新社会人デビューの季節。環境がガラリと変わり、これまで「ギリOK」とされてきた行動が思わぬトラブルを招くことも。社会人として「レッドカード!」のNG行為とは。

※写真はイメージです

会社の備品、持ち帰っちゃお。少しなら問題ないでしょ?

会社の備品は原則、会社で使うもの。会社に所有権があります。勝手に持ち帰ったら窃盗罪ですよ!

 と言うのは法律事務所アルシエンの清水弁護士。

 窃盗罪の罰則は、10年以下の懲役または50万円以下の罰金。

「ただし、初犯かつ少量の場合に警察が事件として扱う可能性は非常に低い。注意を繰り返してもやめないとか大量に持って帰るとかでないと、動かないでしょうね。それを理由にクビにされるかどうかも微妙です。とはいえ注意から始まり、次に、戒告、減給、出勤停止、最後は懲戒解雇と段階的に制裁を受けることは十分に考えられます

 スーパーなどの廃棄食品をバイトやパートが持ち帰るのは?

廃棄されたとしても、その食品の所有権はスーパーにあります。勝手に食べたり持ち帰ったりしたら窃盗罪にあたるでしょう」

会社のパソコンでデートの約束。抜き打ち点検でバレたら?

「大きな会社であれば、メール使用に関しても細かな規則があり、私的な利用について規制されているでしょう。それがなければ多少の私的な利用は許されると思いますが、どちらにせよ、職務怠慢が目につけば注意を受けるでしょうね」

 と解説するのは、旬報法律事務所の佐々木亮弁護士。

 会社は社内のサーバを通して使われるものを管理する権利があるため、社用メールでのやりとりは「すべて監視されていると思ったほうがいい」そう。

「しかし、内容にまで踏み込むことは基本的にできません。 “デートの約束なんて不謹慎” と叱られたら、 “私的な利用をしたのは謝りますが、それ以上はプライバシーの侵害” と反撃することはできますね」

「ブス!」「無能!」職場の先輩の陰湿パワハラを訴えたい!

「ほかの人に聞こえないように言ってくるのであれば、要件である公然性が否定されるため、名誉毀損罪や侮辱罪には該当しません。適用されるとしたら、パワーハラスメント。民法上の不法行為を受けたとして、損害賠償請求ができます」

 と、佐々木弁護士。

 でも、それには証拠が必要。無断録音はセーフ?

「問題ありません。防衛のために自分の会話を録音することはむしろ重要。また、自分の耳に届いてくる範囲の周囲の会話を録音することも大丈夫です。

 一方で、第三者の会話を勝手に録音すること、例えば、会議室に盗聴器を仕掛けたりするなどの行為は建造物侵入罪で訴え返される可能性もあるので、むやみにやらないように」

お皿を割ったらバイト代から弁償ってあり?なし?

 佐々木弁護士によれば、

「わざとやったのならアウト。損害賠償請求をされても仕方ない。ですが、過失によるものなら原則、弁償する義務はありません

 この理論の根底にあるのが、報償責任という「雇い主は従業員を使って得るプラスの利益もマイナスの利益も負担すべきだ」とする考え方。

「ただし、過失が大きいと一定程度の責任追及が認められることもあります」

 では、風邪などで休んだ場合、バイト代から “罰金” を差し引かれるのは?

「今年1月、コンビニでバイトの女子高生が風邪で欠勤した際、9350円のペナルティーを取っていたとして大問題になりました。罰金としてバイト代から差し引くのは明らかな違法。取り戻すことができます

転職決定後、「有休を消化したい」と言って却下された

「おかしいです! 有給休暇は労働基準法で認められた労働者の権利。社内で前例があるなしにかかわらず、会社は有給休暇の申請を拒否することはできません

 と、佐々木弁護士は強調する。

「有給休暇は会社員の権利ですから、申請に正当な理由は必要ありません。たとえ買い物や旅行が理由でも、そもそも理由を言わなかったとしても、申請を受けなければならないのです

 ただし、繁忙期などで明確に業務に支障が出る場合は、会社は時季変更権を行使することができる。

 業務の引き継ぎがあるから退職日ギリギリまで出社して、と頼まれた場合は?

「時季変更できる日数が残っていないので、断ってもかまいません。が、角が立つなら、有給休暇の買い取りを交渉することは実務上は、認められています

 それが無理なら、退職日を延ばしてもらう交渉をしてみても。いずれにしても、泣き寝入りはしないが〇。

<プロフィール>
◎法律事務所アルシエン・清水陽平弁護士
インターネットトラブルをはじめ労務問題や債権回収、男女問題など多様な案件に携わる。企業や専門家に向けての講演にも精力的。

◎旬報法律事務所・佐々木亮弁護士
パワハラ、過労死など労働問題の第一人者で日本労働弁護団常任幹事。ブラック企業被害対策弁護団では代表を務める。