1年2か月にわたり信繁を演じた堺雅人 (C)NHK

「今は1年2か月の長い“旅行”から帰ってきたような気分ですね。これだけ長いと、旅というより失踪ですが(笑)」

 『真田丸』の放送もあと2回を残すのみ。すべての撮影を終えた主演の堺雅人が語る、真田丸“航海”の思い出―。

「水先案内人の三谷幸喜さんについて行き、周りをしっかりしたスタッフに固めていただき、出会う役者さんは本当に一流の人ばかりでした。スタジオに行くのが楽しみでしかたなかったです」

 堺自身、大河ドラマに出演するのは3回目。『新選組!』('04年)では山南敬助役、『篤姫』('08年)では徳川家定を演じた。

「旅にたとえれば、前回・前々回は途中で船を降りたんですけど、今回は最後までご一緒することになって。長い旅でしか見せてもらえない何かが、絶対にあったと思います」

一夫多妻って大変!

「今回登場する女性たちの面白いところは、男にとって都合のいい、いわゆるヒロインがいなかったことでしたね」

 作中、正室の春(松岡茉優)や幼なじみのきり(長澤まさみ)など、さまざまな女性が幸村の周囲を彩っている。

「実際に一夫多妻って、こんなに大変なのかと思いました。九度山でも大変な目に遭いましたし、ハーレムというのがあんなに修羅場だとは(笑)。ぜひ若い方はドラマを見て勉強してほしいです(笑)」

堺雅人 撮影/佐藤靖彦

父・昌幸役は「やってみたい」

 信繁49年の人生の中で、最後にスポットを浴びて輝く大坂の陣。

「入城してからは、僕が物語を引っ張っていかなくては、と思っていました。でも、いざ現場で撮影に入ると自分がどうするというより、自分の中にいる別の人に突き動かされていたんです」

 それはこの1年で、信繁=幸村が関わりを持ってきた人たち。

「父・昌幸(草刈正雄)であり、秀吉(小日向文世)であり、三成(山本耕史)であり、茶々(竹内結子)であり……。目の前の人に外側から引っ張られるか、内側からの声に押し出されるかの違いだなと。結局、幸村は何ひとつ自分で決めることはなかったんだな、という気もしますし、それは演じていてすごく面白いところでした」

 昌幸を演じた草刈は、30年前に『真田太平記』で幸村を演じている。将来、堺も昌幸を演じることを考えている?

「いえいえ、草刈さんは超えられないでしょう(笑)。といいながらも、やってみたい気持ちはあります。役者ですから、やれと言われれば何でもやりたいです。秀吉や家康もいいですね。佐助は……、ちょっと無理かもしれません(笑)」