「名古屋には、喫茶店の朝の時間帯にコーヒーを頼み、無料でついてくるバタートーストや卵を食べるというモーニング文化があります。“自動的”に食べているせいか、バタートーストは誰もが好むものなのに、あまり注目されません。でも、お店によっては感動的なおいしさに出あえることもあるのです」

 と語る梶田香織さん。名古屋生まれの名古屋育ちで、元大手製パンメーカー本社開発部に勤務。地元でバタートーストを食べ歩き、現在は日本唯一(!?)のバタートースト評論家として活躍中なのだ。そんな梶田さんに名古屋でオススメのバタートースト店を教えてもらいました。

「今回はさまざまな好みの方に楽しんでもらえるよう、3タイプのバタートーストをご紹介します(実際はマーガリンを使用しているお店でも大体「バタートースト」と呼んでいるそう)。名古屋を中心にチェーン展開している喫茶店は、それぞれ地域に密着した個性があるので、“どこの店舗か”にまでこだわって選びました。そして、今回紹介するのはモーニングではなく、通常メニューのトーストです。モーニング時には使用する食パンやバターの種類を変えるお店も多いので、ぜひみなさんも喫茶店の通常メニューでバタートーストの名演ぶりに気づいていただければと思います」

▼支留比亜 日比野店のバタートースト 350円

パンチのあるトーストが私好みでイチオシのお店です。パンとバターの量、味の組み合わせ方がパーフェクト。奥深くまでバターがたっぷりしみ込んでいるため、最後のひと口までシンプルなパン生地と塩味強めのバターが相まった味を楽しめます。素晴らしいのは、焼き具合にバラつきがなく、いつ訪ねても100%この味が出されること。食パン半斤ぐらいあるほど分厚いですが、厚み半分のハーフサイズがあるのもうれしい。

バタートースト
絶妙な切り込みで、食べるときにポロポロこぼれることがほとんどないそう。芸術的おいしさあふれる“作品”。

▼ペギー珈琲店のバタートースト 330円

「なんとおいしい、あぁ幸せ♪」とちょっぴりリッチな幸せ感を味わえます。30年前のオープン以来、とことんコーヒーにこだわってツウの間では有名店。バタートーストは粉や発酵のよい香りと繊細な食感の変化が感じられるパン、香りがよく塩味が強すぎないバターがお互いの味を上手に引き出しあって、洗練された味わいに。焼き色もきれいでおいしそう。ちゃんと端までバターが塗られ、丁寧に作られていることがわかります。

バタートースト
表面や耳は上品な軽やかさ、中心部はフワッと舌にのったかと思うとしっとりなじむ。ワンランク上の高級バタートースト。

▼コンパル 御器所店のバタートースト 120円

地元で有名なチェーン店。バタートーストが120円と良心的なお値段で、小腹を満たしたいときにピッタリです。ほんのりした甘みが懐かしく、おいしいと評判のコーヒーとよく合います。薄いパンは耳までやわらかく口当たりがソフトでしっとりして、風味もまろやか。塩味が強めのバターとの組み合わせは独特の味です。こちらのバタートーストはどの店舗でも味わえますが、懐かしい喫茶店文化が漂う御器所店がおすすめです。

バタートースト
やわらかくまろやかな癒しの味。回転が早く、いつも新鮮なのがおいしさのヒミツかも。

(撮影/坂本利幸)

※商品情報・店舗データは2015年2月現在