小林薫 撮影/佐藤靖彦

 夜の12時から朝7時まで、繁華街の片隅で営業する小さなめしやを舞台に、さまざまな大人たちの“事情”を描く『深夜食堂』で、マスターを演じる小林薫。

「あのマスターの衣装、すごく楽で作業がしやすいんですよ。だから、休憩や空き時間もあの服のままなんです(笑)」

 連続ドラマから始まり、昨年初めて映画化されると大ヒット。そして早くも第2弾が完成!

「ファンの方はもちろんですが、意外と役者さんからの反響もすごくて。(共演の)不破万作さんが柴田理恵さんと仕事したときに“私も出たい”って言ってたらしく、それでドラマへの出演が実現したんですよ。前作の映画に出てた向井理くんも、自分からだったみたい」

 ファンからも役者からも愛され続ける『深夜食堂』。ドラマを盛り上げるのは、何といっても各話ごとに出てくるおいしそうな料理の数々。全部食べているのだろうか?

「僕は料理を提供する側の役なので、芝居では食べてないんですけど、気になるものがあると“ちょっとそれ昼飯用にとっておいて”って頼んだりしますね(笑)。(フードスタイリストの)飯島奈美さんの料理は本当に全部おいしいんです。長芋のソテーとかうまかったなぁ。オイルと塩を入れてきつね色に焼いただけのシンプルなものなのに、すごく香ばしくてね。

 あとはお茶漬け。劇中では梅、たらこ、シャケをそれぞれ好む3人組の女性が出てくるでしょ。でも僕はそれを全部入れて贅沢にいただきました(笑)」

 マスターはどんな人だと思うか、と尋ねると、

「僕が演じるマスターって、プロの料理人として出発した人なのか、ほかの職業から飲食を始めた人なのか語られてないからわからないけど、僕の中では、彼のベースは素人だと思ってて。だからプロみたいに完璧じゃなくてもいいと思うんです。たまに卵焼きを作ってる途中に卵を破いてしまったりするんだけど、小さい失敗ならそれも“味”なのかなって思ってます」

役者仲間たちと飲む“いい時間”

料理をするシーンでは、具材を入れるタイミングや炒め方などに細かく指示が入るそう 『続・深夜食堂』11月5日全国公開 (c)2016安倍夜郎・小学館/「続・深夜食堂」製作委員会

 初めてドラマ化されて、はや7年。役に影響されてプライベートで料理にハマったりは?

「あんまりなかったなぁ。テレビ見てるとタモリさんとかは料理が好きで本格的に作ったりしてるけど、僕は全然! 何をどうしていいのかさっぱりわからない(笑)。豚汁は1度教わったまま作ったりしたけど、そのくらいかな。あとは枝豆ゆでて塩をふったり、豆腐を切ってかつお節をかけたり。それを料理と言えるかは……(笑)」

 めしやには、それぞれ“あの味”を求めた客が集まってくる。自身が思い出す“あの味”とは―。

「僕は京都出身なので“おばんざい”の味がいわゆる故郷の味というか、おふくろの味ですね。身欠きにしんとナスを炊いたのとか、青菜とお揚げの炊いたんとか。“三つ子の魂百まで”とは言えないけど、僕にとってはすごく懐かしい味なんです」

 故郷ではそういった料理をつまみながら酒を飲むのが定番だそう。

 俳優の田中哲司さんとは飲み友達と聞きましたが。

「前はテツとよく飲んでたけど、彼は今芝居をやってますからしばらく会えなくて。最近は(荒川)良々さんとか光石(研)さんとか。昔は大森南朋とも飲んだりしたけど、お互い結婚してから誘いづらいというか(笑)。でも、こうやって仲間たちと飲む時間っていうのは、今も昔も変わらず、いい時間だなってしみじみ思います」