松重豊 撮影/佐藤靖彦

「もともと食べ歩きは大好きで、地方ロケとかに行くと“どの店にしよう?”って考えるのが楽しみだったんです。でも、最近はこの番組がひとり歩きしちゃって、ひとりで店に入っても“これ食べてくださいよ”って店員さんに話しかけていただくこともあり、孤独になれない(笑)。だからって変装してこそこそ食べるのも美味しくないじゃないですか。うれしい悲鳴ですが、リアル“孤独のグルメ”はできなくなりました(笑)」

 ドラマや映画、舞台にと、今や見ない日はない名バイプレーヤーの松重豊(54)。彼が演じる“井之頭五郎”が、仕事の営業先で食事処にふらりと立ち寄り、食べたいものを自由に食すグルメドキュメンタリードラマ『孤独のグルメ』が、スタート5年で第6弾に突入。松重にとっては連ドラ初主演シリーズながら、“あくまで主役は食材”と謙虚に答える。

「主役を引き立てるために自分がどう動くかって考えるのが楽しいし、助演するほうが性に合っているって思うんです。特にこの作品は、食材が美味しそうに見える、かつテレビの前のみなさんが“食べたい!”って思っていただかないと成立しないドラマ。なので、井之頭という役に関しても、バイプレーヤーとしての立ち位置だと思っています

 九州男児の松重にとって、食といえばやっぱりこの味。

「福岡出身なので、九州の味つけはDNAに刻み込まれていて、しょうゆと味噌はいまだに地元から取り寄せています。刺身とか九州のちょっと甘めのしょうゆで食べるのが好きなんですよ(笑)。あと、高校時代はお金がなかったので、よくラーメンを食べていました。1杯250円で50円で替え玉ができたので、500円札があればお腹いっぱいになれたんです。思い出の味ですし、いまだに口が九州人ですね」

 好きなもの、苦手なものは?

「ロールキャベツが好きなんです。劇中でも美味しい店に行きたいと言っているんですが、スタッフがなかなか見つけてくれないんですよ(笑)。嫌いなものはほとんどないんですが、唯一ダメなのはサンドイッチに入っているある食材。小学1年のとき、口に入れた瞬間に“うぇ~”って泣きながら吐き出したものがあるんです。何かって!? これは絶対に言えないし、『孤独のグルメ』のスタッフにも内緒にしていて。もしそれが出たら、ごめんなさいをしてこの番組は終わるかもしれません(笑)

念願が叶いDJに!

 本作のみならず、4月クールは月9ドラマ『貴族探偵』にも出演するなど多忙な毎日だが、家には癒しの存在が。

「ボストンテリアのチャイという犬と、アメリカンカールなんですけど、ロシアンブルーにしか見えないブンという猫を飼っています(笑)。僕は犬派なので、猫派の女房の反対を押し切ってチャイを最初に飼ったんです。でも、5年くらいたったときに女房が“やっぱり猫が欲しい”となって飼うことに。最初はケンカしたりして大変でしたけど、家に帰ると癒されますね」

 そんな松重の日常の中で、いま一番の趣味は音楽なんだそう。

休みの日に、映画やドラマを見たりしても、仕事のことが気になっちゃって楽しめないんです。“この撮影は大変だな”とか余計なことばかり考えちゃって(笑)。でも、音楽はもともと大好きで、歌も下手なのでバンドとかはできませんでしたが、いつかどんな形でもいいから音楽と関わりたいなと思っていました」

 念願が叶い、昨年10月からFm yokohamaでスタートしたラジオ番組『深夜の音楽食堂』のDJに。

趣味と実益を兼ねてやらせていただいています(笑)。今、20代の若いアーティストが作っている音楽が面白いんですよ。僕らの時代は、よくレコードをジャケ買いして“うゎ、失敗した!”とかよくあったじゃないですか(笑)。

 でも、今の子はネットとか携帯とかでいつでも聴けるし調べられるから、音楽にすぐふれられるし、勉強している。そんな会いたいアーティストを50人くらいリストアップしていて、1人ずつゲストにお招きするのがとても楽しいです」

<ドラマ情報>
『ドラマ24「孤独のグルメ Season6」』
テレビ東京系 金曜 夜0時12分~

(c)テレビ東京