事件を受けて中国やメキシコなどがブラジル産食肉の輸入を停止

 焼き鳥やから揚げ、照り焼きチキンなど“鶏肉”を使った料理は数知れず。日々の食卓に並ぶ食材なだけに、安全面は確保してほしいところ。しかし突如、地球の裏側から耳を疑うような“事件”が。

ブラジルの食肉加工業の21の施設で政府の検査官に賄賂を支払い検査を免れ、衛生基準を満たさない食肉や加工品が販売されていたことが判明しました。これらのうち3施設は操業停止、18施設は出荷停止の措置がとられたのです」(全国紙社会部記者)

 加工業者は、賞味期限が切れて劣化した肉に発がん性のある化学物質を使用するなどして、新しい肉に見せかけていたという。

 このうちの2施設からはそれぞれ'15年に8900トン、'16年に8700トンの鶏肉が日本に輸出されていた。

 ブラジルからの輸入に対する日本の今後の対応を厚生労働省の担当者に聞くと、

「捜査対象となった21施設で製造された鶏肉は3月21日以降、輸入を認めないことにしました。また、21施設以外のブラジル国内の施設で製造された畜産食品については輸入時の検査を強化し、検疫所の食品衛生監視員が異常がないかの検査を実施します」

 日本における鶏肉の約3割は海外からの輸入に頼っており、そのうちブラジルからの輸入量は約8割にのぼる。日本人は、日常的にブラジル産の鶏肉を口に入れていたのだが、それはなぜか。

ブラジル産の鶏肉は、EUの基準に合わせて飼育しているという意味で安心できるのです。中国は抗生物質を大量に使って鶏を大きくするのですが、EUは抗生物質の使用に厳しい。“ブラジルの食肉は抗生物質の投与が少ない”ということで日本は輸入が多かったのです

 そう話すのは食品ジャーナリストの椎名玲さん。抗生物質が少ないという意味では良質な鶏肉だといえる。しかし今回のような不祥事が起こると、不安になるのが食材の原産地がわからない外食産業。普段から気軽に利用する外食チェーン店では、今回問題のあったブラジルの工場からの仕入れはあったのだろうか。

 そこで、ファミリーレストラン、ファストフード店、コンビニエンスストアなどを経営する計16社に取材したところ「問題となったブラジル工場とは取引していない」という回答ばかりだった。「食品の安全性を確保するための対策」についても、各社は衛生管理の監査などを行って万全を期しているという。

 ひとまず安心するところだが、過去には中国で床に落ちたものや、古くなった鶏肉、“段ボール肉まん”などを製品として輸出していたという事件も起こっている。

 このような「食品偽装」を見破ることは難しいと話すのは、『これを食べてはいけない』(三笠書房)などの著書がある食品ジャーナリストの郡司和夫さん。

偽装されている食品を見極めることは非常に難しいです。偽装の手口でいちばん多いのは、世界的に禁止されている古い肉や病死肉を新しい肉に混ぜたり、新鮮に見せかけるために添加物で着色させる方法です

 なぜ世界規模で「食品偽装」が横行してしまうのか。

「賞味期限切れの肉を売却できれば儲けられますし、何十年も前の肉でも“冷凍保存しているから大丈夫”という感覚で使われることがあるのです」(郡司さん)

 なんとも腹立たしい話だ。“食のモラル”が破綻している業者もいる中で、われわれはどんなことに気をつければいいのか。日本国内については、

「食肉の安全性を担保するには、輸入している会社や各飲食店などがしっかり調査することが大切です。現地の情報を得るためにマメに生産地に足を運んだり、駐在員のしっかりとした監視が必要になるかと思います」(郡司さん)

“から揚げ”のような鶏肉料理は日常的に食卓に並ぶ

 一般の消費者が、飲食店や食品を扱う店を訪れた場合について前出の椎名さんは、

「生産地が明記されているものや、高くても国内産の鶏肉を使っている飲食店を選ぶことが大切です。日本人の感覚が“安くて美味しいことが当たり前”になっているように感じられます。結果的に抗生物質を投与しているような安い食肉を選んでしまう傾向がありますが、身体のことを考えて安心できる食材を購入してほしいです」

 郡司さんも生産地が把握できるものを推したうえで、

結局、最後は消費者の判断にゆだねられるので、生産地がわかる食材、安心できるお店で食事することが大切です。

 長年続いている企業のHPなどを見て、あらゆる情報を公開している会社や飲食店を選んでほしいです。例えば、“どんな飼育方法で育てられた肉なのか”などが細かく記載されているかなどですね

 身体の中に入る食材なだけに「食の安全」を確保するためには“自分の目”を養うことも必要不可欠なのだ。