福士蒼汰 撮影/伊藤和幸

役者の仕事は、つらいことも楽しいことも同じくらいあります。でも自分の実になることのほうが多いし、やめたいって思ったことは1度もないです。僕の友達は海外留学していた人が多かったので、今ちょうど社会人1年目。この映画を見て、どんなことを思ったのか感想を聞いてみたいなと思っています」

 5月27日から公開される福士の主演映画『ちょっと今から仕事やめてくる』の原作は、60万部を突破したベストセラー小説。“長時間労働”“パワハラ”などの重たいテーマが扱われる中で、福士が演じたのは、大阪弁でアロハシャツを着ている謎の男・ヤマモト。

「大阪弁は微妙なニュアンスがすごく多くて……それがいちばん難しかったです。撮影の5か月前から方言指導をしていただいたんですが、ニュアンスが変わるだけで全然違う意味に聞こえたりすることもあるので」

 ブラック企業で働く青山隆(工藤阿須加)が、電車ではねられそうになるところを、ヤマモトが救うところから物語はスタート。ヤマモトは青山と顔を合わせるたびに飲みに誘い、いつも笑顔で元気をくれる存在だけど、

自分自身と結構違うなと思う部分のほうが多かったです。普段、そんなに明るくないので(笑)。でも、物事を深く考え込んだり悩んだりはしない、楽観的であるようなところは少し似ているかもしれない。今回は役もそうなんですが、ご一緒させていただいた成島出監督の存在が自分の中ですごく大きかったです」

『八日目の蝉』で日本アカデミー賞最優秀監督賞を受賞した成島監督との仕事は、

「僕がこれまでに経験したことのない感覚で、撮影に挑めたなと感じています。今回の現場で得たものや学んだことを生かして、これからも挑戦し続けたいです」

 舞台挨拶では「僕自身を木でたとえると、根っこのない状態で育ってしまったような気がしていて、監督がそんな僕に根っこを伸ばす方法を教えてくれた」と話し、この作品が“自分にとってターニングポイントになった”と強い思い入れを感じさせる言葉も。

仕事やプライベートの悩みは……

福士蒼汰 撮影/伊藤和幸

 仕事やプライベートの悩みを誰かに相談することってある?

自分でもあまりよくないなと思うんですが、相談はしないんです。しないというか、できないというか……。悩んだら行動するしかないと思っていて、どうすれば乗り越えられるかを考えます

 落ち着いた受け答えで自己分析をする姿が頼もしい。逆に相談されることが多いのでは?

ないです。たぶん僕が楽観的なタイプだから“こいつに相談してもダメだ”って思うんじゃないですか? 相談しないし、されないし。……なんか寂しい(笑)

 先ほどまでの凛々しい表情とは打って変わって、くしゃっと笑う。そのギャップ、とてもズルいです!

でも、されたことがないってわけではなくて(笑)。相談されると、すごく考えてまじめに返すから、相手にびっくりされちゃうんです。でも、聞いてくれるだけでいいパターンもあったりしませんか? 答えは求めてない、みたいな(笑)

 5月30日で24歳になる福士は、自分のことを「褒められて伸びたい」人間だと教えてくれた。

褒められると“そんなことないです、もっと頑張ります”って素直に思えるんです。いくら褒められても、自分ができていないことは知っているし満足はしないから、そこで謙虚になれる。自分自身が“もっと頑張ろう”って思えるので、褒められて伸びたいです

『ちょっと今から仕事やめてくる』5月27日(土)全国ロードショー (c)2017映画「ちょっと今から仕事やめてくる」製作委員会

おまけトーク

■まるで“楽園”のような国でした

「この撮影で、初めてバヌアツ共和国に行ったんですが、海も人の心も本当にキレイでした! バスに乗って移動していると子ども・大人関係なく、手を振ってくれるんです。僕らみたいな異国の人間ともすごく距離が近くて、珍しいと思いませんか。

 現地は、ビスラマ語のほかに英語とフランス語が通じました。多く話す機会はなかったですが、少しでもコミュニケーションをとることができてうれしかったです」

■福士くんにとっての“天使”は?

「犬! 昔トイプードルを飼ってたんですが、犬って本当に可愛いです。昔は犬派だったんですけど、今度、猫と共演する作品(2018年公開予定映画『旅猫リポート』)があって最近は猫も好きになりました。もともと動物全般、好きなんです。

 プライベートではあまり行く機会がないんですが、動物園も面白くて好きです。寝ていた動物がいきなり動いたりするから、予測できなくて可愛いなって(笑)」