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 マイナンバー制度に便乗した巧妙な手口、住宅業界でまかり通るグレーな契約、老人ホームの信じられない責任放棄……。そこで、あの手この手で迫り来る魔の手を遠ざける鉄則を専門家にアドバイスしてもらった。

「今の詐欺犯は名前や住所などの個人情報を入念に調べ上げ、『カモリスト』を作成しています。そのうえで、まるでオーダーメードの服を誂えるように、ターゲットに適した詐欺の手口を考える。私は『オーダーメード詐欺』と呼んでいます」

 そう話すのは詐欺・悪徳商法評論家の多田文明さん。昨年、特殊詐欺の被害総額は559億円に上り過去最悪を記録(警察庁調べ)。特殊詐欺とは、電話やメールで現金をダマしとる犯罪の総称。個人情報が容易に手に入るようになり、手口の巧妙化が進んでいる。

「卒業名簿を手に入れれば、名前をネット検索するだけであらゆる情報とひも付けられてしまう時代。表向きは通販サイトでも、登録者の個人情報取得を目的に立ち上げられる偽サイトもあれば、企業のパソコン内にある顧客情報が丸ごと乗っ取られるケースもあります。

 来年1月に利用が始まるマイナンバー制度に便乗した詐欺も、個人情報の取得を目的にしたものが多いですね」(多田さん)

 ターゲットの周辺情報が欠かせない詐欺といえば、家族や警察、弁護士になりすます『オレオレ詐欺』。すっかりなじみのワードになったが、被害はいまだ増え続けているという。

「これまでの被害の多くが東京、神奈川などの首都圏を中心に起きていました。ところが、今年は地方都市を中心に被害が増加。例えば、岩手県は被害件数が昨年比の約2倍に。宮城県は6月時点で昨年の数字を超えています」(多田さん)

 警察や金融機関による監視が強化される中、振り込め詐欺による被害は減り、郵送か手渡しが主流に。

「私書箱や空き家が郵送先に使われるほか、『上京型』といって、地方に住む被害者に新幹線で現金を運ばせる手口も横行しています」(多田さん)

 都内のターミナルに到着後、在来線や車で受け渡し場所まで移動させる上京型。被害者は土地勘がないため、捜査も行き詰まりやすいという。

 先月には、こんなとんでもない受け取り方があることも発覚したばかり。

「シルバー人材センターと称する詐欺犯が“荷物の預かり仕事を紹介する”と言い、見知らぬ高齢者の自宅を現金の送り先として利用してしまうもの。何も知らずに被害金を預かり、詐欺に加担してしまうんです」(多田さん)