ジャニーズにハマったギリシャ人女性の告白 写真はイメージです

 ギリシャ人の私が「ジャニーズファン」として、彼らの何が魅力なのかを考えてみたいと思います。

 少し前になりますが、昨年末、SMAPが解散する前のこと。ちょうど最後の「SMAP×SMAP」の放送時は日本に滞在中で、テレビを観ていました。一緒に日本に来ていたギリシャ人の知人たちはSMAPのことを知らず、「何を見ているの?」「この人たち誰?」と私にずっと話しかけてくるので「うるさい!」と一喝したことを覚えています。

 最後の「世界に一つだけの花」を歌っているシーンを見て「(解散は)やっぱりウソでした!」という言葉を待っていましたが、それは起こりませんでした。なんだか、親戚が離婚してしまったような感覚でしたね。

ドラマを観ていてあることに気づいた

 さて、私がジャニーズのことを知ったのは、ドラマ「花より男子」がきっかけです。その後もいろいろなドラマを見ていますが、ドラマを観ていると、徐々に俳優のことが気になってきます。インターネットで名前とか、生年月日などを調べるのですが、あるとき所属事務所の欄に「ジャニーズ」と書いてあることが多いことに気がつきました。

当記事は「東洋経済オンライン」(運営:東洋経済新報社)の提供記事です

 日本のドラマや映画にも必ずと言っていいほど、ジャニーズ事務所に所属しているタレントが出ている印象があります。ジャニーズのタレントの特徴は、「きゃしゃだけど、顔がカッコいい」「走るのが速い」「ダンスがうまい」そして「トークがうまい」こと。ドラマを観ているとなんとなく「ジャニーズっぽい」のがわかるようになりました。

 カッコイイのはもちろんですが、ジャニーズにハマった理由は、ほかにもあります。

 まず、上下関係が厳しそうなところです。ジャニーズ事務所について調べてみると、下は10代の子どもから、上は50代の人までいること、デビューを夢見ながら厳しいレッスンを受けていることなど、ただのチャラチャラした男子の集まりではないことを知りました。

 ギリシャでは、日本のように上下関係の文化はありません。年配を敬うというのはありますが、人間関係は基本的に自分にメリットがあるかないかが重要です。そのため、相手が先輩であっても、先生であっても、年齢が上だからという理由だけで、自動的に後輩や生徒が尊敬するということはほぼないのです。

 一方、日本は先輩や先生は無条件で尊重するという文化がありますよね。始めは、先輩の言うことにあまりにも忠実に従う姿を見て「この国大丈夫?」と思いました。けれども、先輩は後輩を大切にし、ご飯をご馳走したり、面倒を見たりすることを知りました。この上下関係の文化を知ったとき「新しい世界だ!」とうれしくなりました。

親戚のおばさんのような気持ちに…

 年末の「ジャニーズカウントダウンライブ」でも、目立たないところで、黒子となって仕事をしているのはジャニーズJr.の子どもたち。先輩のタレントが乗っている大きなタワーを、たくさんの子どもたちが一生懸命押している姿を見て、最初は「こんな小さいのに、えらいなあ」と思いました。

 ヨーロッパでは、それは大人がやる仕事ですし、もし子どもたちがそういう仕事をしているのを見たら、お母さんたちは怒りますよ。しかも正月のお休みのときにまで働いていて、少し「かわいそう」だとも思いました。

 もちろん、ジャニーズJr.の子どもたちやご両親も、デビューという目標があるから頑張っているのだと思いますが、嫌な顔を見せず、そのような下積み生活をするジャニーズのグループを、今ではとてもリスペクトしています。小さい頃から見ているグループ(Hey! Say! JUMPやKis-My-Ft2)もありますので、「この子、こんなに大きくなったんだ」と、なんだか親戚のおばさんのような気分にさえなってしまいます。

 余談ですが、ギリシャでは、5~10歳くらいの年齢差であればあまり関係なく、みんな友達感覚です。現在、日本人の夫と私は、アテネ郊外でギリシャ人に剣道を教えています。ある時、10歳くらい年下の生徒から「オッス!」と声をかけられたことがありました。さすがに夫もカチンときたそうで、何度も教育して、最近ではやっと理解してもらえるようになりました。

 また、夫が驚くのは、ギリシャ人は先生に対して、自分の意見や質問をためらいなくできることです。たとえば、夫が生徒に「ここの動作が良くないから直したほうがいいよ」と言うと、日本人相手なら黙って聞いてくれますが、ギリシャ人だと必ず「なんで?」から始まります。下手をすれば、他の生徒も巻き込んでの議論に発展して、そうなってしまえばもう稽古どころではありません。

ジャニーさんのおかげで覚えた日本語(と英語)

 さて、話を元に戻して、ジャニーズの好きなところをもう1つ挙げるなら、タレントたちが「自信満々」なところです。彼らは話がうまいし、歌も歌えるので、とても自信があるように見えてすてきでした。

 キムタク(木村拓哉)は特にそうですね。彼の話し方、また立ち居振る舞いからは自信が伝わってきます。だから彼らが、(ギリシャ人に比べて)ちょっと背が低くても、好きになるのかな、と思います。

 さて、魅力たっぷりのジャニーズは、私にとっては日本語を勉強するモチベーションになりました。日本語を勉強し始めてまもなく、まだひらがなとカタカナしか読めなかった頃、日本から雑誌『Myojo』や『ポポロ』を注文しては、ただペラペラとページをめくって楽しんでいました。その影響で、私が最初に覚えた日本語(と英語)は、「マジ?」「ラッキー」「ユー(ジャニーさん〈ジャニー喜多川氏〉の口癖)」「青春」です。また「ネギトロ」は嵐の番組で知りました。

 少し日本語が上達し始めたころ、「もしジャニーズの人に会ったら何を話そう?」と、想像しながら質問や自己紹介の練習をしていました。相葉雅紀くんや大野智くんはあまり英語が得意ではないこともチェック済みでしたので、日本語を覚えるほかありません。「そんなありえないことを考えて、幸せな人だなぁ」と私のことをバカにするかもしれません。確かに、普通に考えてみればそうかもしれません。

 しかし、奇跡は起きたのです!

 ブラジルで行われたサッカーのワールドカップで、日本とギリシャは同じグループでしたよね。そのため、日本のテレビ局がギリシャに取材をしに来ました。私は通訳として、その取材を手伝うことになりましたが、日本から来る人のリストには、なんと手越祐也くんの名前が!

 アテネのホテルでスタッフと打ち合わせをしていたときに大きな声を出してしまいました。周りのギリシャ人もびっくりしていました。当時は自分でも「われながらバカだな」と思っていましたが、念ずれば夢ってかなうこともあるんですね。

欧州人にとってジャニーズは「かわいすぎる」

 結局、手越くんと会うことができました。とにかくかっこよかった!そして幸運にも少しだけ話をすることもできました。メークのときに、静かに読書をしていたのが印象的です。今でも夢じゃないかと思うときがあります。皆さんも夢をあきらめちゃダメですよ!

 ただ、こんなガチなジャニーズファンの私でも、ジャニーズは少し変わっているな、と思うところがあります。たとえば(これはジャニーズだけではないかもしれませんが)、彼らがやせぎみなこと。日本では目立たないかもしれませんが、ギリシャ人からすると相当細いです。私の母も、「この子たち、もうちょっと食べたほうがいいわ」と心配していました。

 また、彼らの歌が中学校のコーラスに聞こえることもあります。歌はうまいのですが、パート分けされていなくて、みんな同じ音程で歌っているので合唱しているように感じるのです。でも、歌詞はすばらしいので、日本語がわかる人が聞けばとてもいい歌に感じると思います。

 もう1つ、彼らは「かわいすぎる」。ドラマや映画などでは役作りをしているのであまり感じませんが、バラエティ番組や雑誌などでみるジャニーズの男性は、話し方や髪型などが少しかわいすぎるような気が……。

 ギリシャ人には「男は男らしく、強くあるべき」という考えが強く、髪を染めていたりするのは男らしくないのです。ギリシャ人的な価値観で見ると、ジャニーズや日本のタレントは、「テディベア」のようなイメージかもしれませんね。

 もし仮に、彼らがギリシャでデビューしたらどうなるか。残念ながら、すぐにブレークするのは難しいと思います。ギリシャは案外、保守的な国だからです。ちょっと前に世界でワンダイレクションやジャスティン・ビーバーがはやりましたが、ギリシャではあまり売れませんでした。

 もし、「ジャスティンを聴いている」なんて言うと「もったいない、ギリシャの音楽のほうがもっといいのに」となります。それはジャニーズでも同じ結果になると思います。ギリシャは、ヨーロッパ文明発祥の地という自負があり、自国の文化に誇りを持っています。最近、アニメや映画などを通じて、日本の文化やタレントが好きなギリシャ人もいることはいますが、少数派です。

自信満々の彼らは輝いている!

 それでも、やっぱり私はジャニーズが好きです。歌っているときも、演技をしているときも彼らは自信に満ちあふれています。正直なところ、ヨーロッパの人間からすると、一般的な日本人は自信がなさそうな印象があります。謙虚を美徳としていることもあるかもしれませんが、私たちからすると「もったいないなぁ」と思うことも。

 こうしたなか、それぞれが自信を持って輝いているジャニーズのタレントは、振る舞いは「海外的」なのかもしれません。私が初めて、「花より男子」を見て、松潤(松本潤)にひかれたのも、彼が自信を持って演技をしていたからなのでしょう。ちなみに、私の夫は、外見は松潤にまったく似ていませんが、とても魅力的な男性です!


<著者プロフィール>
アナスタシア・新井・カチャントニ ◎通訳、翻訳家、ライター ギリシャ生まれ。ギリシャの大学の専攻は物理だったが日本に興味を持ち、現在は通訳、翻訳家、コーディネーター、ライターとして活動。日本のポップカルチャーから伝統文化、料理まで、幅広い分野を研究。また、ギリシャで剣道を教える日本人の夫を手伝う傍ら、自らもギリシャ人に日本語を教え、日本の文化を伝えるべく奮闘中。現在はアテネ近郊に在住。