『三太郎』と『白戸家』が激突!?

「今回の“替え歌”企画も『三太郎』のCMソングが視聴者に認知されているからこそです。自分たち発信の創作物さえパロディーにしてしまうという次元に上りつめましたね」(広告代理店関係者)

 auの人気CM『三太郎シリーズ』。その新作が4月1日〜7日まで、特設サイトで公開された。

エープリルフール特別企画ということで、浦島太郎に扮する桐谷健太の『海の声』が『グミの声』に、鬼ちゃんこと菅田将暉の『見たこともない景色』は『見たこともないレシピ』に、それぞれ生まれ変わっています。“お笑い色”がいっぱいで2曲とも歌っているのは、一寸法師役の前野朋哉です」(前出・広告代理店関係者)

 ちなみに、昨年末に発表された『CMタレント好感度ランキング』でも、シリーズ出演者が大活躍。俳優部門の1位が桐谷で、2位が松田翔太、3位が濱田岳、4位が菅田に対し、女優部門でも有村架純と菜々緒がワンツーフィニッシュという独占ぶりだった。

 この一大ブームについて、法政大学社会学部の稲増龍夫教授は、こんな分析を。

「さまざまな登場人物が出てくるのですが“桃太郎”“金太郎”“浦島太郎”の3人はぶれないですよね。その3つの軸を守りながら、みんなが知っている昔話という共有的な感覚をうまくパロディーにしてストーリー展開する、という手法が画期的です」

 具体的に、どんな展開が画期的なのかというと─。

「桃太郎と長く付き合ってきたお供のイヌ、サル、キジの契約と、携帯電話の長期契約とをかけるとか、物語のパロディーをうまく宣伝したいことと結びつけていますね」(稲増教授)

 そもそも、“シリーズものCM”の先駆けは'07年から続くソフトバンクの『白戸家』シリーズだ。元『日経エンタテインメント』編集委員の品田英雄氏は「当時のソフトバンクはCM界を変えたすごい存在」だとしたうえで、

「auの『三太郎シリーズ』の背景に“打倒ソフトバンク”という考えは間違いなくあったと思いますね」

 打倒に成功したようにも見える昨今だが、何が決め手だったのか。その最たるものが、CM中に流れる“音楽”だろう。昨年はCMソングのヒットで桐谷とAIが紅白に出場。

「作り手からすると『紅白』も“CMのプロモーションの場”であったと思います。こういったイベントを作っていけているというのがすごいですよね」(品田氏)

 もちろん、ソフトバンクだって黙ってはいない……のだが、前出の広告代理店関係者は、

最近『白戸家』にジャスティン・ビーバーを登場させるなど、新たな試みをしています。ただ『三太郎』の“音楽戦略”のような、緻密で息の長いロングラン企画を生み出すには至っていません

 かといって、auが安泰だとは限らないようだ。

三太郎シリーズも、面白いことをやるCMだというのはわかってきているわけで、そうなると見ているほうは慣れてきてしまいます。それを超えるような驚きを視聴者に提供し続けなくてはいけない、というのは大変だと思いますね」(品田氏)

 スマホの新プランも気になるけど、このCMバトルからも目が離せない!