世間をにぎわせた“ゴーストライター騒動”、その主役のひとりとして一躍有名になった音楽家の新垣隆。彼にとってソロ名義では初めてとなるアルバムが発売される。騒動から2年半たった今、佐村河内氏、今後の活動について、自身の恋愛、そして不倫について……ゴーストではなく、本人の口で語った——。

音楽家・新垣隆 撮影/和田咲子

「あの騒動があった後、もう自分の音楽家としての活動は“終わった……”と思ったんです。でも周りの多くの方々の応援で、また音楽家としての活動ができるようになりました。支えてくれたみなさんの気持ちに、音楽で応えることができたと思っています」

 11月16日に、メジャーレーベルからは初めてとなるソロ名義のアルバムが発売される音楽家の新垣隆。アルバムは、クラシックの名門レーベルから、日本だけでなく世界に配信されるという。

私も含め日本のクラシックファンは、『デッカ』というレーベルでクラシックを知ったという人が多いんです。たくさんの名盤を出してきた非常に老舗で名門です。そんなところから私の作品が出てしまう……。もう“ほんまデッカ?”っていう……。スミマセン(苦笑)。いや、本当にすごいレーベルなんです」

 アルバムには、新垣がゴーストライターとして佐村河内守氏に提供し、10万枚のヒットとなった曲『HIROSHIMA』を基に作られた『連祷』も収録されている。

「『HIROSHIMA』は、騒動によって、多くの方に聴いていただきました。しかし、改めて自分の名義で、自分の意思によって“広島”を音楽で描きたいと思いました。どういう形で作品にしたらよいか長い間考えていたのですが、広島県の市民オーケストラの方から記念演奏会のお話をいただいて、それをきっかけに改めて曲が生まれました」

 18年に及んだという佐村河内氏のゴーストライター生活。'14年に新垣は音楽人生が終わる覚悟でそれを公表した。所属していた音楽大学には辞意を伝えていたが、学生たちの署名により白紙となった(後に正式に退職)。“もし、いま改めてきちんとした形で佐村河内氏からオファーがあったら?”というちょっと意地悪な質問をすると、

「そうですね……。もしあったら……。考えておきますと(苦笑)。前向きというよりは、多少後ろ向き……ちょっと後ろ向きですかね。騒動を起こした私たちは、ちゃんと謝って、きちんとした形で2人が再出発するべきだとずっと思っています」

 そんな佐村河内氏は、謝るどころか現在、新垣から提供された曲の著作権を主張し、音楽に関する著作権管理団体である『JASRAC』を相手取り、提訴している。

「自分は佐村河内さんからの依頼を引き受けて、彼から報酬をもらい、曲を渡しました。あのとき書いた曲は彼のものですので、もう自由に使ってください、と思っています。それは公表したときから変わっていません。いま現在のやりとりは、僕としては知ったこっちゃないというか……(苦笑)」

頼まれたらセーラー服も着ちゃう

 ゴーストライターを告白して以来、新垣のもとには各メディアからオファーが殺到。バラエティー番組やCMにも数多く出演し一躍、時の人になった。本業である音楽の腕を披露することもあったが、基本的には“イジられ役”になることが多かった。

当時はオファーに関しては基本的に来るもの拒まずでした。自分にできることであればやる。できないことはやりませんと。セーラー服も着ちゃいましたね……(苦笑)。勇気を持って! 今後も、もちろんそういう仕事のお話をいただけたら、自分のできる範囲で協力したいと思っています。必要とされるのであれば、それにお応えしたいと思っています。

 でも、お断りしたお話もあるんですよ。雑誌の企画で『誌上お見合い』みたいなものがあったのですが、そのときには“相手は自分で選びます!”とか言ってお断りした気がします」

騒動後のブレイク時には映画の宣伝でなんとセーラー服姿に(映画『ソロモンの偽証』PR動画より)

 確かに、バラエティー番組に引っ張りだこだった'15年の目標は「結婚」と話していた。時は過ぎ、'16年も終わりに差しかかっている。現在46歳。晩婚の多い昨今では、遅すぎるという年齢でもない。

結果的に結婚という目標は果たせずに終わってしまいました……。そのとき宣言したのですが、約束は守られず。嘘つきましたね。“婚活”ということからだんだんとフェードアウトしてしまっています。

 今はよくも悪くも、音楽のお仕事を非常にたくさんいただいているんです。自分の暗い部屋で、暗い顔をして譜面を書くという日々です。曲を作って発表し、演奏してみなさんに聴いてもらうことで満足しちゃっています。もう少し余裕ができたら結婚したいなってまた思うかもしれないですけど。今は仕事が恋人、仕事が奥さんということで(笑)

 取材中、仕事でもプライベートでも、どのような質問にも真摯に答えてくれた新垣。しかし、その声量は非常に小さい。ボリュームの小ささは仕事で指摘されることも多いらしく……。

「今、クラシックを紹介するラジオ番組をやらせていただいているんです。ラジオなので車で聴く方が多いそうなんですが、“聴こえないのでボリュームを上げざるをえない”というクレームをいただいたり……。なんとかしようと思って最初は頑張って声を張ろうとするんですが、だんだん小さく…………。もうその繰り返しです……

 そう話す声がすでに小さい。テープレコーダーにきちんと録音されているか不安になるレベルである。

「テレビの収録でもいつも言われます。服にマイクがついているので、音声としては拾ってくれるのですが、実際にスタジオに一緒にいる共演者の方は聴こえないことが多いみたいです……(苦笑)。“新垣だけボソボソしゃべって何を言ってるかわからない”って。これはなんとかします!

 今後の目標です。婚活はどこかへいっちゃいましたが、声を張ることは頑張ります。声が届かないと女性に思いも届かないですし……

ゲス川谷は「うらやましい!」

 芸能界に限らず、昔からバンドマンや音楽家はモテると言われる。女性問題で今年のワイドショーをにぎわせている“ゲス不倫”こと『ゲスの極み乙女。』の川谷絵音について、同じ音楽を仕事にする者としてどのような目で見ているのか?

「ゲスさんには……。それはやっぱり、“お前ちゃんとしろよ”っていうのはあるんですけど。バンドを含めてミュージシャンとしての彼は、ものすごくクオリティーの高い音楽を作りますし、自分がいちばん評価をするのは、日常生活がどうであれ、音楽がいいかどうかなので、ミュージシャンとして非常に素晴らしいと思います」

 川谷のことは彼の作る音楽だけではなく、“男”としても評価しており……。

モテてうらやましいです。うん、うらやましい! でもやっちゃいけないことはやっちゃいけないんだよって感じですかね」

インタビューの最後に“ゲス川谷”について聞くと、彼をうらやんで、この表情に…… 撮影/和田咲子

「やってはいけないこと」。ゲス川谷、ファンキー加藤……今年のキーワードといっても過言ではない「不倫」に警鐘を鳴らす(?)新垣。

「週刊女性をお読みになる方は主婦の方が多いんですかね? う〜ん、同世代ですから、あの……あんまり不倫とかしないように気をつけてください……ってことで……。生意気なこと言ってスミマセン……。(取材当日に発売された「週刊女性」を手に取り)この号にゲスさんのことが書いてあるんですか? 熟読しておきます……」

 不倫ではなく、本業の音楽で、もしくは熱愛や結婚で、またワイドショーをにぎわせてほしい!

<作品情報>
デッカより世界配信! 新垣隆の新作交響曲『連祷‐Litany』はユニバーサル・ミュージックより11月16日発売

<コンサート情報>
CD発売を記念するコンサート『交響曲《連祷》-Litany- 世界リリース記念 新垣隆展 サントリーホールコンサート』を2017年1月23日、港区赤坂のサントリーホールにて開催!