家事に仕事に子育てに、忙しい主婦にとって、ファミレスやコンビニは強い味方。いつでも手軽に利用できるのが魅力だけど、

「最近の消費者はシビアで、お金を出すならそれなりの理由を求めます。安さだけでは勝負できなくなっているのが現実です」

 そう分析するのは『食品安全教育研究所』代表の河岸宏和さん。例えば最近、不祥事が相次ぎ人気が下降ぎみのファストフードでは、短期的に利益を出そうとしすぎたことが、今になって裏目に出ている。

「調理工程を自動化しすぎたり食材のランクを落としたりして、料理の味はイマイチに。人件費削減によりサービスも低下、清掃などの衛生管理にも目が行き届かなくなりました」(河岸さん、以下同)

 そんな中、復権を遂げつつあるのがファミレスだ。例えば『ガスト』はリーズナブルながらも、子連れには居心地がいい店内、キッズや高齢者向けといったメニュー展開が、幅広い年齢層から人気を呼んでいる。

 一方で、『ロイヤルホスト』といった、ちょっとお高いイメージの店も味にこだわる層からの支持をうけているという。

「ロイヤルホストは、私も注目しているお店です。いい食材を使って、コックがきちんと店内で調理しているから、おいしさが違います。味へのこだわりでは、デニーズもなかなかですね。これからは、家庭では作れないおいしさを追求した店の業績が上がっていくはずです」

 ファミレスがぜいたくだと感じる人も多いようで、

「そうした人に支持されているのがコンビニです。100円コーヒーなど、おいしさにこだわった商品でファストフードからお客を奪っています」

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 では、コンビニ業界はどうなっているのか? コンビニ事情に詳しい渡辺広明さんに話を聞くと、

「かつては、"若者の店"というイメージがあったコンビニですが、今は違います。シニア向け、主婦向けの品ぞろえが豊富になってきていて、あるチェーンでは、15年前は17%だったシニア層の客が、今では倍の30%ほどに。ローソンが介護事業所とタッグを組んで、介護用品などを充実させた介護拠点併設型の店舗を埼玉県でオープンするといった動きも見られます」

 ただ、コンビニはセール(値引き)をしないので割高というイメージだが……。

「コンビニオリジナルのPB(プライベートブランド)商品が豊富になっていて、そこそこお買い得な商品が増えています。安さの秘密は、店舗数の多さを生かした大量取引で、仕入れ値が抑えられること」(渡辺さん、以下同)

 安さの理由は納得したとして、気になるのが品質。

「PB商品は名の知れた企業が請け負うことが多く、メーカー品と同等の品質のものが、割安で買えるのですからあなどれません」

 コンビニ商品は大きく進化していたというわけだ。

「商品だけではありませんよ。コンビニは今、多くの世代のお客を取り込むため、さまざまなサービスを展開しています。公共料金の支払いやネット通販の商品受け取りが可能になったのもそのひとつ。6月からは、ローソンと佐川急便が提携して、一部の店舗で配達や御用聞きをするというサービスが実験的に始まるようです」


河岸宏和さん ●『食品安全教育研究所』代表。食品工場の品質管理を経験したプロ。『「外食の裏側」を見抜くプロの全スキル、教えます。』(東洋経済新報社)ほか著書多数

渡辺広明さん ●流通アナリスト。コンビニエンスストアの店長、スーパーバイザーを経験しバイヤーとして商品開発にも携わる。雑誌やラジオなど各メディアで活躍