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 5月28日、胃がんのため67歳で亡くなった漫才師・今いくよさん。

「めっちゃ男前。男以上に男前の人やったです」

 後輩のハイヒール・リンゴは、今いくよさんを、こう振り返る。

「お金に対しては特にです。一緒に営業行っても、食事代からお土産を買うにしても全部払ってくれるんです。後輩全員にですよ。だから、いくよ姉さんと営業に行くときはお金を全然使わない(笑い)」

 今いくよ・くるよが主催していた毎年3月3日に開かれる『ひな祭り会』には、多いときには芸人が40人も集まったというが、その費用も全部彼女たちが出していた。

 いまではコンビを組む芸人が、それぞれ1人で仕事をすることは特別なことではないが、今いくよ・くるよの2人は絶対に1人で仕事をすることはなかった。いつ、いかなるときでも、そのスタイルを崩すことはなかったという。

「あるとき、高倉健さんと一緒にCMの仕事があったんですね。でも、くるよ姉さん1人だけだったんです。そしたら、その仕事を断ってしまったんですよ。高倉健さんと一緒の仕事ですよ」

 それだけお互いに相方を大事に思っていたということ。特に1995年にくるよが病に倒れたときは、いくよさんがくるよの面倒をちゃんと見なくてはいけないと、そのために健康でなくてはならないと検査したという。そのときはどこにも異常は発見されなかったというのだが……。

 2人は1度も結婚していない。それは彼女たちが芸人になったころ、「女芸人は結婚するとすぐ辞めるし、芸もおろそかになる」と、さんざん言われていた時代だったからだ。2人はそんな言葉に反発してか、結婚することもなかったし、熱愛の噂が出ることもなかった。

「いくよ姉さんには彼氏がいたと思います。いつも絶対2人で行動するんですが、ときどき1人でふらっといなくなるときがあって、楽屋に帰ってきたときにダイヤの指輪をしていたことがあるんです。絶対、彼氏にもらったんだと思いますよ。ただ、どうしたんですかなんて聞けませんよ、そんなこと(笑い)。でも、そうだと思います」

 いくよさんは男前であると同時に気遣いの人でもあった。

「とても気を遣われる人で、3月の末に『なんばグランド花月』の楽屋に来ていただいて、いまなあ、抗がん剤治療中なんや言うて。私細いけど、昔スポーツやっていたからしっかりしとるねん。顔色も悪いけど化粧濃いからわからへんやろ言うて心配かけないように気を遣っているんですよ」

 めっちゃ男前で、関わった人や後輩に慕われ、彼女を悪く言う人は1人もいなかった。

「2人は夫婦であり、親子であり、姉妹であり、親友であり、なにもかもでした」

 そんな最高の相方を失った、くるよは通夜の席で「日本一の相方や。私は本当に幸せやった」という言葉を投げかけた。