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 いまや2人に1人がかかり、3人に1人が亡くなる「がん時代」に突入。身近な病気であるわりに、デマや噂に惑わされないで本当に役立つ情報を見つけだすのは難しい。そこで、がんに詳しいスペシャリストたちに話を伺った。

・おデブはがんになりやすい?

「昨年発表されたイギリスの論文では、子宮がん、卵巣がん、閉経後の乳がんなどで関係性が指摘されています」(ロンドン大学・小川先生)

 その原因として考えられるのが、なんと脂肪細胞が分泌するホルモン。脂とホルモンだなんて、思わず焼き肉を連想してしまうけれど……。

「だから太ってしまうというわけではありませんよ(笑い)。脂肪細胞が血中に出すホルモンには、炎症を抑える効果があるもの、炎症を促進させるものの両方あります。ところが太ってしまうと、炎症を抑えるホルモンは分泌されなくなってしまいます」(小川先生)

 炎症を起こすホルモンばかりが分泌されるようになると、繰り返し細胞が傷つき、がんになるものも出てくるというわけ。

「インスリンの値が高いとがんのリスクが高まることも、アメリカの研究で明らかにされています」(小川先生)

・右腕にあるホクロの数でがんがわかる?

「ホントです。つい最近、私が所属しているロンドン大学セントトーマス病院から、興味深い研究成果が発表されました。右腕にホクロが11個以上ある女性は、悪性度が高い皮膚がんの一種『メラノーマ』になるリスクが通常の10倍に上昇する、というものです」(小川先生)

 ホクロが1つ増えるごとに、メラノーマ発症のリスクが2~4%上がるといわれているそう。だけど、全身のホクロを数えるのは困難。それに読者世代ともなれば、もはやホクロなのかシミなのか、ソバカスなのかわからない正体不明のものも多い……。

「今回の研究発表は、片腕のホクロを数えるだけなのでかんたんなのでは? がんに思えて不安だというときは、皮膚科専門医に相談してみてください」(小川先生)

・象はがんになりにくい?

 1981年以来、がんは日本人の死因トップを独走中。ところが同じ哺乳類でも、がんとは無縁の動物もいるそう。

「一生涯のうち、日本人ががんにかかる率は男性およそ56%、女性およそ43%。これに対し、象はわずか5%しかありません。ほとんどの象は、がんになりにくいといわれています」(小川先生)

 どんな謎が隠されているのか?

「アメリカの研究グループによって最近、象の遺伝子データが解析されました。それによれば、腫瘍を抑制する機能をもつ『p53』と呼ばれる遺伝子が、ヒトの20倍もあることがわかったのです」(小川先生)

 さらにすごい機能も持ち合わせていた。

「人間のように傷ついた細胞を修復するのではなく、細胞ごと消滅させていることがわかりました。がんに抵抗するメカニズムを生まれながらもっていたのです」(小川先生)