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 高齢者を中心に買い物難民が600万人と言われる昨今。さまざまなシニア向けサービスがスタートしているが、街のスーパーにも「高齢者のニーズに応える変化が起きている」と話すのは家事・節約アドバイザーの矢野きくのさん。

「高齢者の多い地域では、出入り口すぐのスペースをお弁当や惣菜のコーナーに配置替えするスーパーが増えてきています」(矢野さん)

 入り口近くに生鮮食品売り場があって、その奥に惣菜やお弁当のコーナーを配置するのが通常のレイアウト。

「高齢者にとって、すべての料理を作るのはひと苦労。生鮮より、まずできあいの惣菜やお弁当をチェックしたいという要望に応えているのです」(矢野さん)

 夕方、割引シールが貼られた惣菜をまとめ買いして、冷凍。日々の献立に役立てている高齢者も多いという。

 大手スーパー・イオンでは、昨年、“お買い物アプリ”を立ち上げ、そのアプリを利用できる専用タブレット(タッチパネルで操作できる携帯端末)の貸し出しを展開した。

 これは、外に出ることすらできない高齢者に向けてイオンのネットスーパーの活用を促すものだった。イオンのスタッフが利用者の自宅まで行って、操作方法を教えるなどのサービスも行っていた。

「タブレットのサイズであれば、高齢の方でも見やすく、操作も通常のパソコンに比べると断然、簡単! カフェでタブレットを囲んで会話を楽しむ高齢者を見かけることが多いです。今後もネットスーパーとタブレットの組み合わせは広がっていくでしょう」(矢野さん)

 スーパーだけではない。ドラッグストアでも、シニア向けのサービスを展開している。『クリエイト』というドラッグストアでは、牛乳などの食品、お弁当、惣菜の販売を開始。

「薬を買ういちばんの年齢層は、シニアです。あちこち移動せず、ドラッグストアだけで買い物がすんでしまうのは、高齢者にとってうれしいこと。売り上げも順調に伸びているようです」(矢野さん)

 コンビニも高齢化時代に応じて進化。ローソンでは、昨年、ケアマネージャーが常駐して高齢者や介護者を支援する“介護コンビニ”を埼玉県川口市で開業した。

「店内にケアマネージャーの相談窓口を設置。デイサービスの内容を説明したり、有料老人ホームを紹介したりしています。品ぞろえも、介護食や大人用おむつなど高齢者の要望が強い商品を集めています」(矢野さん)

 またファミリーマートは、ドラッグストアと一体型の店舗を'18年までに1000店に増やすという。

「セブン-イレブンでは、弁当などを自宅まで配送する“セブンミール”を43都道府県で展開。利用者の約6割が60歳以上を占めているそうです」(矢野さん)

 年金暮らしでお金に余裕がない、外で食べると疲れる……。そんな理由から、シニア層は夕食を自宅で食べている人がほとんど。

「主婦がもっともつらいと感じる家事は“料理”。すべての料理を手作りするのは負担が大きすぎます。いまやどこでも買える惣菜は上手に活用すべきです」(矢野さん)

 おすすめは、ひじきの煮物や切り干し大根煮などの“常備菜”系の惣菜。

「シニア世代にとって、市販の惣菜は量が多くて1度に食べきれないもの。味つけがしっかりしているので、数日なら冷蔵保存も可能。1食分ずつ小分けにして冷凍しておくと、献立に組みこみやすいです。これで料理のストレスから少し解放されるのでは?」(矢野さん)