次郎法師から『おんな城主 直虎』へ──。直虎を演じる柴咲コウに話を聞いた (c)NHK

「こう言ったら誤解されるかもしれませんが、“直虎”になってからが本編が始まる、みたいな感覚が自分の中にありまして。ポスターのビジュアルでも袴(はかま)姿でしたから、ついに来たという気持ちはありますね」(柴咲コウ、以下同)

 NHK大河ドラマ『おんな城主 直虎』の第12話(3月26日放送)で次郎法師(柴咲コウ)は家臣たちを前に

「われは井伊直虎である!」

 と、ついに井伊家の領主として名乗りを上げた。

「女性男性を問わず、装いによって自分の振る舞いが変わるところってあると思うんです。直虎として袴姿でその上に掛け物をしていたりすると、キリッとする気持ちが出てきやすいなと感じています」

 井伊家存続のため幼くして出家し、次郎法師となった彼女。

「次郎法師時代は修行期間中というか、全50話の中でいちばん静かで、物ごとを静観して自分の中で考えたりするシーンが多かったかなという気がします」

直親(三浦春馬)との別れを迎えて

 “直虎”となる大きな転換のポイントが初恋の相手で、かつての許嫁(いいなずけ)・直親(三浦春馬)の死──。彼女が僧の姿を捨てたのは、直親と一緒になるためではなく、彼の移し身となるための悲しい選択だった。

「直親の死に対して、怒りは当然ですが、なんでこんなことになってしまったという憤りが加わって、次郎が奮起していくんですけど、私自身も彼女の心の動きを納得しながら演じていました。

 直親との別れの回はワンシーンごとに、どうしようもできない大切な人をなくす悲しみと、向き合っていたという感じです」

今川に対する謀反を疑われた井伊家。直親(三浦春馬)は申し開きに駿府へ向かうが、待ち伏せしていた今川の手の者たちに囲まれ、めった斬りにされてしまった (c)NHK

 幼少期、父・直盛(杉本哲太)に“いっそ領主になるか?”と問われた直虎。ついに亡き父が座っていた場所に座った気分は?

「“やったー”という感じです(笑)。自分自身、何かをプロデュースしたり客観的に見ていたいという性格なので、あの席はすごくいいですね」

 しかし、座ってみると思っていた景色と全然違うと感じたという。

「人を、どちらかというと下に見るような気分なのかと思っていたのですが、むしろ人の気持ちを酌みながらバランスを保って調整していく人が座る席なんだと。最初は自分の気持ちや怒りを爆発させてしまう直虎さんですが、少しずつ領主としての“格”ができていく姿をお見せできればいいなと思っています」

 気になるのは、幼なじみで井伊家の家老で、今川の目付けでもある政次(高橋一生)とのこれから。

「ずる賢く政次にいろいろなことを言われて“なんでそれを先に言ってくれない”と、ぶつかりあうんですけど、彼はやっぱり直虎さんより上手なんですよ(笑)。でも、彼のおかげで直虎自身も成長させてもらっている部分もありますし。

 18話くらいになりますが、政次が少し変化していくポイントがありまして。そこでは、ふたりで魂をぶつけたお芝居ができた気がします。いま大注目の高橋さんの演技、特に女性ファンは必見ですよ(笑)」

今川家の意向で、直親の忘れ形見・虎松の後見人になると告げた政次(高橋一生)。直親の内通で今川に捕らえられたとうそぶく目は、次郎が知らないものだった (c)NHK

飲み会で眠くなってもこらえる理由

 直虎を取り巻く人間関係も、大きく変わった。

 前半で去っていく人もいれば、新たな出会いも待っている。大河の主演として、そのすべての人とどんな思いで関わっている?

「私、いちばん最後までいたい人なんです。最後の最後に面白いことがあったら、それを逃したくないので。飲み会とかで眠くなってもこらえていたりするんです(笑)。

 新しい人が来ると新しい風を運んできてくれますし、自分の中で緩むとまではいかなくても撮影に慣れてきたときに、新しい方のおかげで緊張感もいただけますし。ですから、最後までいろいろな人に感化されながら、いい感じでやっていきたいですね」

井伊家に出入りする商人・瀬戸方丈(ムロツヨシ)。見覚えのある顔に直虎は驚愕する (c)NHK

 不思議な竜宮小僧に、柴咲は憧れ(!?)があるようで──。

「人助けをする竜宮小僧、私はわりと信じています(笑)。世の中は目に見えるものだけではないと思っているので。私のお仕事も目に見えない感覚的なメッセージを人に届けることができますから。そういう意味では、私も竜宮小僧になりたいですね」

 直虎の衣装については、

「直虎さんには、色合いとして情熱などを表す赤がぴったりだと思っていました。鮮やかという感じではなく、そこに優しさが垣間見える朱というか、ボルドーっぽい色。私もそういうアイデアを出そうかと思っていたのですが、すでに自分が思い描いていたアイテムが衣装合わせのときに用意されていたので、納得して袖を通すことができました」