11月にかけて国民ひとりひとりに“マイナンバー”の記載された通知が届けられる。果たして個人情報はどのようにして管理されるのだろうか?

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 誰にも隠しておきたいことのひとつ、ふたつはある。病気の入通院、収入や預金額、離婚歴……。だが“公平な社会実現”という建前のもと、これらの情報が国家によって一元管理されようとしている。なのに、その制度が間もなく始まることを多くの人はまだ知らない。

 マイナンバー法(行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律)が成立したのは2013年5月24日。

 それに伴い今年10月5日以降、全国民に、12ケタの国民背番号を事前通知する『通知カード』が順次郵送される。そこには『個人番号カード』、いわゆる『マイナンバーカード』の申請書が同封されている。

 申請するか否かは任意だが、個人番号カードには住所、氏名、性別、誕生日の“基本4情報”と顔写真、そして12ケタの個人番号が記載され、内蔵されるICチップにも同じ情報が記録される。このカードを使ってのマイナンバー制度が来年1月に始まる。

 目的は何か? マイナンバーを管轄する内閣官房のホームページでは、『社会保障』『税』『災害対策』の3つの“官”分野での手続きが簡素化され、以下のように、市民生活の利便性が高まると宣伝されている。

①社会保障

年金給付、失業給付、児童手当など福祉分野の給付に利用。役所で職員が個人番号をコンピューターに入力するだけで、住民票などの書類の添付が不要となり迅速な手続きを実現する。

②税

マイナンバーでは法人も13ケタの『法人番号』をもつ。アルバイトも含めた全従業員の支払調書のすべてに個人番号と法人番号を記載することで、税務署は確実な所得把握ができる。脱税防止も目的のひとつだ。

③災害対策

例えば、地震ですべてを失っても身分証明書として機能する個人番号カードがあれば、被災者生活再建支援金の迅速な受給が可能。

 だが、これだけの目的ならば「マイナンバーは不要」との声もある。『共通番号・カードの廃止をめざす市民連絡会』の白石孝さんは、「役所の手続きは今でも十分に迅速で機能的。加えて、マイナンバーは不完全な制度です」と主張する。

「(国は)確実な所得把握と言いますが、例えば、全国に500万人以上いる自営業者の正確な所得把握は不可能です」(白石さん)

 自営業者は毎年、税務署に確定申告をする。総収入から総経費を引いた所得が低いほど税負担も低い。ただ確定申告では、経費(旅費、接待費、消耗品等)を証明する領収証の添付は不要。

 計算して記入するだけでいい。経費を水増し記載する不埒な事業者の実態は把握できないのだ。