小日向文世 撮影/佐藤靖彦

「脇役でも主演でも、変わらず同じスタンスで芝居には挑むんです。だから今回もすごくありがたいなぁと思ってお受けしましたけど、いちばん最初に僕の名前で、興行収入的に大丈夫!? って心配にもなっちゃいましたね(笑)」

 主演映画『サバイバルファミリー』が11日より全国公開される小日向文世が、亭主関白なくせに何もできない鈴木家のダメ親父に。

「仕事一筋なのはわかるけど、もうちょっと家族間の空気を読めよ〜って演じながら思いましたね」と話す彼に、実際は家でどんな父親なのか聞いてみると、

「僕自身も決してパーフェクトな親父ではないです。ダメだなって思うところは少し似てる(笑)。でも、子どもに乱暴な口のきき方はしないし、ざっくばらんに何でも話すかな。自分からはしゃべってくれないけど、こっちから聞けば彼女の話もしてくれるんですよ」

 息子たちとはほかにも学校や部活の話、しんどそうに見えれば、“最近どうなの?”と声をかけることも。

「でも、うちの中でリーダーシップをとるのは女房かな?(笑)」

 と、笑わせる。

「家の中では本当に何もしないんですよ。世の主婦の方たちが“まったくこの人は”ってアキレちゃうような典型的な親父だと思う。前は本や新聞をまとめることくらいはやってたけど、最近やってなくて……ダメですよね(笑)。

 女房も僕をあんまりアテにしてないんじゃないかな? 僕は本当に芝居しかできないから、仕事を嬉々(きき)としてやっているところを“大きい子ども”くらいの感じで見守ってくれているんだと思いますよ」

 そう話す表情は、とても柔らかく、家族のことを愛(いと)おしそうに話す姿に、ついこちらも気持ちが和らぐ。家族で出演作品を見たりは?

「この映画のことは、みんな“おもしろそう”って言ってくれていました。テレビドラマは、見るものと見ないものがあるかなぁ。まったく興味を示さないときもあるんですよ! それに対して僕が意地になって“見て見て”って言うのも悔しいですから黙ってます(笑)」

監督に「絶対無理です!」と言ったシーン

 映画には自転車で東京から西を目指し、食べるものがなくなればネコ缶や虫を食べ、時には豚を追いかけ、イカダを作って川を渡り……そんなショッキングなシーンが満載。サバイバル生活で生き残る自信、小日向さんにはありますか?

「僕、虫は食べない! それは台本をいただいたときから監督に“絶対無理です!”って言ってたんです。でも、役者は結局、撮影になるとやっちゃうんですよね。そのシーンの撮影直前までスマホでアゲハの幼虫をずっと見てました、少しでも慣れるために(笑)。あと、都会だと特にトイレが使えないのはすごく困ると思う。うちは簡易トイレの買い置きがあるくらいですよ」

 草むらで用を足すシーンの撮影では肌色のパンツをはいて挑んだとか! 苦手な虫と対峙(たいじ)する役者魂も見どころ!

「水とか食料も生きていくうえでもちろん大切だけど、やっぱり圧倒的に家族の存在は大きいですよね。この作品には“家族の再生”というメッセージも込められているんです。自分だったらどうするだろう? って置き換えるのもいいですし、過酷なサバイバルを経て、家族の絆(きずな)が深まる様子を楽しんでもらえたらうれしいですね」

 小日向文世、ただ今63歳。

「還暦を迎えてあっという間に3年がたっちゃいました。今年は健康についてもうちょっと考えたいですね、食事は野菜中心が好きかな、あんまり運動をしないから炭水化物は控えめにしたり。昨年『真田丸』で秀吉を演じていたころは肉ばっかり食べたくなっちゃってたけど、僕ちょっと血圧が高いからね(笑)。

 仕事に関しては、オファーをいただいたものはできるだけやっていきたいです。前向きに頑張るためにも、健康維持!」

〈作品情報〉
『サバイバルファミリー』2月11日(土・祝)全国ロードショー

ある日いきなり電気が消滅!! 妻(深津絵里)と子ども2人(泉澤祐希・葵わかな)と力を合わせて、鈴木家はサバイバル生活を乗り切れるのか――

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