『べっぴんさん』に出演している高良健吾 撮影/高梨俊浩

 連続テレビ小説『べっぴんさん』で、ヒロイン・すみれ(芳根京子)の幼なじみであり、姉・ゆり(蓮佛美沙子)の夫・野上潔を演じている高良健吾。今回は5年ぶりの朝ドラ出演となる。

「朝ドラは、『おひさま』という作品に出演させていただいて感謝していたんです。だから、今回オファーをいただいたときはありがたかったです。

『おひさま』に出演したとき、視聴者の方たちからいただくリアルタイムでの反応がすごくうれしくて。たくさんの人に何かが届いているという感覚が自分の中にあったんです。

 それまでは、どこか仕事に対して個人プレーだったというか……。自分の中に、曲げたくない“大切なこと”がたくさんあって。でも、それも持ち続けながらも、さらに新しい感覚で仕事ができたんです。あのときみたいに今回も自分が変われるかな、と思っています」

高良健吾 撮影/高梨俊浩

「自分自身がイヤになるときもある」

 “変わりたい”とつぶやく彼。これまでも自身の転機に影響を与えた作品があるという。

「朝ドラがそうだし、大河(昨年の『花燃ゆ』)もそうだった。自分が落ち込んでいたり、苦しいときにNHKから長いスパンで取り組める作品のオファーをいただけるんです。

 常に自分がやりたいことをできるわけではないし、自分自身がイヤになるときもありますが、不思議とそのタイミングでお話をいただくんです。すごくそれで自分が救われているんです。言ってしまうと『べっぴんさん』に入る前もなんとなく苦しくて……。だから、この作品で自分がちょっとでも変われたら、と思っています」

 今回演じている潔という役は、戦争でつぶされてしまった会社を再興しようと奮闘する。闇市で商売を始め事業に才覚を発揮するが、これまで高良が演じてきたキャラクターとは雰囲気が違うように見える。

「とにかく僕はアウトサイダー的な役が多かったですから。自分もそこに引っ張られてきたということもあります。潔は人のいいところを見ることができる人物。自分はもちろん、人を信じる強さが真ん中にあるんです。だからどんなに苦しく迷っていても、前向きな言葉をちゃんとしゃべることができる。僕自身もそういう気持ちになってきています」

 潔はゆりと結婚したが、すみれの初恋の相手でもある。女性たちが潔に惹かれる部分はどんなところだと思う?

「愚直に、誠実に生きているところだと思います。目の前にいる人に一生懸命ぶつかれて、手を抜かないところじゃないですか。僕もそんな部分を最後まで変えずにやりたいと思っています」

「僕の“熊本びいき”はすごいから(笑)」

 すみれ役の芳根京子はどんな人?

「とにかく一生懸命で、連続テレビ小説のヒロインとして現場に立っています。控室に戻らず、常に現場にいて、常に笑顔で共演者のひとりひとりに声をかけています。あと、トマトばかり食べています(笑)。トマトを食べていれば芳根ちゃんみたいに心がキレイになれるかなと思って、僕も一緒に食べています(笑)」

 ゆり役の蓮佛美沙子はどんな人?

「すごく芯がぶっとい方で、ゆりと同じ姉御肌です。何があっても受け止めようとしてくれるので、蓮佛さんとやっているときは安心感がすごくあります。あと、女子はみんなそうですけど、食べることが大好き(笑)。みんなでNHKの近くにあるイタリアンレストランでランチをしたりもしました」

 すみれとゆりの父親・五十八サンとは、こんな縁が……。

「僕のデビュー作が16歳のときに出演した『ごくせん』なのですが、そのとき教頭先生を演じていたのが生瀬(勝久)さんでした。そのあと『南極料理人』という映画でご一緒させていただいて、今回が3作目になります。

 お芝居が毎日楽しい、とお話しされていて。僕も楽しみたいけれど、すごく難しい。楽しむまではいかなくて、ちょっとウズウズしています(笑)」

 自身の転機になっていると話す朝ドラ。『おひさま』スタート前の3・11には東日本大震災が起きて、放送が1週間遅れた。今年の4月、高良の故郷・熊本県が大きな地震に見舞われたが、このドラマを通じて届けたい思いについても聞いた。

「『べっぴんさん』の真ん中にあるのは“思いやり”で、他人を思う気持ちだと思っています。『おひさま』のときは東北の方から手紙をもらってうれしかったし驚きました。

 今回、熊本が被災しましたが、そこだけに対して気持ちを向けているわけではありません。でも、僕の“熊本びいき”はすごいから(笑)、熊本の人が元気になってくれるのはうれしいです」