女優の吹石一恵さんと歌手の福山雅治さんが、9月28日に結婚した。その日は吹石さんの誕生日だったという。

 昼下がりの3時、その知らせは日本中、いや、おおげさではなく世界中を駆け巡った。日本中の若い女性から年配の女性まで、アジアをはじめとする海外からのインタビューもすぐさま放送された。

「え~~~~本当ですか?ショック~~~」

「私、もうダメ」

 悲鳴とも思われるような声が続々と寄せられた。ショックで会社を早退する女子ややけ酒をあおる女子まで、街は大騒ぎだった。

 一方、関係者筋では「15時の発表というのは、所属のアミューズの株価に影響がでるかもしれないということでそうしたんだ」と囁かれるほど、お二人の結婚は社会的に影響があるという。

 普段、芸能ネタを扱うことのないNHKの「ニュース7」や「ニュースウォッチ9」さえも流したというのだからすごい。

 電撃結婚発表から一夜明けた29日。米国ニューヨーク株式市場の下落の影響で全面安の東京市場ではあったが、“福山ショック”は実際、起こった。福山さんが所属する芸能事務所・アミューズ(東証1部)の株価(終値)は前日比440円安の4870円まで下落。株安によってアミューズの時価総額は一夜にして41億円下がったことになる。

 一方、iTunes チャートなどで福山さんの楽曲が急上昇している。

 それなのになぜ?と思われる方もいらっしゃるかもしれないが、女性に人気の福山さん。結婚でファンクラブにいまから入る人よりも脱退する人のほうが多いなど、収入の見込みが低下するとみなされたのだそうだ。あの女性たちの「信じられない~~~もうだめだ~~~」は、東京市場を動かしていたことになる。

 福山さんファンは女性ばかりではない。「R25」が20~30代の男性会社員200人に「迫られたら、抱かれてもいいかも…と思ってしまう俳優」についてアンケート調査を行ったところ、抱かれたい男性2位になっているし、そういう意味でなく「今日は男同士でもりあがろう!」と男の人限定のコンサートを開いたり、男性ファンも大切にしていた。

 福山さんは、ファンを本当に大切にしていた。

 メディアに結婚発表する10分前にファンクラブ「BROS.」会員に向けて結婚を報告。書かれたファンへの手紙は、報道各社に送られたFAXの2倍にものぼる量だったという。「人生でこんなに緊張しながら書く手紙もあるんだ」。そんな書きはじめだったと聞く。長年福山ファンを続けていた人たちもショックであっただろうが、これを受け入れていくしかないと「ファンならなのさらのこと福山の幸せを応援しようぜ!」。一夜でそんな雰囲気が流れ始めた。

 福山さんはキムタクとどちらがかっこいいかとか比較されることも多いが、キムタクの結婚のときもNHKのニュースにはなったし、確か「らいおんハート」のCDセールスが再浮上、一気にミリオンセラーになったと記憶している。

 きっと福山さんの「家族になろうよ」もセールスを伸ばしていくに違いない。

 発表から2日目の30日「アミューズ」の株価の終値は310円高の5180円で引けた。一度下がった株価も戻しつつある。

 アミューズには、福山さん以外にも桑田圭祐さんのサザンオールスターズも所属している。桑田さんが食道がんを発表したときも一時さげたという。お相手の吹石さんがブラトップのCMをしているファーストリテーリングや福山さんがCMをしているアサヒビールやキユーピーなんていう銘柄も、投資家からすれば目を離せないのかもしれない。

 だいたいこういうタレントと熱狂的ファンという関係がボクにはよくわからないのだが、ボクの友人女性(既婚・35歳)は福山さんの結婚のニュースを聞いてショックだと、本気で泣いていた。

 ボクが「だって君、結婚してるよね」。そう言うと、「福山さんに恋して11年になる。パパとは結婚しているけど今恋しているわけではない」とわかるようなわからないようなことを言う。

 福山ロスで、心にぽっかり穴が開いてしまったんだそうだ。

 福山さんのファンクラブの会員数は80万とも100万人とも言われている。そんな人数の人が一喜一憂。やっぱり株価も動くだろう。

 ちょっと買ってみようか。

(c)Tokyo Stock Exchange / Dick Thomas Johnson
アミューズの株価は2015年9月17日に年初来高値の5400円をつけた。だが、福山・吹石結婚発表翌日、9月29日の終値は4870円(以下、すべて終値)と前日5310円から440円、8%の値下がり率。この日はニューヨーク株式市場の影響を受けて、日経平均も1万7645円から1万6930円に下げたが値下がり率は4%。翌30日、アミューズも日経平均も反発したが、アミューズは前日比6%、日経平均は同3%の値上がり率だった。(c)Tokyo Stock Exchange / Dick Thomas Johnson

〈筆者プロフィール〉

神足裕司(こうたり・ゆうじ) ●1957年8月10日、広島県広島市生まれ。慶應義塾大学法学部政治学科卒業。学生時代からライター活動を始め、1984年、渡辺和博との共著『金魂巻(キンコンカン)』がベストセラーに。コラムニストとして『恨ミシュラン』(週刊朝日)や『これは事件だ!』(週刊SPA!)などの人気連載を抱えながらテレビ、ラジオ、CM、映画など幅広い分野で活躍。2011年9月、重度くも膜下出血に倒れ、奇跡的に一命をとりとめる。現在、リハビリを続けながら執筆活動を再開。復帰後の著書に『一度、死んでみましたが』(集英社)、『父と息子の大闘病日記』(息子・祐太郎さんとの共著/扶桑社)、『生きていく食事 神足裕司は甘いで目覚めた』(妻・明子さんとの共著/主婦の友社)がある。Twitterアカウントは@kohtari