家計簿づけも三日坊主で終わっちゃうような、ズボラで怠け者の私には、どうせ節約なんてムリ……」──そんなふうにあきらめているアナタ、落ち込むことはありません。ファイナンシャルプランナーの風呂内亜矢さんは「ズボラな人ほど、お金は貯まります!」と言い切ります。

「確かに、几帳面な人はお金を貯めやすい可能性はあります。でも、目的はお金を貯めることで、“家計簿を間違いなくつけること”ではありませんよね」

 お金を貯めるための手段だったはずの家計簿記入が、目的に変わってしまい、頑張りすぎて結局、家計の見直しという大事な部分を忘れてしまうことがあるそう。巷では几帳面にコツコツとやる節約法がいろいろ流行っているけれど、それらが続かないからといって“節約できない”というわけではない、ということ。

 ズボラな人はズボラな人なりの、自分に合った節約をしましょう、と風呂内さん。

「例えば、先取り貯金はおすすめです。その際、最初から高額を設定すると、途中で挫折する可能性が。それよりは最初は少額に設定して1年、2年……と長く続けましょう。振り返ったときに50万、100万と、まとまった貯金ができていると“自分は貯められる”と自信がつきます」

 どんな節約法も長く続けなければ、お金は貯まりません。過度な我慢や節制を強いられるストイックな節約法は、長続きしないもの。ときには自分を甘やかしたり手抜きをしながらでも、自分に合ったやり方で、少しずつ長く貯め続けることでお金は貯まっていくのです。ズボラな人だからこその簡単な節約法を、おおらかにのんびりと、長く続けてみましょう。

 では、わかりやすくするために、ちょっと極端ですが「几帳面なのに貯まらない女」と「ズボラだけど貯まる女」とでは1日の出費や節約の仕方がどう違うのか、風呂内さんに解説してもらいました。

<設定>
●貯まらない女
40歳、夫と小学生の子ども2人の4人家族。パートで働いている。性格は「完璧主義で頑張りやだけど、人に影響されやすい。少し見栄っ張り」

●貯まる女
​40歳、夫と小学生の子ども2人の4人家族。パートで働いている。性格は「ズボラでおおらか、おおざっぱ。だけど大切なところは押さえて、人に流されない」

《朝》「お弁当作り」「習慣の飲み物」

●私は「貯まらない女」

「ギャー、もうこんな時間!」。昨夜も家計簿づけが難航して夜更かしし、万年、睡眠不足状態……。慌ててお弁当を作るが、料理ベタなくせに意外と完璧主義のB子。冷凍食品は一切使わず、すべてのおかずをイチから手作り。要領が悪くて時間はかかるし、使い切れなかった食材を捨てることもたびたび。「外食するほうが安くつくかも……」(※1)と、ふと思うことも。

 お弁当作りで遅刻しそうになり、ダッシュでパートへ。職場についたら、もうヘトヘト。「はぁ~、疲れた~」と、休憩中に無意識のうちにカフェでいつもの甘いラテを買っている(※3)。1杯400円×20日×12か月=9万6000円。このラテ代に、年間約10万円も出費していることに、B子は気づいていない……。

●私は「貯まる女」

「あー、ぐっすりよく寝た~」とすがすがしい目覚めのA子。「さ、お弁当作ろ!」とキッチンに立つが、じつは料理は苦手。「豪華なお弁当なんか私にはムリムリ~(笑)」と割り切って、夕食の残り物や冷凍食品を電子レンジで温めて、節約弁当完成!(※2) 家族とゆっくり朝食をとったら身支度をすませて、いざパートへ!

 職場ではデスクワークをしているA子。始業前にコーヒーを飲むのが、毎朝の習慣。ドリップ式コーヒーをデスクの引き出しに常備している(※4)。1杯30円×20日×1年=7200円。安いコーヒーだけど、お湯を注ぐと「う~ん、いい香り!」。ときどき同僚にいれてあげても高い出費ではないし、コミュニケーションツールとして役立っている。「さぁ、今日もお仕事、頑張ろう!」

《解説》
※1・2
料理が苦手な人や忙しくて時間がない人が、毎日、完璧にお料理しようとすると、無駄な出費や労力がかさむことにも。苦手なことは「手抜きでもOK」と割り切って、自分の得意分野で節約するほうが、ストレスもなく、長く節約を続けられる

※3・4
本当はそんなに欲しいわけでもないのにクセで買っているもの、誰にでもあるのでは? カフェや自販機のドリンク、たかが数百円とあなどるなかれ。「チリも積もれば山となる」で、1年だとバカにならない金額に。小さなところから見直すのが、節約の第一歩。

《昼》「情報交換」「100円ショップ」「子どもの習い事」

●私は「貯まらない女」

 午前中の仕事が終わって、ようやく昼休み。同僚たちは激安店や節約方法などお得情報の話で盛り上がっているが、話を聞くだけのB子。心の中では「お得情報を他人に教えるなんてもったいない! オイシイ話は、ひとり占めよ!」。「B子さんってお得情報に興味ないのね」と、話題を変える同僚たち。せっかくのお得情報がB子から遠のいていく……。(※5)

 仕事が終わって、帰り道。特に買いたいものもないのに、100円ショップを素通りできないB子。「これが100円!? 買わなきゃソンよね!」(※7)と、どんどんカゴに入れ、結局、2000円分も買ってしまった。じつは家には、買ったはいいが開封もせず使われていない100円グッズが山のようにあるのであった……。

 帰宅後、子どもが学校から帰ってくるやいなや「今日はピアノのレッスンのあと、学習塾よ!」「えー、疲れたー、行くのやだー」と、ごねる子どもを叱ってなんとか出発させる。5つの習い事をさせていて、月謝代は合計約4万円! 「出費は痛いけど、お友達もみんなやっているし、うちもやらなきゃ!」(※9)

●私は「貯まる女」

 昼休みは持参したお弁当を食べながら、同僚とおしゃべり。「新しいスーパー、新鮮で安いよね」「隣町のドラッグストア、ポイントカードがお得なんだよ」……と、積極的にお得情報をみんなに教えるA子。「知らなかった、ありがとう!」と感謝され、「あっちのスーパーも安いのよ」と教えてもらい、今日もお得情報をいっぱいゲット(※6)したのであった。

 パート勤務が終わって家に帰る途中で、100円ショップの前を通過。「今日は買わなきゃいけないものはないし、早く帰ろ!」と、スーッと素通り(※8)。ついついお菓子を買いたくなるコンビニにも立ち寄らず、家路を急ぐ。

 家に帰って家事をすませていたところに、子どもが学校から帰宅。おやつを食べて宿題をしたら「遊んでくる!」と友達の家へ。習い事は、週末に子どもの希望で始めたサッカーと英語だけ。わが家なりの教育方針を決めて、習い事は本当にやらせたいものだけに絞っている(※10)

《解説》
※5・6
お得情報を自分から発信すると、それを聞いた人は「この人はお得情報が好きなんだ。じゃあ、こちらからもお返しに」と、お得情報を教えてくれるようになるもの。こうしてお得情報が集まってくるようになる。情報をひとり占めしている人には、お得情報は寄ってこない。

※7・8
いくら安くても、自分が必要としないものは買わない。これが、貯まる鉄則。「安いから」という理由だけでどんどん買っていると、本当に必要なもの、欲しいものを買いたいときに、「お金がない!」ということにも。

※9・10
子どもの習い事は、「わが家の価値基準」をよく考えてから決めるべき。「よそのうちもやっているから」と、あれもこれも手を出すのは、考えもの。他人と比較するのではなく、子どもの好きなものや性格、自分たちの教育方針などをよく考えてから。

《夜》「女友達と食事会」「ネットショッピング」「家計簿」

●私は「貯まらない女」

 今夜は、子どもを夫に預けて、女友達と食事会。「たまにはパーッとストレス発散しなくちゃ!」と、おしゃれなレストランで高価な料理を食べながら、積もる話をしゃべりまくる。お会計では1人あたり、家族1週間分の食費とほぼ同額をお支払い(※11)。ストレスが軽くなるのと同時に財布も軽くなり、反面、体重は重くなったのであった……。

ちょっと高かったけど、ま、いっか!」とお酒の酔いで気が大きくなっているB子。帰宅後、ひと休みしながらいつものネットショッピング。「あ、これかわいい。買い!」「これもいい。買い!」と、目についたものの購入ボタンを勢いでどんどん押していく……(※13)

 そして深夜。午前1時を過ぎて、眠い目をこすりながらも根性で家計簿をつけるB子。「毎日、完璧に家計簿をつけてる私って、節約家よね! なのに、なぜかお金が貯まらない……。ヘンだな~」(※15)。疑問を抱きつつ、ベッドに入るB子。明日もきっと寝不足……。

●私は「貯まる女」

 夕食の支度をしていたら、女友達からLINE。「聞いてー! ダンナったらね……」と、そうとうストレスがたまっているらしい。「じゃあ、今度の日曜にランチしようよ」。夜は高いけど、ランチは安くておいしいと評判のレストランに、即、予約(※12)

 夕食がすんで、子どもも寝たら、夜のリラックスタイム。ネットショッピングをするのがお気に入り。とはいえ、A子はもっぱら「エア買い」。かわいいな~、欲しいな~、と思うものがあっても、すぐには購入ボタンを押さない。ひとまず「お気に入り」に入れて、数日後に見直すようにしている(※14)。時間をおくと客観的&冷静に判断でき、同じようなものを持っていることを思い出すことも多い。

 1日の終わり、家計簿はつけないA子。「私ってズボラだから、長続きしないのよね~」。自分に合わないこと、ストレスになることは無理にやらない主義。そのかわり、通帳はマメに記帳するようにしている(※16)。「今月はちょっと出費が多いな~。月末までは引き締めなくっちゃ」と軽く反省して、明日に備えて早めに就寝。「おやすみなさ~い」

《解説》
※11・12
夜は高価なレストランでも、ランチはお手ごろ価格のことが多い。比較的、安価な値段でおいしい料理とおしゃれな雰囲気を味わえて、お得。ランチタイムを活用するのはおすすめ。

※13・14
ネットショッピングでの衝動買いは危険! 「お気に入り」に入れて、最低ひと晩以上は置き、熟考してから買うほうが、失敗しない。「お気に入り」に入れて買ったつもりになっただけで満足する場合もある

※15・16
家計簿は、コツコツと完璧につければお金が貯まる、というわけではない。お金の流れや出費傾向を分析し、反省し、改善策を立てて実行することが大事。家計簿をつけただけで放っておいては、節約にはつながらない。その意味では、通帳を見るだけでも、家計の見直しや節約はできる。

貯金額の目標は「年間50万円×勤続年数」

 負担の大きい、ストイックな節約法は自分には合わない、と思えば、自分に合ったユルいやり方で、自分なりに貯めていけばいい──。同様に、お金の使い方も自分なりに、が大切です、と風呂内さん。

「同じぐらいの年収の家を見て、“あそこは子どもにこんな習い事をさせているから”“私立中学に行かせているから”“家を買っているから”“車を持っているから”だから、うちも!……というように、他人のライフスタイルに影響を受けるのは危険です。特にこの傾向は、収入が平均より高めの家庭に多く見られ、身の丈に合ったレベルの想定が上ブレしがちです。収入は高いのに出費も多く、将来の家計が心配なケースも多々あります

 例えば、東京に住んでいると、世帯年収2千万円だとしても、子どもが2人いて、ある程度、習い事もさせて、持ち家で車も持って……となると、貯金が難しくなるそう。大事なのは「身の丈に合った暮らし」の見極め。自分なりの判断基準を持って、生活スタイルを作ること。

『身の丈に合った暮らし』のひとつの目安としては、平均的な年収の人では、年間50万円×勤続年数の額の貯金があると、一応、安心です。住宅を買ったり大きな出費があって一時的に貯金が減ったとしても、だいたいこれぐらいの貯金があるといいでしょう。逆に、収入はけっこうあるのに貯金がまったく増えていかない人は、お金の使い方を見直してみては? 生活が派手だったり、どこかで無理な出費をしているのかもしれません」

 自分が本当に欲しいものは、我慢せずに買う。だけど、自分にとって必要ではないものは買わない──。見栄や他人との比較を1度、捨てて、そんなシンプルな原点に立ち返ってみませんか?