女性の4人に1人は持っているという子宮筋腫。月経痛や貧血などの原因にもなり、悩んでいる女性も少なくない。タレントの矢部美穂さんも若いときから悩まされてきたひとり。今回、最新の方法で子宮筋腫の手術を受けた彼女が、筋腫のこと、これからの結婚・妊娠について、『西川婦人科内科クリニック』の西川吉伸院長に“告白”──。

矢部美穂さんと西川婦人科内科クリニック・西川吉伸院長

「今は90%以上が腹腔鏡でやる時代です」

西川「ブログで拝見しましたけど、最初は開腹手術でやることになっていたとか」

矢部「開腹でというより、もともとは、8センチくらいあった筋腫をリュープリン注射で小さくしてから、腹腔鏡(ふくくうきょう)でという予定だったんですけど……」

西川「思ったように小さくならなかった?」

矢部「はい。6.5センチくらいまでしか小さくならなくて。この大きさだと腹腔鏡ではできない可能性が高いと、全開腹手術をすすめられました」

西川「筋腫の手術だと、昔は子宮全摘出という時代もあったんです」

矢部「え! そうなんですか?」

西川「今では筋腫自体の核出術がメインになって、90%以上が腹腔鏡でやる時代ですけどね」

矢部「6.5センチだと、腹腔鏡でできない大きさなんですか?」

西川「できる可能性は高いと思いますね」

矢部「そうなんですね。実は、私の妹は7センチくらいの大きさを腹腔鏡でやったんですよ。“全開腹はイヤだ”って先生に泣きついて(笑)」

西川今はほとんどお腹を開けませんけどね。もちろん、筋腫ができている場所や、内膜症を併発して癒着してしまい、子宮が動かせない状態なら開腹でないとできないかもしれないので、診断された先生でないと、その可否はわからないですけど

矢部「開腹だと、術後に長くお休みしないといけなかったり、傷痕が残ったりと、正直怖い気持ちがあったので、いろいろ調べて、日本ではまだメジャーではないけど、最終的にUAEという方法に決めたんです」

「UAEは誰でも受けられるものではない」

 UAEとは子宮動脈塞栓(そくせん)術という術法。カテーテルという細い管を使う治療法で、筋腫への血流を止めることにより、筋腫を壊死させる方法。切開することがないので、傷痕がほとんど残らない。

西川「UAEは誰でも受けられるものではないんですよ。骨盤内に感染症があるか、子宮に悪性腫瘍がある場合。あと、ひと昔前までは妊娠を希望する人も適応しない、とされていましたね」

矢部「あ、そのお話、聞きました」

西川まれに子宮動脈だけではなく、卵巣動脈も詰まってしまい、排卵できなくなってしまう可能性があるんです。あと筋腫だけではなく、正常な子宮への血流も弱くなってしまうと……

矢部「私が手術を受けたのは専門のクリニックでしたけど、その説明は受けました。そういった危険もなくはないけど、低いですと」

西川「大学病院だと“危険性があります”と説明すると思います。ちょっとでも起こりうることは全部言いますから。患者さんに告げる内容は同じものなんですけど、ニュアンスが違うんですね」

矢部「危険がなくはない、ということは“ある”ということですからね(笑)」

西川「手術時間は1時間くらい?」

矢部「手術室には30〜40分いたと思いますけど、手術時間は11分でした。私は血流を塞ぐために、カテーテルにゼラチンを入れたんですけど、保険がききませんでした。化学物質を入れる方法だと保険適用になるんですけど」

西川「では、自費で?」

矢部「はい。手術自体が約50万円で、私の場合はリュープリン注射の影響でちょっと血管が細くなっていたから、細いカテーテルを使ったのでプラス6万円かかりましたけど。病院によってはもうちょっと高いところもあるみたいですね。地域や入院の有無にもよると思いますが」

西川「術後の体調はどうですか?」

矢部「おかげさまで痛みもなくて。ただ、麻酔の影響で吐き気はすごくて、2日間ほど食事がとれませんでした。手術から1か月が過ぎましたが、今は運動もできます」

西川「月経はきました?」

矢部「きました。もともと生理痛がひどかったのですが、以前に比べると楽になった気はします」

「10代のときは、鎮痛薬でごまかして……」

 もともと重い生理痛に悩まされていたという矢部さん。10代のとき、温泉番組の収録に生理が重なってしまい、現場では薬を飲みながら、具合が悪いのをごまかしつつ仕事したこともあったという。

西川「生理痛が重いのは、若いときからですか?」

矢部「10代のときからですね。18のとき、撮影中だったんですけど、生理痛がひどくて。周りの人に何も言えなくて我慢していたら、貧血で倒れちゃったんです。そのとき左眉のあたりを切ってしまって。今もまだ傷痕が残っています

西川「そのときから筋腫や内膜症があったのかもしれないですね」

矢部「10代のときは産婦人科には行かないで、そのまま放置して我慢できなくなったら鎮痛薬を飲んで……」

西川「それはあくまで対症療法ですよね。ピルは飲まなかったの?」

矢部「ピルを飲み始めたのは、3年くらい前です。ピルって副作用が怖いイメージがあって。太るとか、むくむっていうじゃないですか」

西川「20代のときから、あるいは、18くらいからピルを飲んでいたら、筋腫や内膜症の進行はある程度、抑制できたかもしれませんね」

矢部「そうなんですか!?」

西川以前はピルを推奨してはいませんでしたが、今は低用量ピルが生理痛の強い人の痛みの緩和と、子宮内膜症の発症の抑制、あるいは進行の抑制に効果があるとされています

矢部「私は10代のとき、どうしても薬に頼りたくなかったので、あまり調べなかったんです。まだ子どもでしたしね。でも、あのときには低用量ピルはなかったと思います。10代といっても、もう20年前ですけどね(笑)」

「筋腫を取ると妊娠しやすくなる?」

矢部「筋腫があると妊娠しづらいと聞くんですけど、やっぱり妊娠の確率は変わってくるんですか?」

西川筋腫のできている場所によりますね。例えば、子宮の外にできる筋腫。これは不妊とはあまり関係ありません。関係あるのは、子宮の中にできる粘膜下筋腫や筋層内筋腫。

 前者は受精卵が着床する場所に異物ができるもので、後者は筋肉の中から子宮の内膜を圧迫し血流を悪くするもの。妊娠しづらいというより、流産を起こしやすくなります。不妊に関係するのは、筋腫よりも内膜症のほうが関係します

矢部「手術の前に調べてもらったんですけど、私は内膜症も起こしているけど、大したことはないと。そんなに大きくないと言われました」

西川不妊症の人のお腹の中を見たら、半分以上が内膜症がありますよ。美穂さんの場合は内膜症というより、39歳という年齢のことを気にしたほうがいいと思います」

「卵子が老化すると、どんなリスクが?」

矢部「まだ独身ですし(笑)。私の年は妊娠のリミットに近いんですか?」

西川「近いですね……。35歳以上が高齢出産ですから」

矢部「35歳! じゃあ私は……(涙)」

西川「35歳からいろいろなリスクが高まってきます。ひとつは身体のリスク。年をとってくると、筋腫や内膜症ができたり、妊娠しても妊娠高血圧、妊娠糖尿病という合併症も多くなりますし。卵子自体も老化し、数が減ってきますから」

矢部「卵子が老化してくると、どんなリスクが出てくるんですか?」

西川加齢とともに増える、染色体異常ですね。そうなると妊娠しにくいし、しても流産の確率が増えてきます。また染色体異常は、ダウン症の原因にもなりますから

矢部「今、高齢出産が可能、ってニュースでも流れるじゃないですか。だから、45歳とかでも産めるのかな、って。それって危険なんですか?」

西川「危険だと思います。45歳で出産した人たちも、簡単にできたのではないと思いますよ。不妊治療をすごくやったり、あるいは、若い人から卵子をもらって、体外受精している可能性も高いと思います

納得したうえで凍結しておくのなら

矢部「自分の卵子を凍結保存して、妊娠したいときに使うこともできると聞きましたけど……」

西川「たくさんの卵子が必要ですし、若い卵なら別ですが、高齢になった卵子を保存しておいても、妊娠にたどり着く確率は低いですね」

矢部「ちなみに、費用はおいくらなんですか?」

西川「凍結ですよね。うちではやっていませんが、一般的には100万円以上ですね。卵子も30個くらいとっておかなければならないので、2〜3回くらい採卵しないといけません」

矢部「1回とるのに100万円かかるんですか!?」

西川「いえ、全部含んでです。ただ、保存する期間が長ければ、それだけ保存料がかかりますけどね。でも、この方法を日本産婦人科学会では推奨していないんです。確実に妊娠するという可能性が低いから

矢部「そうなんですね。実は今回の手術で検査を受けているとき、病院で先生に怒られたんです。“ちゃんと将来のことを考えているの?”“計画しないと子ども、産めないよ”って。でも、まだ結婚もしていないし、現実問題として子どもを産むことを考えられなくて……」

西川「確かに、実感はわかないでしょうね」

矢部「だけど、もしかしたら後悔するかもしれないとは思っています。例えば45歳になったときに、パートナーがいて、相手が子どもが欲しいとなったときに、もっと自分が若ければ、って」

西川「僕は推奨する立場じゃないけど、卵子凍結というのも、ひとつの選択肢に入れておいてもいいかもしれませんね」

矢部「後悔しないためにですか?」

西川40歳を越えた卵子は妊娠しにくいということを納得したうえで凍結しておくのならいいと思います。45歳の卵子より質がいいのは事実ですし、保存しているという安心感で仕事を続けるモチベーションにはなるかもしれない」

矢部「私、来年の6月で40歳になるんですけど、もしかしたら今が人生の岐路に立っているということですか?(笑)」

西川卵子の老化ということで言ったら、これからの半年間は若いときの何年かに匹敵する時間ですから。若い旦那さんをもらって、子どもが欲しいと言われたときのことを考えたらいいかもしれませんね」

矢部「若い旦那さんはたぶんないかなぁ。年下を好きになったことないんですよ。そうなるとよけい厳しいということですか!? どんどん厳しい状況に自分でしちゃっていますね(笑)。

 まあ“絶対”はないから、もしかしたら若い人を好きになるかもしれませんし。今までは何も考えずに生きてきてしまったので、今日は勉強になりました! 」

<プロフィール>
やべ・みほ/'92年『第4代目MOMOKOグランプリ』でグランプリを獲得し、デビュー。以降バラエティー番組やグラビアなどを中心に活動。『アウト×デラックス』(フジテレビ)にレギュラーとして出演中。温泉ソムリエ

にしかわ・よしのぶ/西川婦人科内科クリニック院長。医学博士。医療法人西恵会理事、日本産科婦人科学会専門医、日本産婦人科内視鏡学会評議員、大阪産婦人科医会評議員ほか