あなたの浪費グゼ、大丈夫ですか?

「ファイナンシャルプランナー(FP)って、いつも余計な知識ばかり発信するね」。そうなんです。今のあなたにとって余計な一言をお伝えするのが、おせっかいなFPという仕事です。嫌われたくて言っているのではありません。おカネを貯めたい人にとってはよいことだと思っているのです。

 あなたの家計にはどんな無駄があると思いますか? 無駄なんかないという人も、無駄だらけだと気が付いている人も、自分のおカネの使い方を折に触れて見直してみるのは悪いことではありません。さてそこで今回は、FPが話を聞いて思わずため息が出る「無駄かもしれない大きな支出」を考えてみたいと思います。もちろん、価値観はひとそれぞれなので、ここでは貯蓄をしたい人を前提としています。

「自分にご褒美」など言い訳に過ぎない

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

1.帰省費用

 まず初めは実家に帰る帰省費用です。これは分解していくと移動費・宿泊費・お土産代になります。盆・暮・正月・ゴールデンウイークと、家族総出で実家、あるいは、妻の実家に帰る。家族の交流を図り、絆を深めるという点ではすばらしいことなのですが、いかんせん時期が良くありません。

 交通費の最も高い時期に移動して、宿泊費の最も高い時期に泊まる。お土産代は不変だとしても、長い行列に並ぶ時間は無駄ともいえます。

2.旅行代

 自分へのご褒美が必要! 気軽な独り身のうちに旅行をしたい! 子どもができる前に旅行しちゃおう! 子どもが小さいうちに思い出をつくりたい! 子どもを残しておいても平気になったので夫婦水入らずで! 定年したので思い切り飛び回ろう! 人生の楽しみ! ――などなど、旅行をするには、人生にわたっていろいろな理由があるものです。しかし、これらの理由はおカネを無駄に使う言い訳に他なりません。

 旅行費用の話になると、これらの理由が出てきます。宿泊代だけを計算しがちですが、実際は交通費と食事代、お土産代などがかかっており、まとまった支出となることもしばしばです。しかも、行き先が海外となると、その額もバカになりません。

3.住宅ローン

 もはや疑う余地のない家計における最大の支出です。人生における最大の買い物と評される住宅購入ですが、高額なだけに毎月の住宅ローン支払いも高くなり、年間の負担はほかの支出を1ケタ上回ります。金利が低いため住宅を買いやすくなっているものの、無計画な住宅購入はのちのち地獄を見ることになりかねません。プライドが高く見えっ張りな人は、住宅予算が適正価格以上になりがちです。住宅ローンの借入金額が年収の6倍を超えたら高いと思ったほうがいいでしょう。

4.自動車ローン

 負担は重いのに意外と気にされないのが自動車ローンです。借りる金額自体は住宅と比べて1ケタ少ないものの、返済期間が短いため毎月の支払いが高額になりがちです。自動車ローンは、住宅ローンと比べて金利も高いのですが、自己資金の少ない子育て世代には分割払いが魅力的。さらに最近は5年後に買取り前提での支払いとなるため、通常の自動車ローンよりも毎月の負担が少なくなります。

 おカネが貯まらないのに自動車を買って、しかも金利が付いてくる。将来的に住宅購入を視野に入れている人は、特に注意しましょう。自動車ローンの支払いがあると、住宅ローンが満額借りられないことがあります。

5.自動車維持・管理

 税金、車検、修理、保険、ガソリン代、高速代と数えだすとたくさん出てくる自動車関連支出。クルマを持たない人にはわからない、保有コストが家計を知らぬ間に圧迫します。当たり前の支出に慣れるとおカネが貯まらないどころか、おカネがどんどん出ていきます。本当にクルマが必要なのか、レンタカーやタクシー、公共交通機関で代用できないかよく考えましょう。ファミリー世代では、自動車ローンとダブルで重い負担となるケースが多いです。

支出を抑えるコツは?

 上記に挙げたような一生に1回、あるいは、年に1回程度の支出だと、金額の大きさが毎月のやりくりと別枠になりがちです。この「別枠」が身の丈以上に膨らんでしまうようでは、毎月どんなに頑張ってやりくりしても、貯まるものも貯まりません。

 支出をコントロールする方法は3つしかありません。

(1)断念する

 わかりやすいですね。あきらめるのです。帰省しない。旅行に行かない。自動車を買わない。それだけです。非常に簡単です。辞めるかどうかを決めるだけなので、決断コストも発生しません。今行かなくてもいいのです。いつか行けます。今買わなくてもいいのです、そのうち買えます。そのうち行きたくなくなります。そのうち買いたくなくなります。おカネ貯めたいんですよね?

(2)単価か頻度を下げる

 取り組みやすい方法です。家を買うなら新築じゃなくて中古にする。年に2回の帰省を年に1回にする。海外旅行を国内旅行にする。新車を中古車にする。普通乗用車を軽自動車にする。グレードや回数を下げることで、行為自体は維持する方法です。中古車なら買わない。グレードを下げるくらいなら買わないのであれば、そもそも購入による機能は必要がないのです。あったらいいなは、なくてもいいのです。

 移動コストの高いお盆や正月、ゴールデンウイークの時期にしか休めない人は、親に田舎から出てきてもらって観光案内をして差し上げてはいかがでしょうか。毎年の帰省を隔年の帰省に変えるだけでも、帰省費は半減します。そして、田舎のご家族もたまには子どもや孫の生活に触れる。相互の理解がより深まるのでは。

 休みがずらせる人は、帰省ラッシュの時期をずらしましょう。みんなと同じ休みでないと不安な方もいらっしゃるかもしれませんが、みんなと違っていいのです。断念するより簡単です。

大きなお世話かもしれないが…

(3)代替効用を探す

 なぜ帰省したいのですか? 親に来てもらえないのですか? 子どもだけで行けないのですか? 旅行の醍醐味はなんでしょう? 私は旅行雑誌で行った気分になれるのですが……。ウェブでかわりに体験してくれている人もたくさんいます。ストレス発散ならほかの方法を見つけることができるかもしれません。ストレス発散のたびにおカネを使っていたら、いつまでたっても貯蓄できませんよ。

 いかがでしょうか。大きなお世話でしたね。厳しいかもしれませんが、おカネを貯めることが今のあなたの人生におけるプライオリティであるのなら、言い訳はしないこと。必要な支出かどうか、定期的に検証することが大切です。いつも行っているから、ほかの人もやっているから、というのは理由としては低レベルです。あなたの人生は、あなただけの視点で考えてはいかがですか。


<著者プロフィール>高橋成壽(たかはし・なるひさ)◎ファイナンシャルプランナー。寿FPコンサルティング株式会社代表取締役。慶應義塾大学総合政策学部を卒業後、金融系のキャリアを経てFPとして独立。お金を増やす、お金を守るという視点でFPサービスを提供。30代40代の財産形成、50代60代の資産運用、70代以降の相続対策まで幅広い世代に頼られている。「ライフプランの窓口」を企画運営。近著に「ダンナの遺産を子どもに相続させないで」(廣済堂出版)がある。日本FP協会認定CFP。