「夫婦のコミュニケーション不足が、“残念な夫”のレベルをどんどん引き上げる原因のひとつです」と話すのは、2児のパパである育児・教育ジャーナリストのおおたとしまささん。

■夫の言い分を聞き、自分の気持もきちんと伝える

「手っ取り早くコミュニケーションを深めるにはケンカが有効。セックスとケンカは夫婦でなければできないコミュニケーション。お互いの本音を言い合って、相手が何を考えているのかを知ることが大切」(おおたさん、以下同)

 夫へ聞きとり調査を行ってみると“妻が育児・家事を手伝ってほしいと思っていたなんて知らなかった……”という“無自覚”夫が多数。彼らの育児・家事分担レベルは、驚くほど低い。

「夫に家事や育児をさせたいなら、“〇〇して!”と言ってはNG。ムダなケンカになってしまいます。“私は〇〇で困っている”“〇〇してくれるとうれしい”などニュートラルな物言いで伝えるのがベスト。そうすれば、夫の中で気持ちに変化が起こり、妻への気遣いが出てくるものです」

 気が遠くなるほど、時間がかかりそう……。

「夫の残念感をなくすには、“残念だな”と思った期間だけ時間がかかると思ってください。人は他人から言われても、変わることはできません。夫自身が気づき、自分で変わってもらうしかないのです」

 では、ムカッとする気持ちを抑えつつ、夫の言い分を聞いてみよう。家事に関してもっとも多かったのは、“イチイチうるさい!”という意見。

〈休日の掃除は僕が担当するのですが、毎回“早く掃除してよね”とつぶやく妻。今やろうと思っていたのに……。黙っていられないのかな〉(36歳・公務員)

〈食器洗いをすると、妻からの“お湯、出しっぱなしにしないで”のひと言。食器を1枚洗ったら、その都度お湯で洗い流すのが僕の流儀だから!〉(42歳・会社員)

たまに家事を手伝う夫の不慣れな行動に、妻はつい口出ししたくなるもの……。だが自分の信念を手放すと、悩みが消えてラクになれるという。

「お互いに独立した価値観を持っているのは当然。つらいところですが“こうしなければいけない”という信念を捨て、口出しするのはグッとこらえて。夫に自由にやらせて家事業の自立を促すことがカジメンを育てる近道です」

イラスト/すぎうら ゆう
イラスト/すぎうら ゆう

■“父親”と“母親”の役割を分けて考えると子育てはうまくいく

子育てに関する“夫の言い分”では、基本的な方針の違いが浮き彫りに。

〈休日、子どもの面倒は私が見ています。ある日、子どもが転んでケガをしたら“何を見ていたのよ!”と烈火のごとくキレた妻。そこまで怒ることかよ!〉(45歳・会社員)

〈子どものケンカに大人は口を出さないのが、僕の教育方針です。いつものようにわが子の兄弟ゲンカが始まり、放っておいたら、妻から“無責任すぎる!”と怒鳴られました。それは過保護すぎるでしょ!〉(39歳・会社員)

子育ては夫婦それぞれに役割があると、おおたさん。

「“子どもがたき火に向かって走り出したとき、母は1歩目で止める。父はアチッとなったあと、氷を差し出す”という例をよく挙げます。これはどちらも正しい教育です。子育てには奥行きが必要で、夫婦それぞれで子どもに伝えることが違ってもOKです」

■お互いが少しずつ歩み寄る、それが夫婦

妻も夫もガマンする必要はなし。ただし、あまり感情的にならないように気をつけて気持ちを伝えること。

「結論は出さなくていい。前述のとおり、素直に気持ちを伝えてケンカしましょう。お互いの育児の考え方を知ることで、お互いが少しずつ歩み寄るもの。それが夫婦ですから」

もとは他人だったふたり。モメるのは当たり前。困難をひとつひとつ乗り越えていくことが、夫婦の歴史となっていくのだ。

【この人に聞きました】

おおたとしまささん/All About「子育て・夫婦関係」ガイド。著書『パパのトリセツ』など。