1992年1月にスタートし、今年3月28日に最後の放送を終えた『福山雅治のオールナイトニッポン』。彼の“ライフワーク”ともいえる同番組は、フリーアナウンサー荘口彰久さんとの軽妙なかけ合いで深夜のリスナーをとりこにし、“魂ラジ”の愛称で親しまれた。そんな歴史の詰まった番組を一緒に作り上げてきた3人に特別インタビュー。“ましゃ”の表も裏も知り尽くす荘口さん、放送作家として番組を支えた小原信治さん、ディレクターの松岡敦司さんが語る、素顔の“ましゃ”とは——

■基本的に“出たとこ勝負”です

松岡「とにかくストイックですね。CM中も、ずっとツイッターで番組に対する意見をチェックしているか、ストレッチをしているかですから」

荘口「番組にメールをくれる方っていいことしか言わないじゃないですか。ツイッターだと忌憚のない意見が書いてあったりするからチェックしたくなるんでしょうね。CM中はコロコロ(マッサージの道具)をマネジャーさんに持ってきてもらって身体をほぐしています。あとはギターを弾いてることも多いですね」

小原「たまに1度も聴いたことのないような曲を弾いてたりして、“コレ新曲なんじゃない!?”なんてことも」

 よく練られたトークが繰り広げられていたように見えたが、意外にも打ち合わせはまったくしていなかったという。

荘口「事前におもしろいことをしゃべっちゃうと、本番のときに“それ聞いたよ”ってなっちゃいますからね。基本的に“出たとこ勝負”です」

■アルバイトの子にも必ず1日に1回は話しかける

小原「福山さんを見ていて思うのは、人を楽しませるのが本当に好きなんだなってこと。番組スタッフで飲み会をやっても、ひとりひとりのところを回って“楽しんでる?”って声をかけてますから」

松岡「スタジオでは、アルバイトの子にも“今日どんなメール来てた?”とかって、必ず1日に1回は話しかけるんです。常に周りを見てますから。“気配りの人”って呼ばれるのも納得ですよね」

 もちろん、ラジオのリスナーに対しての気配りも徹底している。

荘口「福山さんは“親に怒られないように布団の中でラジオを聴いていた中学2年生”のときの自分に向けて話してるんですって。よく言うんですけど、土曜日の夜中にラジオ聴いてるコって、クラスでは“イケてないコ”だったんですよ。“リア充”の人なら絶対に遊びに行っていて、家にいない時間ですから。福山さんも昔はそういう時期もあったからこそ、思うところがあるんでしょう」

松岡「この前、童貞の男子たちを集めたときも、本当に楽しそうでした。ニッポン放送のスタジオに100人近くの童貞クンを呼んで、みんなで一緒に歌を歌ったらUFOが来るんじゃないかということで、やった企画なんです。“せっかく来てくれたなら会いたい”というので、番組が終わった後に人生初の握手会を開催したんですよ。相手は童貞でしたけど(笑い)」

■“決め事はきっちりと守る”という姿勢

 ディレクターが不在でADが番組を進行させなければならなくなったとき、想定外の事態に福山がとった行動がスタッフを感心させたことも。

荘口「タイトルコールをするタイミングで、緊張してしまったADさんがキュー(合図)をなかなか出せなかったんです。福山さんが自分の判断でコールしてもよかったのですが、あえてしませんでした。それは、“キューが出ないと話せないから”。この人はタレントじゃなくてアナウンサーだなって思っちゃいましたよ。その後、気づいたADさんが慌ててキューを出してタイトルコールが流れたんですが、リスナーの方たちからすれば、福山さんが間違えたと思ったでしょうね。 “番組をコントロールするのがディレクターの仕事だから、僕もその指示に従わなくてはならない”って後で言ってました。“決め事はきっちりと守る”という姿勢にラジオへの愛を感じましたね」

松岡「そういう意味で言うと、セキをするときも、マイクの音が入らないようにカフ(マイクのオンとオフを切り替えるためのスライドスイッチ)をちゃんと下げてからしてますから」

小原「毎週、移動の車の中などで前回の放送音源を聴いていたそうなんです。その過程でトークの内容のみならず“ここが聴きづらい”とか“セキが入っちゃってる”といったことにまで気づいて、改めるようにしていったんじゃないでしょうか」

 プロ意識が高いから、好き勝手にやっているようでも番組の構成はしっかりしている。ただのおふざけではなく、楽しませるためのアイデアが詰め込まれているのだ。

小原「どれだけおちゃらけたことをやっても、下ネタを言っても大丈夫なのは、『魂のリクエスト』の存在が大きいですね。福山さんがギターの弾き語りを披露するあのコーナーがあるから “アーティストのラジオ番組”として、きっちり締まっていたんだなと思います」

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3月28日、最後の生放送もリラックした雰囲気で