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 12月12日公開予定の松竹120周年記念映画『母と暮せば』。メガホンを取るのは山田洋次監督。

吉永小百合主演、嵐の二宮和也、黒木華、浅野忠信らの豪華俳優陣に加え、音楽担当が世界の坂本龍一ということからも、山田監督のこの作品への意気込みが伝わってくる。

「山田監督だけでなく、わが社にとっても、社運をかけた作品ですよ。長崎を舞台に原爆で亡くなった息子が幽霊となり母のもとに戻ってくるという、戦後70年にふさわしい映画。しかも、井上ひさしさんが広島、沖縄、長崎をテーマにした“戦後命の三部作”という構想を山田監督が引き継ぎ、井上さんが完成させられなかった『母と暮せば』を、娘の麻矢さんと一緒に長崎に行ったりして、作り上げたのです」(松竹関係者)

 だが、映画のポスターなどに、“井上ひさし”という名前は出てこない。そこには、ある深刻な事情が関係している。

「井上さんの三女で『こまつ座』代表の麻矢さんと、井上さんの後妻であるユリさんとの関係がうまくいってないようなんです。麻矢さんは前妻である西舘好子さんとの子どもですから、義理の親子ということになります。そんな中、井上作品の著作権を持つユリさんが、12月にこまつ座が上演する『ひょっこりひょうたん島』に対し、反対の意向を公にしたんです。血がつながっていないとはいえ、母娘の仲がここまで深刻だったとは驚きました」(スポーツ紙記者)

 こまつ座とは、井上さんが生前、自分の作品のみを演じるために作った演劇集団。そのこまつ座に対し、ユリさんは7月25日に『井上ひさし公式サイト』で声明を発表。

《私は舞台化には反対の意思をお伝えしました》

 と、上演反対を明記しているのだ。

「原作を大事にしたいという気持ちからか、ユリさんは舞台化に反対しているのでしょう。ただ、作品を時代や状況に合わせて作り上げていくのが、こまつ座のやり方です。実は井上先生が亡くなったらこまつ座も終わるというのが大方の見方でした。ですが、麻矢さんが劇団を引っ張り、素晴らしい舞台を作り続けている。’12 年には演劇界のアカデミー賞といわれる菊田一夫演劇賞特別賞を受賞したほどです。また、井上先生の作品『東慶寺花だより』を原案にして企画した映画『駆込み女と駆出し男』が大ヒットするなど、その手腕は高く評価されています。なので、母娘の争いで井上作品が上演できないとしたら、演劇界としては大きな損失ですよ」(全国紙演劇担当記者)

 だが、家族のモメごとは、『ひょっこりひょうたん島』だけではない。今年3月には、ユリさんはこまつ座に対し、5月に上演する舞台の“著作権侵害差止請求仮処分申立”を東京地裁に起こしている。

 つまり、親子ゲンカは法廷闘争にもつれ込んでいたのだ。

「ふたりの争いに関し、上層部はとても神経質になっています。実際、ユリさん側からわが社へ、麻矢さんを製作サイドから除外するよう申し入れがありました。ですが、山田監督は、そのことに反対されたんです。麻矢さんと一緒に『母と暮せば』を作ってきたという思いがあるのでしょうね。それでは、“井上ひさし”という名前は使えないということになったんです。争いがエスカレートすれば、さらなる要求があるかもしれないと毎日、戦々恐々としていますよ」(前出・松竹関係者)