LGBT
 純白のドレスに身を包んだ花嫁が2人。親族や友人らの祝福を受けるなか、そろってバージンロードを歩き結婚の誓いを交わした。先月19日に行われたタレント・一ノ瀬文香(34)と女優・杉森茜(28)による同性婚挙式の様子だ。

「憲法は同性婚を禁止していないという憲法学者もいる。婚姻届を出しに行く」

「やってみないとわからない。不受理になっても、その悲しい気持ちからまた新しいことができるかな、と」

 式後の会見でそう語った2人だが、日本で同性カップルの婚姻届が受理されたことは、かつて1度もない。

「憲法は同性婚を禁じていないと思います。憲法24条が定める婚姻の原則“両性の合意”は、結婚したい人同士が互いの合意に基づいて婚姻が成立するという意味。戸主の同意がなければ結婚できなかった戦前と違い、本人たちの同意でできますよ、と言っている」(同性婚に詳しい京都産業大学大学院の渡邉泰彦教授)

 挙式後、一ノ瀬らは婚姻届を提出。ブログで不受理を報告した。

「これまでに裁判で2件争われましたが、憲法24条は同性婚を認めないため不受理とした役所の扱いは正しい、との判決でした。ただ、ほかの国の状況は同性婚容認へと動いてきているので、もし不受理に対して行政訴訟を起こしたら、その時は裁判所が24条をどう判断するかがカギになるでしょう」(渡邉教授)

 セクシュアルマイノリティーの存在が広く知られるようになるにつれ、同性婚が話題に上る機会も増えた。しかし、現実味を帯びて語られ始めたのは3月31日、渋谷区で成立したある条例がきっかけだ。

 正式名称は『渋谷区男女平等及び多様性を尊重する社会を推進する条例』。公的機関が初めて同性間のパートナーシップを認め、証明書を発行することが大きく報じられたのは記憶に新しい。世田谷区、横浜市、宝塚市をはじめ、他の自治体でも同様の動きが広がっている。

「渋谷区という地方自治体が同性パートナーシップを認める証明書を発行することの意味は大きく、画期的」

 と渡邉教授は評価するが、ただちに同性婚につながるものではないと注意を促す。

「今回の条例は、海外で行われているような同性婚、同性間パートナーシップ契約とは意味合いが異なります。法的な効果がほとんどありません」

 海外には2種類のパートナーシップ制度があり、フランスの『PACS(民事連帯契約)』のように婚姻と内縁の間に位置づけるパートナーシップのほか、ほぼ婚姻と同じ保障がなされた『登録パートナーシップ』を認める国も多いと渡邉教授。

 パートナーシップ制度と同性婚制度を併せ持つ国も珍しくない。かたや日本は、「同性婚という大きな流れの、小さな第一歩」(渡邉教授)に過ぎない。