有村架純 撮影/伊藤和幸

「初めて(朝ドラヒロインの)お話を聞いたときは、本当に私でいいのかな、ということだけでしたけど、やるからには絶対にいい作品にしたい、面白い作品にしたいという思いがどんどんこみ上げてきて、すごく前向きな気持ちで毎日楽しくやっています」

 4月3日から始まる“朝ドラ”『ひよっこ』でヒロイン・谷田部みね子を演じる有村架純。朝ドラには『あまちゃん』で、小泉今日子演じる春子の若き日を演じて以来4年ぶりの出演となる。

「『あまちゃん』のときは限られた日に一気に撮影していたので、毎日現場に行くことはなかったんですが、今回はほぼ毎日現場に入って、リハーサルも毎週やって。作品にずっとつかっていられるのがうれしいです」

 主演作品も多い彼女だが、ヒロインを演じるということの、プレッシャーや不安はある?

「どの作品もクランクインするまでは不安です。いちばん最初の撮影で発する第一声が、ものすごく緊張するんです。そのときの声のトーンなどでキャラクターが決まってしまうので……。撮ってしまったものは変えられないですし(笑)。

 今回は最初から、みね子の感じは出せていたかな、と思います。今はその第一声を信じて、撮影に臨んでいます」

 役作りの第一歩として取り組んだことは、ヒロイン・みね子の“食”を知ることだった。

「農家に育ったみね子なので、お米のおいしさを知りたいと思い、クランクインする2か月くらい前からちょっとずつお米を食べ始めて。普段はなるべく低糖質で控えていたんですけど、あらためてお米のおいしさを感じました。

 お米の力ってすごいんです。気持ちは元気になるし、夜もよく眠れるし。なによりパワーがあふれ出してくるんです(笑)。みね子もこうやっておいしいお米をたくさん食べて生活しているんだな、って感じました」

 みね子はある事件が起こり、東京へと集団就職で向かうことになる。有村自身も兵庫から上京し、故郷から離れて東京で暮らしている。

「故郷から見ていた東京は、キラキラしていて、希望や夢がたくさんある場所だと思っていました。

 私が(女優を目指して)東京に来たときは、誰も知り合いや友達もいなくて不安や緊張感はありましたけど、これから仕事が始まる、どんなことが待っているんだろう、どんな出会いがあるんだろう、ってワクワクする気持ちのほうが大きかったです。この気持ちは、みね子が感じたのと一緒だと思います」

有村架純 撮影/伊藤和幸

 見知らぬ土地で、新しい環境の中、さまざまな人に出会って成長していくみね子。彼女と自分が重なる部分は?

「私は上京するまでは本当に何も考えていなかったし、自分と向き合うことを一切しなかったんです。でも、事務所のマネージャーさんと話していくうちに、自分を知ることは大事なことだと気づき、考え方がポジティブな方向にどんどん変わりました。人との出会いで今の自分があるので、みね子とはすごく重なるところがあります」

 これから半年、“朝の顔”としてみね子の人生を生きる有村。

「これだけ長い間ひとつの役を演じたことがないので、みね子というキャラとしてぶれることなく物語の中にいたいですね。岡田(惠和)さんの脚本は、繊細な気持ちで紡いでいく作品だと思うので、うわべだけでなく、心のお芝居を大事にしていきたいと思っています」

ヒロインの“センパイ”ふたりからのアドバイス

『まれ』の土屋太鳳と、『とと姉ちゃん』の高畑充希は、プライベートでも仲のいい友達。先輩ヒロインふたりから受けたアドバイスは?

「充希が『とと姉ちゃん』をクランクアップしたときに、お疲れさまって連絡したら“本当に疲れた”って(笑)。このとき私は『ひよっこ』のヒロインが決まっていたのですが“(架純も)頑張ってとは言わないけど、無理せず楽しんで。終わったあとに見える景色は楽しいよ”と言われました。10か月を乗り切った彼女が言う言葉だから、すごく説得力があって勇気づけられましたね。

 太鳳ちゃんからも体調管理のことをすごく言われて、“しんどくなったらいつでも架純ちゃんを励ましにNHKに行くからね”とエールをもらいました」

『ひよっこ』ストーリーを先取り!

 1964年、東京オリンピックが目前に迫り、東京は街の開発のスピードを加速していた。しかし、茨城県の北西部にある奥茨城村で生活する谷田部みね子(有村架純)には、今ひとつ実感がわかない。みね子の家は6人家族で農業を営んでいたが、不作の年に作った借金を返すため、父・実(沢村一樹)は東京に出稼ぎに行っている。高校を卒業したら、家の仕事を手伝って祖父・茂(古谷一行)と母・美代子(木村佳乃)に楽をさせてあげたいと思っていたが、実が正月に帰ってこなかったことでみね子の人生は一変してしまう――。

(c)NHK