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40代女性の平均は身長158cm・体重55.5kg!

 美容や健康意識が高まり、いつまでも若々しく美しい容姿をキープする美魔女も増えているけれど、やはり40代以降の体形維持は至難のワザ。“お腹ポッコリ”を感じるのは、加齢によって身体の「形」が大きく変化していることが原因だという。

「閉経が近づくと脂肪分解ができにくくなり、皮下脂肪が増える。また筋力の衰えによってハリもなくなりたるんだお肉がお腹まわりに蓄積されていくから」

 こう説明するのは、医学ジャーナリストで医学博士の植田美津恵さん。もちろん個人差はあるが、「いわゆる“中年太り”はすべての人に起きること」。そして、50歳を過ぎると、腹部とバストは同じ太さになっていく傾向にあるとか!

肥満になると動脈硬化、高血圧、がんのリスクが高まり、関節痛や腰痛も出てきやすい。そうなって初めて本気でダイエットを始める人がいますが、50代はやせにくいということを念頭におき、若いうちから適正体重をキープすること、運動する習慣をつけることを心がけてほしいですね。

 ただ、’60年代にミニスカートがブームになって以降、細い脚=長い脚=憧れの対象という美意識が根づき、やせすぎの女性が増えていることは不安ではありますが」(植田さん、以下同)

 厚労省の調査によると、確かに「やせ」体形の女性が、ここ35年間で急増している。

 

「女性は思春期に摂取したカルシウムを体内にため込んで、それを徐々に切り崩していくのが特徴。思春期に無理なダイエットなどせず、きちんとご飯を食べ、カルシウムをたくさんとっておけば閉経後の骨阻しょう症のリスクは減ります

 反対に、健康と美意識の関係がうまく成立していると思われるのは「歯」に関するデータ。40歳以上で20歯以上を有する人の割合は、’04年から’14年の間に約5%増。

 

「昔は単純な虫歯治療が中心だった歯科医療が、患者側が美しい歯にこだわるようになったことで、ホワイトニングや歯石除去のための通院もメジャーに。健康にひと役買っていますよね。虫歯は全身疾患につながりますし、歯周病の人は糖尿病や認知症にもなりやすいんです。また、奥歯でしっかり噛んで食事をしている人は、転倒率が低いというデータもあります

 歯の健康に意識が向く一方で、40~50代の女性の約半数は、平均睡眠時間が6時間を切っている状態だ。

 

「40~50代は育児、家事、仕事に忙しい。睡眠時間のサイクルが乱れる期間が長く続くと、乳がんや男性の前立腺がんのリスクが高まるので注意が必要です」

 せめて体力をつけておきたいところだけど、何かと忙しい主婦は運動するのもひと苦労。40代女性の平均歩数は6873歩だが、

8000歩を目指してほしいですね。ウォーキングの目安は、15分で2500歩近く歩くこと。目標に到達するには、50分~1時間ぐらい歩けばいいことになります。代謝をよくして体温を上げておくと、病気にもなりにくいですよ

 

平均寿命より健康寿命を意識して

 長寿の国ニッポンと謳われる、わが国の女性の平均寿命は87・1歳。現在まで右肩上がりで推移している。

今、重視されているのは、平均寿命ではなく、介護などを必要とせず日常生活を送れる健康寿命を延ばすことです。健康寿命の平均は男性で71・2歳、女性で74・2歳。よって平均寿命との差は男性で9年、女性で13年です。この年数の間は、何らかの体調不良を抱えて生きていかねばならないということ。この差を縮め、できる限り長く元気に自力で生きることが課題ですね」

 

 平均寿命の延びとともに、更年期や閉経を迎える年齢も遅くなったかと思いきや、

「更年期が平均45歳くらい、閉経が平均50歳くらいというのはあまり変わっていないので、不定愁訴の症状に悩まされる期間が延びたということ。また、閉経後の女性は子宮体がんという、子宮の奥にできるがんの発症率が上がります。年をとってどのような病気にかかりやすいかは、やはり遺伝的な部分があるので、自分の肉親の女性をよく観察することが大切です。事前に気をつけるだけで、発症を遅らせることはできると思います。でも、あまり閉経や更年期を意識せず、“生理が終わってスッキリしたわ”ぐらいの前向きな気持ちで過ごしてください」

 現代人の死亡率が高い死因トップ3はがん、心疾患、肺炎で、なかでもがんはダントツ。植田さんが注意を促すのも納得だ。だが、1945年の終戦以前は肺炎、胃腸炎、結核が3大死因だったという。

「戦後、日本人の生活全般がガラリと変化したことが影響しています。がんが増えてきた理由のひとつは長寿になり、ほかの病気にかからなくなったことです。ただ、女性の場合は、乳がんや子宮がんが若年化している傾向があります

 

 植田さんは、健康に関する日本人の平均値の今後の推移をこう予想する。

「現在は体重も10年ほどキープしているし、自分の歯の数も増えているし、日本人全体の健康志向の高まりを感じますよね。特に50代以上の世代は、幼少期を粗食で健康的に過ごし、大人になってから栄養価の高い美味しいものに恵まれた裕福な世代なんです。

 一方で、ジャンクフードを子どものころから当たり前に食べる世代が年をとったとき、どのような結果が出てくるのかは少し不安です。もしかしたら現在の平均値がいちばんよくて、あと10年もしたら、健康寿命は縮んでいってしまう可能性もあるわけです

 日本の未来を担う子どもたちの健康が危うい!?

「若い女性はやせすぎとともに小顔化も心配です。現代っ子は昔に比べあごを使わないために、小顔化が加速しています。小さいときに硬いものを食べさせないと、咀嚼する力、飲み込む力が発育せず、無呼吸症などになりやすくなります

 健康格差の問題もある。「例えば、歯の治療は保険適用外の歯列矯正などが一般的になるなかで、お金がなくて治療を受けられない子も増えています。事実、貧困家庭の子どもたちは、非生活困難世帯よりも虫歯がある割合が10%以上高いという足立区の調査データもあります

 次世代のほうが厳しそうな日本人の健康の平均値。

日本では交通事故死より医療事故死のほうが多いといわれます。病院のお世話にならず、健康に過ごして、ある日、ポックリ死ねる人生が幸せですよね

 理想の最期を迎えるには、やはり毎日の節制が大きなポイントといえそう。

【出典・参照】体重と身長、やせの割合、歯の本数、歩数、睡眠時間……厚生労働省「国民健康・栄養調査」平成27年版及び平成26年版(グラフは編集部作成)、平均寿命……厚生労働省「平成27年簡易生命表」、健康寿命……厚生労働省「健康日本21(第二次)現状値の年次推移」、死因のグラフ……厚生労働省「人口動態統計」をもとに編集部作成

<プロフィール>
植田美津恵さん◎医学ジャーナリスト、医学博士。専門は公衆衛生学・医療安全・医療制度ほか。大学での講義をはじめ医学番組の監修、講演活動と幅広く活躍。健康にまつわる著書多数。