのコースでございます」というように、うやうやしく供されたら、まずいわけがありません。

 一方、「一番安いコース」では食材のレベルが落ちる分、知恵を使い、美味しくする工夫を凝らす必要があります。シェフの腕が試されるのです。

 また、「来店客を増やしたいという思いから、一番安いコースには採算を度外視した食材を使う店が多い」と、ある一流レストランのオーナーシェフが教えてくださいました。

 確かに、「利益率」を低くしても「美味しい」「また行きたい」という人が増えたほうが、お店としては好ましいです。口コミでの紹介も、増えるでしょう。

 ですから、「一番安いコース」に力を注いでいる場合が多いのです。

 また、お金持ちが「一番安いコース」を選ぶのは、「リスク」を考えているからでもあります。

 彼らは、必要なことには、惜しみなくお金を使いますが、一見のお店で情報もない場合、料理の価格は「美味しいかどうか」の算定基準にはなりません。

 高いコースを選び、「こんなはずではなかった」と、いうこともありえます。また高い分、ボリュームがあって「食べきれない」ということもありますね。お金持ちは、単なる料理選びでも、「リスク」を考えて行動しているのです。


著者プロフィール:臼井由妃(うすい・ゆき)●1958年東京生まれ。健康プラザコーワ、ドクターユキオフィス代表取締役。行政書士試験に合格し行政書士資格を有する。宅地建物取引士・栄養士。33歳で結婚後、病身の夫の後を継ぎ会社経営に携わる。次々にヒット商品を開発し、独自のビジネス手法により通販業界で成功をおさめる。日本テレビ「マネーの虎」に出演。経営者・講演者・経営コンサルタントとして活動する傍ら、難関資格を取得した勉強法も注目される。ビジネス作家としても活躍。著作は50冊を超える。