晩婚化が叫ばれて久しいが、なぜ結婚しなくなってしまったのか? 結婚情報産業など“婚活”はさまざまな形で行われている。結婚したいのに、しない・できない実情を短期シリーズで探る。【“結婚ためらい”症候群リアルボイス 連載第1回】
合コン、婚活パーティー、婚活アプリ、結婚相談所でのお見合いなど、婚活の場は数多い(写真はイメージです)

 今や婚活市場は花盛りで、合コン、婚活パーティー、婚活アプリ、結婚相談所でのお見合いなど、スマホひとつあれば、誰でも手軽に婚活できる時代だ。

 こんなにも多くの出会いの場が提供されているのだから、結婚している人たちも増えているのだろうと思いきや、未婚率は近年、上昇の一途。

 国立社会保障・人口問題研究所の推計によると、今後20年弱で、男性の3人に1人、女性の5人に1人が結婚しない時代がやって来るという。

 独身者は、なぜ結婚しないのか? “若者の草食化”や“非正規雇用者の貧困”などの理由が取りざたされているが、本当にそうなのだろうか。土日のホテルのティーラウンジに行ってみるといい。席の大半がお見合いをしている男女で埋め尽くされている。また、いったん婚活アプリに女性が登録すれば、毎日のように男性から申し込みがかかってくる。

 結婚希望者は、出会いを求めて行動は起こしているのだ。しかし、相手を決めることができず新たな出会いを繰り返している。20回、30回とお見合いするのは当たり前になっているし、婚活アプリで120人と出会ったというつわものもいる。それでも結婚できない。今や“婚活ジプシー” “婚活迷子”という言葉も生まれているくらいだ。

 なぜ結婚したいのに、結婚できないのか。連載1回目はリアルに婚活する女性たちの姿をお伝えする。

身分チェックの甘い婚活パーティーは騙しの宝庫

 真美さん(仮名・45)の婚活歴は2年。結婚できると思って付き合っていた彼と42歳のときに別れ、しばらくはひとりでいたが、“行動を起こさなければ出会えない”と思い婚活パーティーに出かけ、半年前に44歳の男性と出会った。

「最初のデートで身体の関係になりました。そしたら身体の相性がすごくよかったんです」

 外で食事をし、彼のアパートに行ってお泊まりデートをする日々が続いた。

「でも、お付き合いをしていくうちに“アレ?”と思うことがたびたびあって。ひとつ年下だから、時間軸はほぼ同じはずなのに、学生時代に流行っていた服やテレビ番組の話をすると、どうもズレている。あるとき彼の部屋の棚に置かれている保険証を見たら、生年月日が私の6つ上で51歳でした。しかも扶養家族がいたんです」

 トイレから出てきた彼に保険証をつきつけると、あわてながらも取り繕うように言った。

「ごめん。最初は軽い気持ちだったんだけど、本気で好きになって、真美を失うのが怖くて本当のことが言えなかった」

 彼は既婚者で2人の子持ち、単身赴任中だった。怒りに震えてまくしたてる真美さんの口をキスでふさぎ、抱き上げてベッドへ……。結局、なし崩し的に今も関係は続いている。

「もう45だし、子どもは望めないから、彼と付き合いながらゆっくり結婚できる相手を探そうと思っています」

婚活アプリにはびこるデート商法

 寂しくなければ、本気で結婚相手を探そうとはしない。身分証明のチェックが甘いパーティーやアプリではよく起こりうることだ。38歳の敦子さん(仮名)もそのひとり。

「婚活アプリで36歳の男性と知り合ったんです。リアルで会ったら写真のまんま、すごく素敵な人で、一目惚れでした」

 1回目のデートで別れ際にハグされキス。2回目のデートでホテルに誘われた。

「ベッドの中で“運命を感じる”と耳元で囁かれてとろけそうになりました。2年近く婚活をしてきて“婚活疲れ”を起こしていたので、“これでやっと結婚できるかも”と」

 服を着て、満たされた気分でソファに座っていた敦子さんの前に、彼がビジネスバッグから書類を出してきて言った。

「これからのことを考えたら、貯蓄型の保険に入っておいたほうがいいと思うんだ」

 彼は、ある保険会社の営業マンだった。

「いきなり現実に引き戻されました。でも、ここで断ったら彼を失う気がして“家で考えるね”と持ち帰ったものの結局、契約してしまいました」

婚活パーティーなどで、デート商法にひっかかる女性が後を絶たない(写真はイメージです)

 契約したとたんに彼とは連絡が取れなくなった。

「着信拒否されているのがショックだったし、これ以上、傷つくのが怖くて、その保険会社に電話もできなかった」

 それから2週間後、その保険会社から彼が退職したという1枚のハガキが届いた。敦子さんは本当に退職したかどうかも確かめていない。彼との連絡が取れないまま、今でも毎月1万7800円の保険料が口座から引き落とされている。

 婚活パーティーなどで、デート商法にひっかかる被害者は後を絶たない。マンション、宝石、着物など商品は高額だ。また騙す男性ほど女性慣れしていて言葉が巧みなのだ。

お見合い市場にいる奇人変人、珍プレー

 安い婚活パーティーや婚活アプリで騙されたり、いい出会いがなかったりした女性たちが、最終的に行き着くのが結婚相談所だ。登録や活動費が高額(20万〜100万円)で、結婚したら成婚料も取られるのだが、入会にあたって独身証明書、最終学歴証明書、国家資格者はその証明書、収入証明書(男性のみ)の提出が義務づけられているため身元にうそ偽りがない。

 相談所によっては、ハイスペックな男性の入会を掲げているところもある。仲人や担当カウンセラーが世話を焼いてくれるので、親が息子を登録したり、女性慣れしていない男性が“最後の砦”として入会していたりすることもある。

 現在、大手相談所に入会している里美さん(仮名・37)は言う。

「写真が素敵で年収の高い人には、申し込んでもなかなかOKがもらえないんです。これまで36回お見合いをしましたが、ピンとくる人はひとりもいなかった。食事を1、2回して終わってしまった人がほとんどです。私もいい年だし、自分のことを棚に上げて言うのもなんですが、変わった方が多かったです(苦笑)」

 ある男性(47)と最初のデートをしたときのことだ。

「居酒屋でご飯を食べたら割り勘でした。お店を出たら“お茶しますか? ごちそうします”って言うんです。どこに連れて行かれたと思います? 自動販売機の前ですよ。温かい缶コーヒーを買ってくださいました。真冬だったし、120円出していただけるならマクドナルドに行きたかった」

 ほかにも、お見合い中に視線がチラチラ泳ぎっぱなしだった人。会話が一問一答形式で話がふくらまず1時間のお見合いが苦痛だった人。貧乏ゆすりが止まらなかった人。開口一番「僕は持ち家なんで、船橋に嫁に来れますか」と聞いてきた人。いきなり保険証券と預金通帳を見せてきた人……。

「そういう方たちに共通していたのが、待ち合わせの場所にすでに来ていて、こちらをチラチラ見ているのに自分からは声をかけてこないんです。こっちが“〇〇さんですか?”と話しかけるのを待っている。みなさん、女性に声をかけた経験がないのでできないんでしょうね、きっと」

女性を目の前にして緊張感のあまり…

女性がティールームの予約席で待っていると…(写真はイメージです)

 お見合い市場にいる男性の珍プレーには、枚挙にいとまがない。39歳、お見合い回数50回の静香さん(仮名)は言う。

「お見合い30回を超えたあたりから、もうどんな男性が来ても驚かなくなりましたが、ひとりだけ忘れられない方がいます。ティールームの予約席で待っていたら、いらした男性がガタガタ震えていてイスに座ろうとしたとき失禁してしまったんです。もちろん、その日のお見合いは中止になりました」

 こんな話もある。元CAで美人の敬子さん(仮名・32)は年収4000万円の開業医とお見合いすることになった。

「私、気合が入ってました。ホテルに着いたら10分前だったのでトイレにメイク直しに行ったんです。気づいたら時間が5分過ぎていた。あわててティーラウンジに戻ると、お相手はすでに立っていらして。

 “お待たせしてごめんなさい”と小走りで近づいたら、いきなり怒鳴りつけられました。“お見合いに遅刻をしてくるなんて非常識だな。『今日のお見合いは私が遅刻したので、なくなりました』と、ここであなたの仲人に電話してください!”と」

 その剣幕に震えながら仲人に電話。敬子さんが電話を切ると、その開業医はスタスタと帰ってしまった。

 もちろん、これらは突出した一部の例で、誠実で心やさしい人たちは大勢いるし、婚活アプリ、婚活パーティー、お見合いで幸せな結婚を決めていった人たちも大勢いる。

 しかし、なぜこれほど多くの出会いを繰り返しているのに、結婚相手に巡りあえないのか。

 次回は、そこを掘り下げたい。

<プロフィール>
取材・文/鎌田れい
21歳よりティーンズ雑誌のライターとして活動を始める。鎌田絵里のペンネームで恋愛ライトノベルズを18冊、恋愛エッセイや婚活本の出版も。芸能人や文化人の記事や書籍も執筆。自身が婚期を逃し、必死の婚活の末、36歳で結婚。40歳で双子の母に。その経験を生かして、恋活・婚活ライターとして活動中。ミッションは、生涯未婚率の低下と少子化の歯止め。