『日本一楽しい漢字ドリル うんこ漢字ドリル』(文響社刊 税込み1058円)

「漢字の勉強が大嫌いな息子が、ゲラゲラと笑いながら自発的に漢字ドリルに取り組んでいるんです。夢物語だと思っていた“楽しそうに勉強をする姿”を実現してくれたうんこドリルには、感謝の言葉しかありません!」

 と、目を輝かせながら話すのは、小学4年生の男の子を持つママさん。ギョッとするようなこのドリル、正式名称を『うんこ漢字ドリル』という。漢字嫌いの小学生たちを机に向かわせる魔法の教材として、今、世のママさんたちから大絶賛されているのだとか! 

 実際、発売2週間ですぐに重版がかかり、シリーズ累計63万部を突破。書店でも品薄状態で、小学生向けの学習教材としては、これまでに類を見ないほどのヒットを飛ばしている。

 タイトルにたがわず内容も徹底していて、例えば、1年で習う「田」なら、「田んぼのどまん中でうんこをひろった」、2年で習う「刀」なら「名刀でうんこを真っ二つに切りさいた」という具合に、例文すべてに、うんこをちりばめることで、小学生たちのハートを鷲づかみにしているんです。

 一歩間違えれば、「教育をバカにするな!」なんて声も聞こえてきそうなこのドリル、いったい、どうやって開発されたのでしょうか?

「実は、弊社の社長自らが考案した企画なんです。社長が、旧知の仲である映像ディレクターの古屋雄作さんの『うんこ川柳』という作品を書籍化したいと考えていたのですが、さすがに売れないだろうと(笑)。弊社は、エンターテイメントとして、教育や自己啓発を後押ししたいという理念を持つので、うんこ川柳の要素を教育として生かせないかと考え始めたのがきっかけです」

 と教えてくれたのは、『うんこ漢字ドリル』の担当編集者の谷綾子さん。2015年3月ごろに着想を得たこのドリルは、なんと構想期間約2年の時を経て発売された肝いり企画だったというからビックリ! 

「父が健康ランドでうんこをもらして追い出された」など、ユニークな例文が

「小学1年生から6年生までの3018個の例文は、すべて古屋さんが作成しています。古屋さんは上智大卒の知識人であるにもかかわらず、ひたすら“子どもにとって難しいうんこ例文になっていないか?”と考えてくれました。うんこと向き合うために沖縄に飛び、ひとり、きれいな海を見つめながら例文を考えたそうです(笑)」(谷さん)

 そんなかいもあって(!?)古屋さんがまさに「ひねり出した」フレーズは、高クオリティー&大爆笑ものばかりに。「これならいける!」と手ごたえをつかむも、大きな問題に直面したという。

「私たちは教材を商材として扱ったことがなくノウハウがありませんでした。悪ふざけだと思われないためには、楽しいだけではなく、きちんと学べる作品にしなければいけない。アドバイザーとして、長年、学習教材を手がけている編集プロダクションさんにご協力いただき、書き順や言葉のバリエーション、読み方を書かせてから漢字を書かせるなど、実際に学習効果のあるドリルとしての側面に注視しました」

 漢字学習の最大の問題点は、繰り返し書くことが求められるため、途中で飽きてしまうこと。そこに、子どもにとってキラーフレーズである“うんこ”をミックスさせたことで、むしろ楽しい時間に変えてしまったことは、もはや発明と呼んでも過言ではないだろう。さらに、例文にはこんなこだわりも!

「生理的に受け付けない『食べる』『臭い』といった例文は作りませんでした。“新春のあいさつにうんこを持っていきました”など季節を感じるものや、大人の階段を上り始める6年生の例文では、うんこから卒業するような感傷的な例文も含まれています。古屋さんが意図的に物語性のある内容にしているので、そこも注目してほしいところです」

 また、発売当日に、一般の主婦がTwitterに「こんなドリルが発売されている(笑)」と写真を投稿するや、リツイート数が4万件にまで膨れ上がった。

「SNSでの反響は想定外でした。でも、まさかここまでのヒット作になるとは……。手ごたえはあるものの、拒否反応もあるんじゃないかって。響きは『うんちドリル』のほうが優しいものの、インパクトに欠けますし、何より社長と古屋さんは『うんこ』にこだわっている。とはいえ、企画者である社長自身も、“本当に売れるのか?”と、だんだんと不安を覚えていったくらいで」

 と、谷さんが振り返るように、発売にあたり実際に3つの学習塾で子どもたちに使ってもらい、子どもや親の反応をリサーチしたほど。大まじめにうんこと向き合ったからこそ、確信を得ることに成功した。

『日本一楽しい漢字ドリル うんこかん字ドリル 小学1年生』(文響社)※この記事の中で書影をクリックするとアマゾンのサイトにジャンプします

「女の子のウケもよかったし、保護者の方からも“よく思いつきましたね”とお褒めいただいたことは、とても自信につながりました」

 冒頭に登場したママさんも力説する。

「たしかに中身の例文は下品なものもあります(苦笑)。でも、息子から“お母さん、前の学年と5年のドリルも買っておいて”と言われたときには、わが子の漢字嫌いの呪いが解けた! と心の中で大喜びしました。子どもをやる気にさせる実力は折り紙つきです!」

 このママさんによれば、「子どものやる気をそがないように、親としてはうんこ漢字ドリルを嫌がる姿勢を崩さないようにしている」のだそう。親が嫌がり騒ぐほど子どもは面白がってドリルを一生懸命やるようになるのだとか。さすが、お母さん!

 今やその勢いは教育現場にまで及ぶほどで、塾の先生の中には使用を推奨する人も少なくないとか。

「先日は学校の先生から“授業で使いたいのですが”という問い合わせをいただきました。ありがたいやら、おそれ多いやらで……」

 面映ゆそうに谷さんは答えるが、これだけ保護者や小学生が激賞しているのだから期待感は募るばかり。当然、『うんこ英語』や『うんこ文庫』のような別シリーズの登場を願うファンも多いはず。

「漢字ドリル以外にもできるよね、という話は以前から社内でもあがっています。違う形でも、うんこを生かしたい気持ちはあります(笑)。学生時代に楽しみながら勉強ができなかった自身の体験から、社長はできるだけ楽しく勉強ができる方法を発信したいと考えています。“しんどい”“面倒くさい”ではなく、勉強のイメージを変える手助けを私たちができたらうれしいですね」

『うんこ漢字ドリル』が、現代の小学生たちの漢字力アップに貢献するなんてまさにクソ力!?