『南アルプスの天然水&ヨーグリーナ』『トスサラ』『レッグリフレ』などなど、’15年上半期を振り返ると女性目線のヒット商品がズラリ。今年を代表するアイテムも開発者はすべて女性だ。

「そもそも商品を開発することに、男性、女性は関係ありません。優秀な開発担当者と、そうでない人がいるだけです」

 そう語るのは、精力的に商品開発の現場取材を行っている、元『日経トレンディ』編集長で商品ジャーナリストの北村森さん。とはいえ今年、女性開発者が目立ったのはなぜ?

「女性ならではの資質を生かせたからだと思います。彼女たちに共通するのは、"これまで見逃されがちなところに目を向けるセンス""何が重要かを見抜くセンス""冒険する力"の3点。優秀な女性は、男性よりもこうした部分で抜きん出ているように思えます」

 女性目線を上手に生かして成功した商品がある。

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複数の穀物を香ばしく焼き上げ、ほどよい甘さのドライフルーツをミックスした大人向けシリアル。写真は800グラム入り

「カルビーの『フルグラ』です。『フルーツグラノーラ』という商品名で販売していたものを、女性担当者が名称を変えてリニューアルしたところバカ売れ。商品を愛称で呼んでもらうことで、消費者に愛着が生まれる。これは女性ならではのセンスといえます。またフルーツの中身にも目を向けた。レーズン、クランベリー、パイナップルを、パパイヤ、レーズン、リンゴ、イチゴ……。さらに色鮮やかになるような果物に変更しました」

 男性なら"おいしければそれでいい"となるところ。パッと見の印象にこだわって、かわいいもの好きな女性の心をつかんだ。

「今月、発売したスズキの『ラパン』は、チーフエンジニアこそ男性ですが、女性担当者の意見・発言を積極的に取り入れたそうです。ターゲットの購買層が若いということもあって、ボディーに丸みをもたせるなど女性の微妙な感性を採用。旧モデルと比べて、かなり洗練かつ、ユニークな造形の自動車が誕生しました」

 ボックス型なのに、丸みにこだわるという思い切った商品だった。

「もうひとつ挙げると、2&9(にときゅう)という高級靴下。この開発をした女性は、はっきりと"靴下が嫌い"と発言していたのをよく覚えています。"ムレる""ずれる""脱げる"の三重苦が嫌だったそうで……。こうした不満をすべて解消する商品を思いついたのです。ラインナップの名称は『ぬげにくいくつした』『しめつけないくつした』『におわないくつした』。そのままズバリ不満を解消するネーミングにして’11年に発売。’14年には売り上げが初年度の5倍に!」

 こうした商品を開発した女性たちには"自分が欲しいものをつくる"という確固たる信念がある。

「これこそ、ものづくりにおける根源的な部分でしょう。"それでは、ひとりよがりになる"という声もありますが、彼女たちは"自分が欲しい"という欲望を万人向けに変換する技術やセンスに長けている。だから、今までにない、固定観念を突破した力強い商品が生まれているのです」

 今後はどんな商品に、女性目線が生かされるのか。

「例えば、一眼レフカメラやバイクなどはありえます。こうした商品に女性目線が加わることで、男性にも女性にも好まれるアイテムになるでしょう」


取材・文/田中潤、小島裕子、「スーパーウーマン」取材班 写真/吉岡竜紀